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【Brazil2014】偉大なる敗者、アルジェリア!ドイツを最後まで苦しめた、120分のカウンター

プレミアリーグの熱狂的なファンは、「エジル&メルティ応援派」「バイエルン憎しで応援しない派」に分かれるのではないでしょうか。決勝トーナメントに、ドイツが登場です。ドイツとアルジェリアといえば、古いサッカーファンなら1982年のジャイアントキリングを思い出すでしょう。ヨーロッパとアフリカの実力差が今よりも激しかった時代、スペインワールドカップの初戦で、ルムメニゲ、リトバルスキ、GKシューマッハを擁する優勝候補西ドイツはアルジェリアに1-2で完敗。最終戦を前に、全日程を終えたアルジェリアが2勝1敗、オーストリアが2勝、西ドイツは1勝1敗という並びになります。オーストリアが得失点差2点以内で負ければ、西ドイツとオーストリアが2次リーグ進出。後に「談合試合」とまでいわれたグループ2の最後のゲームは、西ドイツFWフルベッシュが10分に先制すると、両者とも腰を引いてボールをまわすだけに終始。アルジェリアの抗議は実らず、アフリカの希望は2勝しながら1次リーグ敗退で帰国の途につきます。

その後の大会で「最終戦は同時刻開催」となったのは、この試合が物議を醸したのがきっかけです。あれから32年、ドイツへの恨みを忘れないアルジェリア国民の代表は、今度はきっちり決着をつけてやるといわんばかりの勢いで、前半からノイアーの守るゴールに襲いかかりました。

開始早々は、アンカーのポジションに入ったラームから、トマス・ミュラーやムスタフィにスルーパスが入り、ドイツ優勢でゲームが進みますが、アルジェリアが最初に牙をむき始めたのは9分。GKノイアーがペナルティエリアの外に出て守っている状況で、カウンターからトップのスリマニが抜け出し、左サイドでノイアーと駆けっこ。ゴールはガラ空きでしたが、左足のシュートをスライディングしたノイアーが足先に当て、何とかCKに逃れます。これを合図に、アルジェリアが猛攻。14分にはフェグリのドリブルシュート。17分、左サイドを攻め上がったグラムのアーリークロスにスリマニが合わせ、ゴールを割るも判定はオフサイド。1分後にはスダニ、グラムとつないで右ポストぎりぎりのシュートがゴールを襲います。

ポジショニングが的確な世界一のGKノイアーでなければ、ドイツはこの時間帯でゴールを奪われていたでしょう。ピンチを切り抜けたドイツは、20分を過ぎると、プレミアリーグでよく見かける「消えるエジル」が復活。ようやく背番号8にボールが集まり出し、サイドからのクロスをトマス・ミュラーの頭に合わせて先制点を狙います。37分、エジルのミドル。41分には決定的なチャンス。クロースのミドルをGKエンボリが弾くと、そこに飛び込んだのはゲッツェ。しかしシュートはエンボリがセーブし、ドイツの先制はなりません。ペナルティエリア外でボールをまわし、コースが空くとミドルを打ち、サイドで優位に立つとクロスで勝負をかけるドイツと、カウンターで直線的に攻めるアルジェリア。0-0で終わったのが不思議なくらいのエキサイティングなゲームは、後半勝負となりました。

後半、ゲッツェを下げ、シュールレで点を獲りにいこうとするレーヴ監督のドイツがいきなり攻勢。48分のムスタフィのヘッドはGK正面。1分後、アルジェリアのCKをキャッチしたノイアーのゴールキックが一発で最前線のシュールレに通るも、アルジェリアDFが体を張ってカットし、シュートが打てません。53分にはトップのトマス・ミュラーへの縦パスの落としから、ラームが右足で左隅を狙ったミドル。これもGKエンボリが指先でCKに逃れ、0-0が続きます。

