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チェルシーにファルカオ獲得報道⁉ モウリーニョ監督は傷ついた虎を再生できるのか?

2012年8月31日。この日の彼は、止まりませんでした。DFラインの裏に鮮やかに抜け出したスピードも、GKのポジションを見てワンテンポ遅らせて放ったチップキックも完璧。左足のミドルシュートは誰も触れない弾道を描き、プレミアリーグでトップクラスのDFをワンタッチで置き去りにしてしまったドリブルは脅威でした。ヨーロッパスーパーカップで前季のチャンピオンズリーグ覇者・チェルシーと戦い、前半だけでハットトリックを決めてしまったアトレティコ・マドリードの絶対的エース、ラダメル・ファルカオ。当時のモウリーニョ監督は、同じ街のクラブで大暴れするストライカーを見て、ダービーでは特別な対策が必要かもしれないと警戒を新たにしたことでしょう。

あの頃のファルカオなら、どのクラブの監督でもほしいと思うでしょう。2012-13シーズン、ディポルティーボ・ラ・コルーニャ戦での1試合5ゴール、コパ・デル・レイファイナル、マドリードダービーでの決勝点。わが世の春といわんばかりの活躍を見せたファルカオでしたが、この年が最後に輝いた年でした。彼はモナコで普通のストライカーとなり、マンチェスター・ユナイテッドでは、チェルシー時代のフェルナンド・トーレスを思い出させるような自身なさげなプレイを繰り返す冴えないFWでした。プレミアリーグ26試合4ゴールでは、80億円からの移籍金と20億円以上の年俸を払うという完全移籍のオプションを行使するわけにはいきません。ロンドンであれだけ叩かれたフェルナンド・トーレスでも、プレミアリーグでフルシーズン青いユニフォームを着た3年の最低ゴール数は、5でした。

イギリス紙「テレグラフ」ほか複数紙が報じた「チェルシーがファルカオ獲得を狙っている」というニュース。興味は3点に絞られます。ファルカオは衰えたのか、マンチェスター・ユナイテッドで活かされなかっただけなのか。モウリーニョ監督のチームはファルカオにとっていい職場なのか。そして、ファルカオの値段はどこまで下がるのか。黒字経営でキャッシュには困っていないチェルシーでも、1ゴール7億5000万円というプレミアリーグ1年めの結果を見て、モナコの言い値で着地させるわけにはいかないでしょう。

2014-15シーズン、ファルカオのすべてのプレイを観てきたなかで、輝けなかった理由として考えられるのは3つです。ワールドカップを棒に振った負傷の影響でトップフォームを取り戻すのに時間がかかったこと。がちがち体を当てにくるプレミアリーグに戸惑ったこと。これらの状況から自信を失い、メンタルの状態がよくなかったこと。マンチェスター・ユナイテッドは、足元にほしいファン・ペルシと、中盤で組み立てに参加した後フィニッシュに絡むルーニーがそれぞれ10ゴール以上を挙げているチーム。DFラインの裏に飛び出すシーンが多かったファン・マタも9ゴールを挙げており、異なるスタイルの選手がそれなりの数字を残しています。ファルカオのプレイスタイルだけが極端に合わなかったということはないはずです。

確かに、ファルカオを信頼してボールを集めるゲームがなかったのは事実。しかしこれとて、周囲の信頼を勝ち取るのはファルカオのほうの仕事でもあります。移籍してきた選手は誰でも自らクリアしていかなければならない課題を、マンチェスター・ユナイテッドのチームメイトたちだけに背負わせるのはフェアではないでしょう。ゴールを重ねれば、自分のタイミングでボールをもらえるようになっていたと思われますが、ファルカオはアトレティコ・マドリード時代なら難なく決めていたようなチャンスで、ことごとくシュートを外してしまいました。フィジカルないしはメンタル、あるいは両方のコンディションが悪かったのでしょう。スペインでは「エル・ティグレ(虎)」と呼ばれた男がDFを震え上がらせるシーンは、ほとんどありませんでした。

