偏愛的プレミアリーグ見聞録

「There are a lot of good players on this planet. Timo Werner is a great player, Kai Havertz is a great player（この惑星には、多くのグッドプレーヤーが存在している。ティモ・ヴェルナーは素晴らしい選手だ。カイ・ハヴェルツも素晴らしい選手だ）」。ドイツの「スカイ」に対して、サイエンスドキュメンタリーを紹介するかのように話し始めたのは、リヴァプールを率いるユルゲン・クロップ監督です。プレミアリーグ制覇を目前にしている名将が、次世代を担うスター候補たちに、どんな思いを抱いているかまではわかりません。6月15日までなら、バイアウト条項に記されている4900万ポンドを払えば獲得できるはずのヴェルナーは、チェルシーと個人合意に至ったと報じられました。カイ・ハヴェルツ争奪戦は、バイエルン・ミュンヘンがトップランナーといわれています。

クロップ監督とマイケル・エドワーズSDが、彼らの獲得を熱望しているのは間違いないでしょう。淡々と取材に応じながらも、ブンデスリーガ時代の仇敵とプレミアリーグのライバルに同郷の逸材を持っていかれる悔しさをかみしめているのか。「こんな状況では動けない」と割り切り、他の候補に目を移しているのか。あるいは、「勝負はまだ決まっていない」「わがクラブに来てくれるはず」と信じて待っているのか。はっきりしているのは、リヴァプールはすぐには動かないということだけです。「適切なタイミング、チャンス、すべてを満たす必要がある」と、補強の難しさについて語った指揮官は、クラブの現状と自身の見解を明らかにしています。

「6～7週間前は、今年じゅうに再びプレイできるかどうかさえ、わからなかった。もし、シーズンの後半戦を全くこなせてなければ、『オッケー、じゃあいつになればできるんだ？』と不安に苛まれていたはずだ。しかし、プレミアリーグは間もなく再開される」。これからよくなっていくはずと希望的観測を口にしたマネージャーは、現状については「小さな抜け穴をくぐって再開に漕ぎ着けただけであり、まだ何も解決したわけじゃない」と慎重な姿勢を崩していません。

「マンチェスター・ユナイテッドが誰を獲得し、チェルシーが誰を獲得するのか。イングランドでは、あらゆる種類の噂が流れている。その一方で、ここ（＝リヴァプール）はとても静かといって、差し支えないだろう。この状況を真剣に受け止め、通常の経営によって収入を得ようとしても、どれだけ稼げるかわからない…何しろ、いつになれば観客とともにプレイを再開できるかが見えないのだから」

「現時点では、すべてのクラブが損失を計上している。無観客ではシーズンチケットを払い戻さなければならず、おそらく来季は何も売れない。少なくとも最初の10～15試合は無理だ。VIPエリアは埋まらず、チケットは売れない。これが他のパートナーに影響を与え、物事は少しづつ変わっていく。そうなると、選手のサラリー削減についても話し合う必要が発生するが、そんななかでも5000万～6000万ポンドで新戦力をを獲得するなら、理由を明快に説明できなければならない」

ティモ・ヴェルナーやカイ・ハヴェルツは素晴らしい選手だけれど、この先の収益が得られる見通しが立つまでは動けない。新しい戦力に投資しながら、所属する選手の給料を減らすなどといった矛盾を起こすべきではない…クロップ監督の主張に対して異論はありません。一方で、こんなことを思ったのです。クロップの言葉が妥当だとすれば、フランク・ランパードやオーレ・グンナー・スールシャールに同じ質問をしても、似たような答えが返ってくるのではないか、と。

「BBC」「スカイスポーツ」が報じた「チェルシーがヴェルナーと個人合意」は若干フライングで、「代理人が、その条件なら問題ないといったにすぎない」「チェルシーがバイアウト条項の4900万ポンドを払うかどうかは、先々の収益の見通しによる」といった話だとすれば、レッズ、ブルーズ、マン・ユナイテッドは未だ横一線です。答え合わせの最終日は、6月15日。どうなるか、見てみましょう。