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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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移籍金ゼロ、年俸は1/3…アレクシス・サンチェスがインテルと3年契約を締結!

8月5日の「フットボールイタリア」で、インテルのジュゼッペ・マロッタCEOが「明日、公式に発表する」と予告していた異例のディールは、その言葉通りにすんなりオープンになりました。アーセナルで3年半、マンチェスター・ユナイテッドで1年半と、プレミアリーグで5シーズンを過ごしたアレクシス・サンチェスがインテルと3年契約を結びました。セリエAのクラブに完全移籍となるのは、ウディネーゼに所属していた2010-11シーズン以来、9年ぶりです。マンチェスター・ユナイテッドとの契約は2022年まで残っていたのですが、インテルが支払う移籍金はゼロ。高額のサラリーから逃れられればOKという放出条件から、プレミアリーグのクラブの絶望感が伝わってきます。

2016-17シーズンのアーセナルで、プレミアリーグ38試合24ゴール11アシストという出色の数字を残したアタッカーのスランプが始まったのは、8ヵ月後の2018年1月でした。ジョゼ・モウリーニョ率いるマンチェスター・ユナイテッドに移籍した7番は、2戦めのハダースフィールド戦でゴールを決めたものの、明らかにチームにフィットしていませんでした。無謀なドリブルをカットされるシーンを何度見たことか。初ゴールを決めた試合で36回のボールロストを記録した男は、入団3戦めのニューカッスル戦でも36回、5戦めのクリスタル・パレス戦では34回も奪われました。

自らのストロングポイントをアピールしようとセルフィッシュなプレイに走り、指揮官とチームメイトからの信頼を目減りさせていったアタッカーは、2シーズンめもボールを失うシーンが減らず、ベンチで戦況を見つめる時間が増えていきました。プレミアリーグ32試合3ゴール6アシストは、彼の数字ではありません。スールシャール体制で開幕する最初のシーズンにインテルに貸し出され、マンチェスター・ユナイテッドは若いアタッカーのみで戦うことになりました。

新天地でもコンテ監督の戦術に対応できず、負傷もあって冴えないシーズンを過ごしていたアレクシス・サンチェスは、コロナウイルス蔓延による中断の後、最後の13試合で3ゴール7アシストと復調。ニュースで活躍していると知った私は、2つの意味で安堵しました。ひとつは、あのまま終わらなくてよかったというピュアな感情ですが、もうひとつは苦さを伴う複雑な気分でした。もう、彼を見なくてもよくなるかもしれない。マンチェスター・ユナイテッドの7番が、困惑した表情でピッチをさまようのを見ないでいい…。

1800万ポンドとも2000万ポンドともいわれていた年俸は、630万ポンド(約8億6000万円)になると聞きました。マンチェスター・ユナイテッドにとっては、大きなコストダウン。ジェイドン・サンチョやジャック・グリーリッシュは難しいかもしれませんが、前線にタレントを加え、攻撃力を強化していただければと思います。アーセナル時代は好きな選手でしたが、別れの時を迎えた今は「ようやく終わった」としかいえません。長く感じられた2年半。ひとりの選手の最高の瞬間と最大の苦しみを目の当たりにしたのだ、と。


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