ファルカオが、フェルナンド・トーレスのようにトップフォームを思い出せないまま、静かに坂を下りていってしまう可能性もあるのではないでしょうか。ジエゴ・コスタというアトレティコ・マドリード時代の同僚は、連携をとりながら一緒にゴールをめざす仲間ではなく、たったひとつのポジションを奪い合うライバル。しかも間違いなく彼がファーストチョイスです。チェルシーという職場は、決してファルカオにとって恵まれた職場ではないと思います。

しかし、マンチェスター・ユナイテッドにはなく、チェルシーにはありそうな大きなプラスが、ひとつだけ存在します。チームを統率することはできても選手を鼓舞するのは得意とはいえないファン・ハール監督の下では、メンタルコンディションを上げるのは難しかったと思われますが、選手との信頼関係を大事にするモウリーニョ監督なら、いいときの自分を取り戻すサポートが期待できそうです。モウリーニョ監督が、ファルカオ復活に自信を持っていると報じられているのは、「メンタルさえよくなればもう一度虎になれる」という確信があるというなのかもしれません。復活したら天晴れ、大喝采。「もう終わりなのかもしれない」と書いたことをお詫びしたいと思います。

モウリーニョ監督に再生プランがあったとしても、ジエゴ・コスタの控えになる可能性が高いストライカーに何だかんだで100億円はきついでしょう。マンチェスター・ユナイテッド同様、20~30億円のレンタルという形で握るか、さもなくば移籍金と年棒の大幅ダウンをモナコと本人に呑ませるか、ですね。ファルカオは、南米選手権が終わる前には決着をつけたいといっているようですが…この話はお金絡みのやりとりに時間がかかりそうです。

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“チェルシーにファルカオ獲得報道⁉ モウリーニョ監督は傷ついた虎を再生できるのか?” への4件のフィードバック

  1. パックン より:

    ファルカオ本人は大幅な減俸も受け入れる覚悟。
    レンタルでの獲得を望むチェルシーと売却したいモナコが妥協点を見出だせるか。
    今の所はこんな感じの記事が多いですね。
    代理人がメンデスですしチェルシー行きの可能性は高いかなと個人的には予想します。

  2. モウ より:

    ファルカオもクアドラの時と同様、噂の段階では個人的には反対です。
    コスタがファーストチョイスなのは間違いなく、控えで頑張ってくれているレミーも放出されなければ、退団のドログバのポジションとしての獲得なのでしょうか?
    そうであるなら試合をしめる時のボールキープや、試合終盤の点が欲しい時の高さがないですし、
    ユースやローン中の選手で結果を残している選手もいるのに、そういう選手たちが出る場面がまったくなくなってしまいます。
    復活してくれればもちろん大幅なプラスになりますけど、移籍金(またはレンタル料)と給料がどこまで下がりますかね〜

    まあ来るとなった時はモウリーニョが復活させる自信があるということでしょうし、期待しますが。
    ってか加入する選手には基本期待してしまいますが(笑)

  3. プレミアリーグ大好き! より:

    初めまして。更新お疲れ様です。
    モウリーニョの数少ない欠点の1つに
    熱望してるという報道が出て獲得した選手が
    なぜかいまいち活躍できないことがあると思うので
    チェルシー以外のチームで頑張って欲しいです

  4. makoto より:

    パックンさん>
    モナコがいくばくか譲歩すれば決まりそうですが、ジエゴ・コスタがいるチームでどれだけチャンスがあるのか、ですね。

    モウさん>
    移籍でもレンタルでも、「お値段以下」になってしまいそうなところが、ファルカオにおいてはいちばん気になるところですね。2番手以下のFWなら、なおさら。

    プレミアリーグ大好き!さん>
    戦術理解度が低い選手は、我慢することなく外しますからね。ファルカオ、どうなんでしょうか。

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