偏愛的プレミアリーグ見聞録

イギリス紙「マンチェスター・イヴニング・ニュース」が、お得意のサポーターアンケート企画を掲載していました。「マンチェスター・シティは、誰を放出して誰を残すべきか」。2014年7月、マンチェスター・ユナイテッドの新しい指揮官となったファン・ハール監督が大量に選手を入れ替えると伝えられたときにも実施された「Keep or Sell」。当時のマン・ユナイテッドでは、98％以上のサポーターが残ってほしいと声を揃えたのはファン・ペルシ、マタ、デ・ヘア。香川真司は残留希望71％という微妙な数字で、大半に売ってほしいといわれたのはアンデルソン、ナニ、アシュリー・ヤング、ベベ、クレヴァリー、そしてフェライニでした。こうして並べると、監督やサポーターを完全に見返したフェライニは今季最大のサプライズ。セントラルMFからストライカーまで自在にこなせるベルギー代表がいなければ、マンチェスター・ユナイテッドの順位は「モイーズ並み」だったのではないかと思われます。

さて、このたびはマンチェスター・シティです。アンケート項目はバージョンアップしており、「今夏、誰を残し、誰を放出すべきか」を基本に、「夏に獲得してほしい選手」と、それを加味した「希望のスタメン」という3点セットで意見が求められました。主力選手で最も放出してほしい選手は、何とエディン・ジェコ。私の予想は、以前の攻撃力が見られなくなったコラロフか、フランス代表にまつわるネガティブなニュースが多くて協調性が感じられないナスリだったので、79％のサポーターがジェコ放出OKという数字にはびっくりしました。

とはいえ、今季の20試合4ゴールという成績を見れば納得です。マン・シティのファンは、これ以上よくなりそうにないジェコよりも、粗削りではあるものの身体能力が高く、未知の可能性を秘めているように見えるウィルフリード・ボニーに心が動いているのでしょう。いい選手ではあるものの、ゴール数は下降線を辿っており、30歳手前となったジェコに大きな期待はかけられないという気持ちはわかります。

主力選手第2のサプライズは、ヤヤ・トゥレの放出希望69％。プレミアリーグ優勝を果たした昨季、鬼のようなゴールハンターぶりで20の大台に乗せたチームの大黒柱は、今季はそこまでではないとはいえ、アグエロ、ダヴィド・シルヴァに次ぐ7ゴール。彼がいるのといないのとでは、相手チームに与えるプレッシャーが違います。69％のサポーターに嫌われたのは、もうすぐ32歳という年齢か、昨季よりも目立つ守備さぼりグセか、あるいは夏の恒例行事となった「チームを出ていくぞ騒動」か。61％だったサミル・ナスリもそうですが、クラブに対するロイヤリティが感じられない行動や発言が話題になった選手は、チームに変化が必要というフェイズになると真っ先に槍玉に挙げられます。サポーターのみなさんは、今季のプレミアリーグやチャンピオンズリーグでここぞというときに力を発揮できない理由は、主力の気持ちの弱さだと見ているのかもしれません。

このほか、放出すべしの数字が高いのは、マンガラ、サニャ、コラロフで全員60～70％台。一方で、「残留させてほしい」のTOP3はダヴィド・シルヴァの99％を筆頭に、ジョー・ハート、アグエロ。イングランド代表GKは、バルセロナ戦の信じられないビッグセーブ連発劇がなければ、ここまで高くなかったかもしれません。これに続くのがサバレタ、コンパニで、コンパニは不調とはいえ、頼りになるキャプテン、ワールドクラスのCBという評価は揺るがないようです。

さて、ここからは質問その2の「獲ってほしい選手」です。こちらは、イギリス紙が報じるゴシップに乗っかった声が多い結果になりましたが、1位はユーヴェMFポール・ポグバで40％。2位はドルトムントのフンメルス、3位はガレス・ベイル。以下ロス・バークリー、マルコ・ロイスと続きます。ストライカーを放出せよという声が多いのに、獲得希望にストライカーの名前が出てこないのを見ると、どれだけボニーは期待されているのかと思います。ポグバはヤヤ・トゥレの後継者、フンメルスはマンガラや不調コンパニへの不安、ベイルとマルコ・ロイスはワールドクラスを獲ってくれというオーダーでしょうか。これらを吸収して、サポーターが望む来季のスタメンを形にするとこうなります。

【サポーターが選んだマンチェスター・シティ2015-16】
GK/ジョー・ハート
DF/パブロ・サバレタ、ヴァンサン・コンパニ
マッツ・フンメルス（ドルトムント）、ガエル・クリシー
MF/ポール・ポグバ（ユヴェントス）、ダヴィド・シルヴァ
ヘスス・ナバス、マルコ・ロイス（ドルトムント）
FW/セルヒオ・アグエロ、ウィルフリード・ボニー

わー！攻撃的な布陣ですね。ナスリやダヴィド・シルヴァのような選手をサイドにおかず、縦への速さを強めるなら、ボニーの両脇にアグエロ、マルコ・ロイスを配した3トップで、中盤の底にフェルナンジーニョ。ポグバとダヴィド・シルヴァがインサイドハーフといった4-3-3も…失礼しました。これはただのアンケート結果でした。中盤の守備が不安ですが、ちょっと現実感のあるドリームチームとして、おもしろい顔ぶれだと思います。

今季のマン・シティで、あちこちポジションを変えられても文句をいわず、あれだけがんばって苦しい時期を支えたミルナーは、ここに入らないのですね。「Keep or Sell」でも残留75％と微妙な数字だったイングランド代表MFは、来季は獲ってくれそうなリヴァプールやトッテナムで活躍して、古巣を見返してはどうでしょうか。数字でいえば、ミルナーの活躍はマンチェスター・ユナイテッドのフェライニ、リヴァプールのジェラード、アーセナルのラムジーなどと同等かそれ以上。彼は、もっと評価されるべきだと思います。スタメンに入れたいのは、ヘスス・ナバスよりもミルナーでしょう。…アンケートの集計は、必ずしも民意を反映しないということはわかっていながらも、ついつい熱くなってしまいました。すみません。