偏愛的プレミアリーグ見聞録

GKはアドリアン、CBはオザン・カバクとナット・フィリップス。アリソン、ファン・ダイク、ジョー・ゴメス、マティプ、ファビーニョ、ヘンダーソンと後方のタレントをごっそり欠いたリヴァプールは、悪夢のプレミアリーグ2020-21シーズンをTOP4で終えることができるでしょうか。26節の相手は、最下位シェフィールド・ユナイテッド。プレミアリーグ25試合で15ゴールという貧攻にあえいでいるチームには、さすがに負けないだろうと思いながら観ていたのですが、オザン・カバクの足に当たったボールがネットを揺らした瞬間は、思考停止に陥りました。

SBはアーノルドとロバートソン、中盤にワイナルドゥム、チアゴ・アルカンタラ、カーティス・ジョーンズ、フロントスリーはサラー、フィルミーノ、マネ。ゴールマウスとCB以外は、現在のレッズのベストメンバーです。立ち上がりから5分は、互角の展開。5分に右からのFKを叩いたマクゴールドリックのヘッドは、アドリアンのセーブで事なきをえますが、決まっていてもVARがオフサイドを指摘したはずです。

レッズの最初の決定機は10分。チアゴが前線に浮かしたボールをマネが競り、落ちたボールをさらってドリブルで突進したフィルミーノがラムズデールと1対1になります。右足のシュートは、若き守護神が右腕でセーブ。フォローしたチアゴが左のロバートソンに預けると、ゴールに向かって上がったクロスはラムズデールが外に弾き出しました。アーノルドのクロスに走り込んだサラーは、体に当てたもののボールはファーポストの外。きわどいシーンが3つもあった波状攻撃は、先制点にはつながりませんでした。

17分、後方からのロングフィードをキープしたのはマクバーニー。落としを受けたマクゴールドリックの一撃は、DFに当たってゴール右でバウンドする難しいボールでしたが、アドリアンが冷静にセーブしました。21分、アーノルドの素晴らしいアーリークロスがファーのカーティス・ジョーンズに届きますが、バルドックと競り合いながらのフィニッシュはラムズデールがコースを塞ぎました。

3度めの決定機は30分。GKのパントの競り合いから浮き球がフィルミーノに渡ると、ダイレクトで前方に送ったボールにサラーが反応しました。ジャギエルカをかわして打った右足のシュートは、ラムズデールが残した右足に当てるビッグセーブ。32分、奪われたボールにマネとフィルミーノが寄せ、アーノルドがボックスの右手前でミスパスを奪取しました。 エンダ・スティーヴンスを切り返しでかわして左足を振り抜くと、またもやラムズデールが素晴らしいセービングを披露し、スコアは動きません。

問題のシーンは36分でした。スティーヴンスが左から浮かしたボールを処理しようとしたカバクのクリアはミスタッチとなり、ゴールイン。マクバーニーのオフサイドに救われましたが、これが決まっていれば、セインツ戦、バーンリー戦、ブライトン戦のような0-1地獄にはまっていたかもしれません。前半は0-0。マネとロバートソンがおとなしいのが気になりますが、サラー、フィルミーノ、アーノルド、チアゴのパフォーマンスは悪くありません。

後半立ち上がりの48分、ついにレッズが先制。アーノルドが縦に突破を図るのを見ていたジャギエルカは、ゴールラインを割ったとセルフジャッジしたからこそ、ヒールで中央にクリアしたのでしょう。インプレ―と判断したらCKに逃れるシーンのリスキーなチョイスを、カーティス・ジョーンズは見逃しませんでした。右足のボレーは、今季プレミアリーグ初ゴール。即座にゴールキックをアピールしたベテランCBは、56分にオズボーンに後を譲りました。

レッズが最も警戒すべきは、マクゴールドリックのヘディングとマクバーニーの裏抜けでしょう。62分に9番に背後を取られたカバクは、打つ直前に足を出してCKに逃れました。レッズが先制した後の15分は何度も同点のチャンスがあったのですが、プレミアリーグ最下位のチームはシュートを枠に入れられず、65分の追加点でしびれました。右にいたフィルミーノは、サラーとのワンツーで中に入り、マネをポストに使ってボックス右を突破。ランドストラムとスティーヴンスをかわして放ったシュートは、キーン・ブライアンの足に当たってラムズデールの逆を取る弾道となりました。

クロップ監督の最初のカードは、76分にチアゴをミルナー。ベテランMFの起用は15分と決めていたのかもしれません。カーティス・ジョーンズの縦パスで左から上がったロバートソンが絶妙なクロスをファーに通すと、フリーのサラーのボレーは右にアウト。80分にはカーティス・ジョーンズがお役御免となり、久々のナビ・ケイタがピッチの感触を確かめました。勝ちましたよと宣言するような交代の後、クロップ監督はカードを使わずタイムアップ。0-2、レッズ快勝。プレミアリーグにおけるクリーンシートの勝利は、南野拓実の先制点をきっかけに7ゴールをゲットしたクリスタル・パレス戦以来12試合ぶりです。

フィルミーノが、本来のパフォーマンスを取り戻しつつあるのが最大の収穫でしょう。決定機を数えると、もう2～3点は決めてほしくなりますが、アタッカーと向き合ったピンチでことごとく体に当てたラムズデールの奮闘をほめるしかありません。次節はチェルシー。父親を亡くしたアリソンと、負傷が癒えたジョッタ＆ファビーニョが戻ってくれば、トゥヘル監督が就任してから無敗のチームを倒せる可能性が高まります。昨季の最強チームが意地を見せるか、好調のアウェイチームが王者にホーム5連敗を喰らわせるか。ミッドウィーク開催の決戦に注目しましょう。