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【Brazil2014】疲労、メンタル、下り坂…絶体絶命スペインは「敗退の根拠」をはね返せるのか!?

ワールドカップのグループリーグ突破国予想で、私は「オランダがスペインに勝つ」「前回王者は3試合で大会を去る」と予想しておりましたが、さすがにここまでの大差は想定外です。やはり、サッカーはメンタルスポーツ。ファン・ペルシとロッベンを捕まえられなくなった後半のスペインは、完全に自信喪失。チームの体をなしていませんでした。1-5惨敗、うち2失点はキャプテン・カシージャスのミス。チリがオーストラリアに勝てば、スペインは次戦でグループリーグ敗退が決まる可能性すらあります。レアル・マドリードの黄金時代を築いた名将デル・ボスケといえども、ここからチームを立て直すのは、相当難しいでしょう。

スペイングループリーグ敗退予想の最大の根拠は、チャンピオンズリーグとリーガ・エスパニョーラで、3強が最後まで目いっぱいの戦いを強いられたこと。チェルシーを除く3クラブがチャンピオンズリーグで早々に散ったプレミアリーグ勢や、バイエルン・ミュンヘンが独走したため、無理な選手起用が少なかったブンデスリーガに比べて、国内リーグに所属するスペインの選手たちは疲労がたまっているでしょう。ワールドカップに向けて選手が合流したとき、半数の選手がケガを抱えているか、体調不良だったと伝えられています。ホーム&アウェイではない国際大会で何よりも重要なのは、心身のコンディション。スペインの危機は、既に準備の初日から始まっていたのでしょう。

そしてもうひとつ挙げるとすれば、国民性なのか、イギリスやドイツに比べて、スペインはメンタルが強くないようにみえること。以前、「無敵艦隊」と称えられながらもワールドカップで実力を発揮できなかったスペインについて、ずっと気になっていたのは、劣勢になると試合中にも関わらず、ドイツ人なら絶対にしないような悲しい顔、いわば「負け顔」を見せることです。今日の試合でも、4点めを失った直後のGKカシージャスとデル・ボスケ監督の歪んだ表情は、こちらが胸が痛くなってくるような悲痛な顔でした。チャンピオンズリーグで負けるときもそうですが、スペインはライバル国に比べて、逆境をはね返す強いマインドは持ちえていないように感じます。

さて、初戦の舞台はアレナ・フォンチ・ノバ 。それでもPKで先制したのはスペインでしたが、この日のターニングポイントは、42分のファン・ペルシの同点ヘッドでしょう。ファン・ハール監督の思い切った5DF戦術、引いて攻撃を受けてカウンターで裏を突いてスペインを負かすという作戦に、選手たちが手ごたえを感じたであろう瞬間です。前半をイーブンで折り返せたこともあり、後半になると、明らかにオランダの選手のほうが動きがよくなり、ロングボールで裏を狙うという戦術の徹底度が上がりました。そして53分、ロッベンが完璧なトラップから左足でズドン。イニエスタが精彩を欠き、ダヴィド・シルヴァにプレミアリーグほどの輝きがないスペインには、引いた相手を攻略する形がありません。この日の出来では、2-1となった瞬間に、オランダの勝利はほぼ決まっていたようなものでしょう。

そしてここからは、カシージャスが信じられないミスを連発。敗戦をより深刻なものにしてしまいました。私は、南アフリカで見せてくれたカシージャスの素晴らしいプレイの印象があまりにも強かったので、レアル・マドリード時代のモウリーニョ前監督が確執のあったエースGKをベンチ要員にして、ディエゴ・ロペスを起用した当初は憤っていました。しかし、後任のアンチェロッティ監督も同じ判断をしたのをみてはじめて、これは不遇でもスキャンダルでもなく、「衰え」なのだと悟りました。4年前の決勝で、ロッベンとの1対1を、老獪な駆け引きで右足でクリアした史上最高のGKは、もうどこにもいないのです。

3点めは、高く上がった左からのFKにバンザイしてしまい、右ポスト際に侵入したデ・フライが軽く触ってゴール。4点めは、バックパスをトラップミスしてファン・ペルシに押し込まれます。厳しいかもしれませんが、5点めも、カシージャスの判断ミスがあったと思います。DFがロッベンに完全に振り切られていたので、止められる可能性は低かったとは思うものの、最後の長いタッチで思い切り前に詰めていれば、ロッベンのミスを誘えたかもしれません。出るか出ないか迷っているGKが相手では、世界一のウインガーが外す可能性はほぼゼロでしょう。

変わらない顔ぶれは、多くがキャリアの下り坂。負傷者が続出し、疲労も癒えず、最後までトップフォームを維持できないコンディション。ひとたび劣勢に立ち、ゴール前を固められると打開策がなくなるフィニッシュ機能の弱さ。決して強くないメンタル。惨敗のショック。スペインが去る理由になりそうなカードは存分に揃っています。さあ、これらを打ち破るカードをデル・ボスケ監督は何枚持っているのでしょうか。もうひとつのゲームは現在、前半40分。次戦の相手であるチリが2-1とリードしています…。(イケル・カシージャス 写真著作者/Дмитрий Неймырок)

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“【Brazil2014】疲労、メンタル、下り坂…絶体絶命スペインは「敗退の根拠」をはね返せるのか!?” への2件のフィードバック

  1. リバサポ より:

    サッカーていうのは、ハーフタイムが重要だなと再認識させられる試合でした。細かい部分で修正ができていれば、スペインは後半、互角に戦えたのでしょうけど。
    ファンハールは、なかなかの曲者ですね。来シーズンはこの人のユナイテッドと戦うとなると骨が折れそうです…

  2. londres nord より:

    さすがファンハール、稀代の戦術家。来季の4位以内争いは凄そうですね。
    スペインと云う国家に属していても、民族も言葉も違う人間の集まりですから、ここぞという時に弱い気がします。2009年にアルゼンチン代表にカタルーニャ選抜が勝ちましたが、英国のように独立してFIFAなどに加盟出来たら、面白いと思います。

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