イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

【Brazil2014総括・後篇】センター5人体制と、新時代のストライカー&攻撃的MFが大会を席巻!

「【Brazil2014総括・前篇】ポゼッションから直線志向へ。スペインからドイツに移ったサッカーの主流」より続きます。

バルサのポゼッションサッカーがトレンドとなり、みんなで真似しようと苦しんでいた時代が過ぎて、「より直線的なサッカーへ」という流れは、中堅・弱小国に顕著でした。コスタリカの台頭や、チリ、メキシコ、アルジェリアの善戦に見られた「ワールドカップで上位に食い込む弱者の戦い方」のポイントは、中央のミドルシュートレンジ(いわゆるバイタルエリア)を空けないセンター5人体制、組織的な守り方、カウンターができる快速FWの3点セットです。

カウンターでいえば、アルジェリアのスリマニ、ナイジェリアのエメニケ、コスタリカのジョエル・キャンベルといった「強豪がノーマークの快速ストライカー」が大暴れ。世界にはまだこんなヤツらがいたのか、と驚かされました。そして片やでは、メキシコやチリのカウンターの速さと人数。あれだけ引いてて、よくまあチャンスでゴール前に5人も揃うな、と観る者をうならせるタフでスピーディーな攻撃を展開していました。ジョエル・キャンベルは、今季はプレミアリーグに戻るのでしょうか。今回の彼のようなカウンター戦術が選択肢のひとつとして確立すれば、劣勢になることが多いプレミアリーグ勢は、欧州で勝てるようになるかもしれません。

コスタリカが敷いた5バックは、統率力があって経験値の高いCBを欠いたオランダや、グループリーグのアルゼンチンまでもが用いた戦術。オランダのキーマンは、若いデフライやマルティンス・インディを支えた「3人めのCB」フラールです。アルゼンチンは決勝トーナメントに入ると、マスチェラーノがセンターMFの底、アンカーの位置に入って相手のラストパスやフィニッシュをつぶします。あれだけタレント揃いだったドイツですら、シュバインシュタイガーがケディラより後ろに位置してCBをサポートしていたぐらいです。突破できるストライカーに、サイドの選手の中への斬り込みが加わり、センターMFまで攻め上がってくる攻撃に対しては、もはや「中央はMF+CB4人では守りきれない」シーンが増えているのです。

そう考えると、日本代表は、前回大会の岡田監督のサッカーのほうが、ザッケローニよりも新しかった、ということになります。アンカーの阿部勇樹は、まさしくマスチェラーノやシュバイニー。今回、トップに岡崎か好調大迫を据え、サイドには、中への力学が働く本田、香川真司や大久保を置いて、アンカーに長谷部か山口が入ったら、そのほうが戦えたかもしれません。世界がスペインからドイツ、オランダ型にシフトしている間に、日本だけがオランダからスペインに逆行してしまっていたのですね。今思えば、ですが。

次のワールドカップを見据えて、香川真司にいいたいのは「トップ下をただ極めるのではなく、サイドや後ろでのプレイと得点パターンの幅を広げてほしい」ということ。サイドも中もできるハメス・ロドリゲスやメッシ。サイドアタッカーなのに、プレミアリーグやブンデスリーガ、スペインでゴールを量産しているロッベン、グリーズマン、アザール。もしくはトニ・クロースのような前線に絡めるセンターMFが、従来10番あるいはトップ下といわれていた選手の新しいスタイルなのではないかと思います。ドイツが守備優先の布陣を組めば、エジルですらサイドにいるのです。アンカーを入れたチームは、トップの真後ろに選手を置けなくなるのですから。