アルジェリアは、前線はしつこいチェイスを仕掛けるものの、中盤が前半のようにボールを奪いにいけず、ラインが間延びし始めます。ドイツは中盤で楔のパスが通るようになり、そこからシュールレの右サイドにつないでクロスの雨を降らせます。アルジェリアが先制されるのは、時間の問題。DFハリシュが味方を鼓舞しますが、カウンターに持ち込めるような前でのボール奪取ができません。71分、久しぶりに縦1本からスリマニが抜け出したチャンスも、ペナルティエリアからダッシュしてきたノイアーがヘッドでクリア。残り15分からは、ドイツはサイド攻撃、アルジェリアはひたすらカウンター、スリマニ。勝負はどう転ぶかわかりません。

79分、ドイツのクロスは常に右から。中にフリーで飛び込んだトマス・ミュラーの絶望的なヘッドもエンボリがビッグセーブ!こぼれ球をシュールレが押し込もうとするも、DFのブロックで枠に打てません。攻めても攻めても報われないドイツ。カウンター対応は、ボアテングとメルテザッカーがFWと1対1で対峙しており、ぎりぎりの守備を一発で振り切られるリスクと背中合わせです。プレミアリーグでは、スピードでやられるシーンが多かったメルテザッカー。88分には、ふたりのCBが後ろを取られるピンチがありましたが、またもノイアー!ドイツには、CBコンビの後ろに、もうひとりCBがいます。90分を過ぎ、追加タイムは4分、ドイツ怒涛のクロスは報われず、ゲームはスコアレスのまま延長戦です。

90分を耐えきったアルジェリアは、延長が始まってたった2分でドイツの先制を許してしまいました。ほとんどなかった左からの突破。トマス・ミュラーのグラウンダーを技ありのヒールで流し込んだのは、いちばん危険なシュールレ!アルジェリアは追いつけるのか。もはや気力と体力の勝負です。延長前半は1-0。後半に入っても、攻めているのはドイツです。数人の選手が走れなくなっていたアルジェリアに、後ろを固めながら少人数で突破してくるドイツを崩すことはできず、クラマーやトマス・ミュラーのシュートをブロックするのがせいいっぱい。117分、最後の希望を賭けたスリマニのドリブルがボアテングに止められると、直後にカウンターを喰らってシュールレのシュートのこぼれ球をエジルに全力で叩き込まれ、2-0。

アルジェリアのワールドカップはこれで終わりかと思われましたが、何と何と、ラスト1分にフェグリのクロスをジャブが完璧な左足ボレーで決めて2-1。ドイツは、最後まで安心させてもらえませんでした。120分間、ひたすらカウンターに徹して最後の最後まで戦い抜いたアルジェリアを、心からの拍手で送りたいと思います。素晴らしい!

2-1で敗れましたが、アルジェリアはチリやメキシコと並ぶ、記憶に残る敗者でした。未だに、背筋がぞくぞくします。120分を戦わなければ勝利を手にすることができなかったドイツは、フランス戦までにコンディションを戻せるでしょうか。ワールドカップを頭上に掲げるまで、あと3つの勝利が必要です。

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“【Brazil2014】偉大なる敗者、アルジェリア!ドイツを最後まで苦しめた、120分のカウンター” への1件のコメント

  1. リバサポ より:

    ドイツを応援していましたが、途中からアルジェリアを応援している自分がいました。それにしてもメルティの守りはハラハラものです。
    フランスは、旧植民地でアルジェリア戦争の遺恨が残るアルジェリアよりドイツの方が遣りやすい相手かもしれません。特にベンゼマは・・・

    —–
    ドイツはロイスがいないのが激痛ですね。
    個人的にはドイツはやはり最終ラインが不安なので、ラームはサイドバックで使って、ケディラやシュバインシュタイガーを中盤で使う方がいいと思うのですが、どう思われますか?
    そしてやはりノイアーは半端ないですね笑

    —–
    あぁ、好きなチームがまたきえてしまいました。なぜドイツと当たってしまったのか。彼らで無ければ突破できたのかもしれなかった…
    本当にチリ、メキシコと共にベストチームでした。

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