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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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【Brazil2014】机上の采配は今夜も空転…ギリシャを観ていなかったザッケローニの限界

日本代表の最大の誤算は、ギリシャに退場者が出て、ゴール前にベタ引きされたことではないでしょうか。普段、プレミアリーグで、ランパードやエトー、オスカルを擁するチェルシーが、下位クラブ相手に手を焼いているのを観ているので、ギリシャが足が止まり、勝ち点3を半ば放棄した後半は「大変なことになった」と思いました。日本代表が得意なのは、コンフェデレーションズカップのイタリアや、昨秋戦ったベルギーのように、攻撃的にパスサッカーを仕掛けてきてくれて、後ろにスペースがあるチーム。ギリシャ戦における選手の出来やチャンスでのプレイについて、メディアがさまざまな批判をしていると思われますが、実力伯仲の相手にあれだけ引かれれば、ゴールをこじ開けるのは難しいと思います。

本田圭祐は相変わらずいいときのキレや判断スピードがなく、岡崎はコンディションが悪そうでしたが、両翼にいた内田篤人、長友佑都の攻め上がりとクロスは質が高く、大迫も積極的にシュートを狙っていました。「68分の大久保のどフリーシュートが入っていれば…」「長友のシュート性のクロスが、吉田麻也にもう少し低く入っていれば…」などと、つぶやきたい「れば・たら」はたくさんあるものの、日本の選手は難易度の高い状況のなか、ベストを尽くしたと思います。チャンスを活かせなかったのは事実ですが、川島もまた決定機をいくつかストップしていることを考えれば、ドローは妥当な結果でしょう。

いちばん残念だったのは、ザッケローニ監督が、相手とゲームの状況をふまえた臨機応変な采配をとれなかったことです。香川真司をベンチに下げ、後半から出したことで、スペースがある時間帯に10番はいず、入った時にはゴール前は大渋滞と、目論見は完全に裏目に出ました。これは決して、結果論ではありません。試合後、長友が、香川真司がベンチスタートになったことについて触れ、「守備を落ち着かせてから攻める作戦だった」という趣旨のコメントをしています。問題は、「リスクをとってでも勝ち点3が絶対に必要な試合で、なぜ最初に点を獲ることでなく、獲られないことを考えたのか?」。自分たちの攻撃的なサッカーにこだわるといいながら、コートジボアールに左サイドをやられたことで、指揮官の姿勢はブレてしまったのでしょう。

そして後半、体力が持ちそうになかったギリシャのベタ引きが始まったとき、大迫を香川真司に代えた采配も大いに疑問です。ギリシャの守り方は、とにかく中を固め、日本の選手を外に追い出し、サイドからのクロスを高さのアドバンテージで抑え込む、というスタイルでした。ただでさえ、ペナルティエリア前は大混雑しているのに、左サイドから中に切り込もうとする香川真司を入れれば、スペースがさらになくなるのは必然です。

欲しかったのは、「外から中」ではなく、「前」でした。内田と長友がクロスを上げるとき、ニアに飛び込んでDFを連れてくるFWがおらず、二列目・三列目の選手が侵入するスペースが空きません。ベタ引きされたら、クロスとミドルシュート中心の攻撃になるのはやむをえません。ただし、高さで負ける相手に出したいクロスはグラウンダー。ニアと中央に2人、FWが飛び込み、先に触れそうな場合は足元に強く出し、カットされそうなときは、FWの後ろのスペースに入ってくるMFにフィード。最も有効な攻撃は、この形だったのではないかと思います。

この試合は、スターターで使うのでなければ、香川真司は出番なし。どうしても彼を活かしたいのであれば、本田圭祐を下げ、ゴールに近いポジションでの起用だったのではないでしょうか。後半の展開なら、遠藤よりも、ゴール前への攻め上がりの意識が高く、強いミドルがある長谷部のほうがより機能したでしょう。ベタ引き以降の采配は、まとめるとこうなります。