そろそろ、まとめに入りましょう。
⇒スペイン黄金期の4-5-1、4-6-0から、サイドや前線に速く展開する
 4-3-3、5-2-3、5-3-2の時代へ

⇒3CBやアンカーで、中央5人という戦術が増える。
 バイタルエリアでミドルシュートやワンツーをさせない守備

⇒シュート力や快速ドリブルなど個人打開力があるストライカーが重視される
⇒「10番」「トップ下」は得点力必須。後ろやサイドなど、複数の役割が求められる
⇒接戦やPKで競り勝つスーパーGKの育成は重要

これが、私が観た「2014FIFAワールドカップ ブラジル大会」です。プレミアリーグでは、4-5-1が主流ですが、ファン・ハールやクーマンなどオランダ人監督が来ることもあり、3トップや3センターが増えるかもしれません。…最後に、大会ベストゴールを2つだけ、紹介させてください。

ウルグアイ戦の28分。後ろからのヘディングをワントラップし、ペナルティエリア外から強烈なボレーで決めたハメス・ロドリゲス(コロンビア)。オランダ戦の21分、右からマクゴーワンが出した30メートルあろうかというロングクロスを、左足一閃、クロスバーに当てて突き刺したティム・ケーヒル(オーストラリア)。(ジョエル・キャンベル 写真著作者/Danilo Borges/Portal da Copa)

おもしろいと思っていただいた方だけで結構です。お時間が許せば、下のランキングバナーをクリックしていただけると、大変、励みになります!

おもしろいと思っていただけた方は、お時間あれば、下のブログランキングバナーをクリックしていただけると大変うれしいです。所要時間は5秒です。何とぞよろしくお願いいたします!


“【Brazil2014総括・後篇】センター5人体制と、新時代のストライカー&攻撃的MFが大会を席巻!” への6件のフィードバック

  1. aaa より:

    「W杯は戦術のトレンドが決まる大会ではなくなって、CLやELで決まる」のだと感じました
    今回のW杯は移動距離と熱さの影響 柔らかいピッチが影響しすぎて「トレンド」決定づけるような大会ではない・・ただCLやELのトレンドが遅れてW杯に現れるだけ。
    ブラジルの気候と移動の過酷な環境→走れない→戦術的な動きが難しい(組織で戦うのが難しい。)→タレント力で決まる。このおかげで「戦術面では」かなり低いと言わざるを得ない大会でした・・・・(もちろん白熱した大会でしたし、僕も大会を通じて興奮した試合が多かったです)
    スペースを埋める動きやライン操作、プレスの判断等・・・・ひどいありさまでした・・・
    フランスやブラジルがいい例です・・それらのチームが勝ちぬけてしまうのが今大会でした・・・
    戦術レベルの高いメキシコやアメリカ コロンビア チリ ガーナ コスタリカが散ってしまった・・・・
    (戦術レベルは高いがタレント力のないチーム イラン )
    あの環境で組織的な攻撃は厳しい→守備を固めてタレント力を生かしたカウンター攻撃がてっとり早い。ドイツ以外の勝ち上がったチームの多くはこうゆうチーム
    (そうゆう意味ではドイツは本当に素晴らしく こうゆう組織と個人が備わったチームが優勝してよかった ノイアーはブッフォン最盛期を超えたかもね・・・)

    日本について・・・・・・・・
    日本は守備のカバーリングやゾーンディフェンス、ペースの配分、効果的なポゼッションなど技術的なことはもちろん
    「大会の会場や気候に応じて戦い方を柔軟にする」ことが大事なのかもしれない
    最初の二試合 北側の過酷な会場で試合が開催されたことが「不運であった」と感じる
    3試合目のコロンビア戦の会場は南側の涼しい会場で試合をしたため一番動けてたのは明白。
    最初の二試合は過酷な環境なのでアンカーを採用した前回のような戦い方をするか
    後半遠藤を起用しないで細貝を投入するような采配が必要だったのかもしれない。
    (つまりメンバー選びを気候や会場に応じて選ぶ必要もある)
    戦い方に「柔軟性」を身につけることは必要 ポゼッションやめるとかそうゆう話ではない
    スペイン~オランダにシフト・・・・あのような方向性の戦い方ができるほど日本には前線のタレントはいない。失点シーンをみると結局はポゼッションが原因ではなくカバーリングなどのポジショニングやフプレスのかけ方の柔軟性のなさなどのディティールの問題。

