偏愛的プレミアリーグ見聞録

ファン・ハール監督の発言が話題になっています。本日、インターナショナルチャンピオンズカップ決勝で、リヴァプールとのプレミアリーグ対決を戦うマンチェスター・ユナイテッド。ファン・ハール監督は、ツアーを終えてマンチェスターに戻ったら、 「今季のプレミアリーグでプレイできる見通しがない選手に、移籍の準備をする時間を与えるために、自分の考えを早めに伝える」と語っています。

今回のツアーで主力のルーニーやマタと並んでプレイする機会がなかった香川真司は、当然「レギュラー候補」ではありません。日本のメディアはもちろん、イギリスの新聞各社も、香川真司は放出されるのではないか、アトレティコ・マドリードはどうなんだと話題にしています。現段階で、ファン・ハール監督が早くも戦力外だとジャッジした選手は誰なのでしょうか。マンチェスター・ユナイテッドサポーターや香川真司のファンでなくても、再起をかける2年前のプレミアリーグ王者の動向に注目している方は多いのではないかと思います。

さて、これは多分に私の推測ですが、プレミアリーグ開幕前にファン・ハール監督から肩を叩かれる選手はごくわずかなのではないかと考えます。おそらくは、ナニとフェライニ、アンデルソン、以上。ツアー不参加で、ナポリに売却するという話が出ているフェライニは当確。アシュリー・ヤングに結果で完全に差をつけられたナニのポジションには、ヤヌザイやバレンシア、ザハがおり、3-5-2ならルーク・ショーとラファエウまでライバルとなる現状では、連携に難があるポルトガル人MFの登場チャンスはないに等しいでしょう。ここ数年、ほとんどゲームに出ておらず、モチベーションを失っているアンデルソンを含め、まずはこの3人が「最初のジャッジ」なのではないかとにらんでいます。

では、移籍のニュースが絶えない香川真司とチチャリートは残留かと問われれば、その答えは「他クラブとの移籍話次第」でしょう。ファン・ハール監督が3-4-1-2で戦うと腹を決めた場合、昨季よりひとつ椅子が増える前線に、ファン・ペルシ、ルーニー、ウェルベック、チチャリートという4人が揃うのは、決して多過ぎるわけではありません。「1」のポジションにあたるトップ下についても、マタ、エレーラ、ルーニー、香川真司という顔ぶれなら、日本代表の10番がいたほうが、ルーニーを前で、エレーラを後ろで使うという選択肢が取りやすくなります。今の人員だけみれば、レアル・マドリード戦で美しいダメ押しゴールを決めた香川とチチャリートは、レギュラーメンバーともタイプが違い、必要なタレントなのだと思われます。ただしこれは、あくまでも「今は」です。

これまで、現有戦力の見極めと新フォーメーション構築を優先していたマンチェスター・ユナイテッドが、新戦力獲得の話をどこまで進めているのかはわかりませんが、噂になっている大物選手は、カバーニとビダル。ディ・マリアに100億円以上の投資（高すぎますね）をすると伝えられているパリ・サンジェルマンは、アルゼンチン人MF獲得の交渉がまとまれば、何としてもカバーニを出さないと、FFPの基準をクリアできずに来季のチャンピオンズリーグ出場権を失うことになります。ビダルについては、ユヴェントスのGMマロッタ氏が「ビダル自身が退団を希望しなければ売却しない」とわざわざ語っているぐらいなので、具体的な移籍話は存在するのでしょう。

彼らのプレミアリーグ参入が決まれば、マンチェスター・ユナイテッドは、香川やチチャリートを積極的に売りに出すのではないでしょうか。パリからの風とチリ代表MFの決断という、外からの話次第で陣容が変わるファン・ハール新体制は、プレミアリーグ開幕までに固まらないと思われます。例年ならアーセナルやチェルシーが話題をさらう8月末ですが、今季はロンドンは比較的静かで、北と南が騒がしくなりそうです。

香川真司には、「欧州の大会を戦うレベルのクラブに主力として迎えられるのでなければ、完全なベンチウォーマーとなるリスクがあっても残って戦ってほしい」と思っています。ルーニーやファン・ペルシのようなワールドクラスとプレイできるチャンスは、簡単に手に入れられるものではないのですから。（アルトゥロ・ビダル　写真著作者/Валерий Дудуш）