実際のザッケローニ采配
1)長谷部→遠藤
2)大迫→香川真司、大久保を右にまわし、岡崎をトップ
3)吉田麻也をトップに上げて放り込み。1枚カードをあまらせて終了

このほうが効果的
1)長谷部は代えず
2)本田圭祐、もしくは岡崎を柿谷。前を2枚に
3)それでも点を獲れなかったら長谷部を齋藤
 内田と長友をウイングに上げて、山口、吉田、今野でカウンターをケア
4)最後に山口を遠藤

これはあくまでも一例で、3と4はいろいろな形が考えられそうですが、少なくともザッケローニは、すべて逆、裏目。彼の采配を見ていると、昨晩、デスクでエンピツをなめて仕上げた交代策を発表されているような気分になります。自分たちのスタイルだけを考え、リアルタイムで出現している課題に対応しようとしない日本代表監督は、目の前のギリシャを、どこまで見ていたのでしょうか。

考え抜いて手を尽くすことなく、1枚カードを余らせて終わった日本代表のベンチに、勝利への執念が感じられなかったのが残念で悔しいです。選手たちには、「まだ可能性はある!次の試合で会心の勝利を!」と伝えたいですね。コロンビア戦は、なりふりかまわずゴールを!

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“【Brazil2014】机上の采配は今夜も空転…ギリシャを観ていなかったザッケローニの限界” への11件のフィードバック

  1. 京都グーナー より:

    モイモイ采配と同じにおいがする(笑)

  2. リバサポ より:

    日本やスペインは、研究してくる相手を軽く見ていました。ドン引きされたり、キーマンを徹底的に潰してきたり点差も含めあらゆるシーンを想像していたら、メンバー選考も違っていたはずです。モウリーニョがPSG戦で逆転勝ちした試合前の濃密な戦術強度を見ると悲しいほど薄い戦術でした。

  3. makoto より:

    京都グーナーさん リバサポさん>
    選手を代えても効果が出ない、なぜ選んだかわからない選手が数人いる、など戦術構築力の弱い監督、戦術浸透度の低いチームは共通項がありますね。

  4. duff より:

    カードを残すのと、吉田のパワープレーだけはやめて欲しい。。。

  5. Blues より:

    たしかに今季のチェルシーを観てると10人になって引かれるより11人同士である程度前に出てきてもらえる方がやりやすそうですよね笑

    日本には勝ってほしいですがコートジボワール戦、ギリシャ戦のような試合をするなら正直決勝トーナメントでは観たくないです
    少し前にしていたコロンビア×コートジボワールの方がよっぽど面白かったですね

  6. Joe より:

    ギリシャの判断は、日本が絶対にコロンビアには勝てないという前提。
    見返して欲しいです。そして、ギリシャも無失点でお願いします。

  7. makoto より:

    duffさん>
    おっしゃるとおりです。いきなり本番で、習熟してないことをやっても…。

    Bluesさん>
    そうなんです。このグループでは、やはりコロンビアが決勝トーナメントにふさわしいです。悔しいですが。

    Joeさん>
    最後は、思い切りやってほしいですね。1試合ぐらいは、悔いを残さない試合を! 

  8. さい より:

    僕もほぼ同意です。
    ギリシャ相手に柿谷や斎藤を使わない意味がわからないし、クロス主体のパワープレーやりたいならなぜ豊田やハーフナーを招集しなかったのと思います

  9. makoto より:

    さいさん>
    そうなんです。ああいう試合で使わなかったら、齋藤を招集した意味がまったくありません。

  10. cherry より:

    長谷部は50分を超える出場は今だ無理なようですね
    何故そんな選手を先発で使うのかも謎です
    その辺りからも采配は微妙にくるっている気がします

  11. makoto より:

    cherryさん>
    長谷部がその状態だとすれば、細貝でしたね…。

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