    気候や会場で恩恵を受けたチーム・・・・
    ドイツやオランダが組織的で運動量が多いサッカーができた理由は?
    →南で試合をしたチームは運動量が多く 北で試合したチームは運動量がかなり落ちた。普段クラブで走ってる距離より1.2KMくらい運動量少ない・・・・本来の運動量があれば5バックなどせずにカバーできる範囲。
    (クラブでも5-3-2 5-2-3が増えるかはかなり懐疑的。4-3-3は元々多くのチームが使ってる。
    クラブレベルであのような棒立ち5バックをすれば間違いなく蹂躙される)
    試合をする会場の組合せでかなり有利不利がですぎた大会・・・・
    プレイ環境としてはカタール大会はもっと悲惨になる可能性が高い・・・
    チーム全体の走行距離(メートル)をチーム全員分の出場時間(分)で割るデータでは・・・
    南部の試合は1kぐらい運動量が増加している
    オーストラリアが大会一位の運動量で会場がすべて涼しい。南よりのクイアバ クリチバとポルトアレグレは南部にありデータの上位トップ10はすべて南部の試合である

    ポルトアレグレやリオデジャネイロやサンパウロやクリチバなど南部の都市で行われた試合は上位に位置する傾向があって、
    レシフェやマナウスなど過酷と言われた都市で行われた試合は下位に位置する傾向がある。
    ただ、日によって温度や湿度は違ってくるので例外もある。
    例外→最下位はポルトアレグレで行われたドイツとアルジェリアの試合だった。

    豪、アメリカ、ドイツ、ガーナ、オランダ、チリ、アルジャリア、韓国、ポルトガル、ロシア、ベルギー、ボスニア、スペイン←これらの国同士の試合がトップ20を独占しており 涼しい南部の会場ばかり・・・大会で勝ち上がった時の蓄積ダメージが全然違う。
    これらのチームが絡んだ試合はエキサイティングな試合が多かったのでは?
    ロッベンやドイツがトーナメントに上がっても走り切れた理由として有利な会場組合せも理由の一つだと思う。

    トレンドについて・・・
    「ペップバルサ」が強かったのであって「バルサポゼッション」が強かったわけではない
    ペップバイエルンはこれからもポゼッションでひっぱていくし プレミア セリエで優勝したチームもポゼッションが基本。
    守備を基本としたカウンターのアトレティコ ショートカウンターを軸としたドルトムントやリバプール  タレント力を生かし 堅守速攻を基本にポゼッションを組み込む レアルマドリーやチェルシー 様々なスタイルがCLやELでみれます。
    これからの時代は「これ!」といったトレンドではなく「カオスでいろんな戦術が入り乱れる」のではないでしょうか?

    べストゴールはハメスとケーヒルとRVPの三つを挙げときます

  2. Uボマー より:

    今回のW杯は大味な展開のゲームが多かったのですが、勝ち残ったのは守備が固いチームでした。特にドイツとオランダは見事でしたね。ボールの奪い所がはっきりしていて、結果としてカウンターが増えたという印象です。ドイツは選手が守るエリアまで決めているとか…。逆に日本とイングランドはボールの奪い所が決まっていない、相手のストロングポイントを潰さない、と酷い守備でした。コートジボワール戦とイタリア戦は本当に残念なゲームでした。

  3. londres nord より:

    FIFA会長のブラッターがメッシのMVPに驚いたように、今回のブラジルW杯はマーケティングの大会だったような気がしますし、90分以内で一度も負けなっかったドイツとオランダ、コスタリカ、チリとアルゼンチンがベストのチームだと思います。日本は、自分たちのサッカーなんていう立場じゃないです。
    CBの前のフィルター役で、第3のCBになれる選手が現状フラミニだけのアーセナルは、早くDMFを補強しないと、今季4位以内が厳しいかと思われます。

