偏愛的プレミアリーグ見聞録

プレミアリーグ連覇をめざすリヴァプールの最初のサインは、オリンピアコスの左SBになりそうです。ギリシャ代表にも選ばれるようになったコンスタンティノス・ツィミカス。2014年に18歳でギリシャの名門に加わったフルバックは、翌年の12月にトップチームデビューを果たしたものの、思うように出番を得られずデンマークのエスビェアに貸し出されました。2016-17シーズンのデンマークスーペルリーガでは、9試合2ゴール2アシスト。ブレイクしたのは21歳になった2017-18シーズンで、レンタル先のウィレムⅡでエールディヴィジ33試合3ゴール3アシストという数字を残しています。

トップリーグで通用すると認められたツィミカスは、翌シーズンからオリンピアコスの左サイドに定着。ポジショニングのよさと正確なクロスが強みで、アンディ・ロバートソンのバックアッパーとして妥当な選択なのではないでしょうか。ほとんど同じ内容の記事を掲載している「ガーディアン」と「インディペンデント」によると、両クラブの間で合意済みの移籍金は1175万ポンド（約16億3000万円）。「来週頭にはメディカルチェックのためにマージーサイドに向かう」と報じられており、リヴァプール入団を熱望していたジャマル・ルイスは絶好のチャンスを逃すことになりそうです。

先週まで、リヴァプールの本命はノリッジの左SBと伝えられていました。2018-19シーズンのチャンピオンシップ制覇に貢献し、ベスト11にも選ばれたジャマル・ルイスは、昨季のプレミアリーグで28試合に出場。アグレッシブな攻め上がりがユルゲン・クロップ監督の目に留まったようで、シーズンが終わるとすぐに、レッズは1000万ポンドのオファーを提出しました。プレミアリーグから陥落したクラブは、あっさり呑むと思いきや、倍額の2000万ポンドを要求。レッズは、ギャップは埋まらないと判断し、リストの2番めに記された名前に矛先を変えたといわれています。

北アイルランド代表SBの夢を打ち砕いたのは、ウォルヴァーハンプトンだったのかもしれません。オリンピアコスがヨーロッパリーグでベスト8に進出していれば、ツィミカスの移籍を巡るディールはすぐにはまとまらず、レッズとノリッジが歩み寄るための時間を得られた可能性があります。ジャマル・ルイスに2000万ポンドは決して高いとは思いませんが、以前からツィミカスをリストアップしていたクラブは、予算にキャップをはめていたのでしょう。22歳のヤングプレーヤーが突如主役になった「真夏の夜の夢」は、シェイクスピアが盛り上げ役として登場させた妖精パックによる混乱もないまま、1週間で幕を閉じてしまいました。

今季のオリンピアコスはプレミアリーグと縁があり、CLでトッテナム、ELではアーセナルとウルヴスが対戦しています。ツィミカスの印象は、「戦術を汲んで動ける選手」で、縦にも中にも入っていく姿は、ルーク・ショーとオーバーラップしました。リヴァプールは、最初の課題をクリアしたようです。次なるターゲットは、中盤を仕切れるパサー、前線のオプション、CB、サブのGKあたりでしょうか。

ハリー・ウィルソンやグルイッチ、シャキリ、オリギらを首尾よく売れれば、チアゴ・アルカンタラやデヴィッド・ブルックス、ジエゴ・カルロスといった噂が現実になるかもしれません。「誰も獲らず、カーティス・ジョーンズ、ハーヴェイ・エリオット、キ・ヤナ＝フーフェルの成長待ち」とする可能性もなきにしもあらずですが…。補強に対して慎重と伝えられるプレミアリーグ王者が、どこまで動くかに注目しましょう。