  4. こーこ より:

    フォーメーションはともかくとして今後はオランダ、アルゼンチン式とドイツ式がさらに増えていくんだろうなと思います
    クラブチームでいえばレアルマドリー式とドルトムント式(昨シーズンのバイエルンも)
    大勢で守備を固めてボールを奪ったら個人技でなんとか出来る前線の攻撃陣のカウンターと前線から後ろまでがハードワークしながら中盤でボールを奪い、そこから一気に連動した速い攻撃
    この2つのタイプは今までCL上位やリーグ上位にしか見れなかったやり方ですがこれからどんどん中堅、下位クラブに広がっていくんじゃないかなぁと思います
    それこそ2009年ごろに見られたバルセロナ的なチーム量産のように

  5. makoto より:

    aaaさん>
    熱い長文ありがとうございます。いくつか、私見を。

    1)暑さの影響はありながら、それなりに戦術性には富んでいたと思います。芝が深かったり表面が柔らかかったりするのはブラジルは昔からで、そのことで組織が乱れるということはないという認識です(組織的でおもしろいブラジル同士の試合も数多くありますので)。ブラジルが勝ち抜けたのは、ホームでありドイツと当たる前にさほど難しい相手と当たらなかった(それでも苦戦しましたが)というだけでしょう。
    2)スペインが展開していたポゼッションサッカーの本質は、「相手より多くチャンスを創る」「限りなく前でボールを奪うというリスクヘッジと防御」「ゴールに近い位置で獲るから得点の可能性が上がる」ということです。日本が今回のサッカーに取り組んだことは意義あることと評価していますが、ボールの獲り方が明確でなかった以上、失敗であり、解決策がないなら別なサッカーを考えたほうがいいでしょう。メキシコやチリが参考になるのではないかと思います。
    3)開催地の気候に着目されたのはおもしろいですね。ただし、サッカーは、暑ければ運動量が落ち、涼しければ上がる傾向にあるスポーツなので、涼しい地で試合をしたチームが運動量が多いのは必然です。暑いと、セーブしますしね。ただしこれは、常に相手チームと条件は同じ。「涼しいところで戦った回数が多い=恩恵」ではないように思います。決勝トーナメントに接戦が多く、そのほとんどで番狂わせが起こらなかったことを考慮すれば、気候の影響とは別な力学で勝負が決まったとみるべきでしょう。
    4)組織的に整備されオフサイドを取りまくったコスタリカや、こまめにポジションチェンジを繰り返していたオランダの5バックは、決して棒立ちではないと思います。また、現在、3センターの4-3-3を採用している強豪クラブはレアです。5-3-2などという数字を挙げたのはわかりやすいかと思ったからですが、今は誤解が多かったと反省しています。私の論旨でいえば、5-3-2も4-1-4-1も同じで、「FWとサイドからの斜めの動きを抑え、バイタルエリアをケアするための3CB、もしくは3センターMF」ということをいっています。

  6. makoto より:

    Uボマーさん>
    そうですね。日本とイングランドは、平板で狙いなき守備でした。ザッケローニさんは、コンフェデで突きつけられた課題を解決できないままの本番突入だったのですね。

    londres nordさん
    アーセナルは、現状の4-5-1に加えてオプションを持てるといいですね。ジルー&サンチェスの3-4-1-2か、フラミニもしくはケディラ(来るはず)を底に置いた4-1-4-1のような。

    こーこさん>
    増えそうですね。プレミアリーグにも、アンカー入れて4-1-2-3、3-4-1-2のようなフォーメーションをとるチームが出るような気がします。クーマン、レドナップや、昨季から3トップだったアストン・ヴィラのランバートさんあたりがくさいです。

makoto へ返信するコメントをキャンセル