偏愛的プレミアリーグ見聞録

日本時間23日15時40分、発信源は「ザ・サン」。第一印象は「まさか」でした。クレミー・ムーディー記者のレポートによると、マンチェスター・シティがハリー・ケイン獲得に向けて1億6000万ポンド（約243億円）のオファーを提示し、ダニエル・レヴィ会長が快諾。プレミアリーグのクラブの買い物としては、ポール・ポグバの8900万ポンドを軽く超えるぶっちぎりのレコードです。ハリー・ケインに支払われる週給40万ポンド（約6071万円）も、プレミアリーグNo.1。先週の日曜日に、代理人を務める兄チャーリーの結婚式に出席したストライカーは、家族や友人と喜びを分かち合ったそうです。

いや、何しろ、「ザ・サン」です。胸騒ぎを覚えつつ、裏取りを急ぎます。まずは、地元クラブに関する情報が早い「マンチェスター・イブニングニュース」。ハリー・ケインに1億6000万ポンドの移籍金を設定し、グリーリッシュと個人合意という見出しが立っていますが、話がとっちらかるのでヴィラのプレーメイカーは後回しです。読んでみると、「ザ・サンが書いていた」という記事でしたが、後追いで「ガブリエウ・ジェズスが反対方向に動くかもしれない」「グリーリッシュが来る場合は、スペインでプレイしたがっているベルナルド・シウヴァが出ていく可能性が高い」と報じています。

「スカイスポーツ」のライブブログを開くと、いきなり「ソン・フンミンが新たな4年契約にサイン！」。今、それやる？とツッコミながら、プレミアリーグで166ゴールをゲットした男の名前を探すと、やはりこちらも「ザ・サン」の記事にフォーカスすると前置きした短いコラムしかありません。パソコンの時計を確認すると、19時。「BBC」をのぞいてみると、TOPニュースは「Son signs new four-year Tottenham deal」のほうでした。エースの1億6000万ポンドについては、2時間前のTwitterが「最新のゴシップ」として配信しています。

そうです。何しろ、「ザ・サン」です。「BBC」の扱い方が正しく思えてしまうのですが、記事に掲載されているチャーリーさんの結婚式の写真がリアルです。見れば見るほど、「弟を意中のクラブに移籍させるという大仕事をやってのけ、満足そうな新郎と新婦、喜びに包まれた本人、3人をそれぞれ祝福する親族」のスナップのような気がしてきます。もう一度、ちゃんと読んでみましょう。ゴシップにしては、妙に長い。後半で、ポグバをはじめとする過去の高額移籍金について紹介されています。

「スパーズが最も高額を得たのは、ガレス・ベイルが2014年にレアル・マドリードに旅立ったときの8600万ポンド」「次の記録は、カイル・ウォーカーが2017年にマンチェスターに移籍した際の4700万ポンド」「リストの3番めは、2009年にマンチェスター・ユナイテッドに3420万ポンドで売却したカルトヒーローのディミトル・ベルバトフ」。噂ベースで作文する人間が、過去の記録をわざわざ調べて並べるでしょうか？

「カイル・ウォーカー（スパーズの元同僚）、ラヒム・スターリング、ジョン・ストーンズのイングランド代表マンチェスタートリオが、ノースウェストではどこに住めばいいかをアドバイスした」などという話もあります。これが確信犯のガセネタあるいは見切り発車なら、なかなかの悪党ですね、ムーディーさん。

いま一度、他のメディアをチェックしてみると、「デイリー・スター」が、「スパーズがバルセロナのアントワーヌ・グリーズマンの最新情報を入手するよう要請」と伝えており、「スカイスポーツ」は「アタランタのCBクリスティアン・ロメロ獲得に向けて、スパーズがオファーを増額して交渉強化」とレポートしています。

これ、突然まとまったお金が手に入った人の行動ですよね！

一晩じゅう、「スカイスポーツ」のライブブログにかじりついているわけにもいかないので、東京オリンピックでも見て、早朝に再度チェックしてみることにしましょう。うう、びっくりです。ペップがスペインの「TV3」で「高すぎる」「獲得は不可能」とぼやいていたのは7月6日。チャーリーとハリーが、ダニエル・レヴィ会長からうれしい電話をもらった（と「ザ・サン」がいっている）のは7月16日。たった10日で、状況が激変したということでしょうか。

「全然勉強してないし」といっていた同級生に、100点と記された答案用紙を見せられたような気分です。いや、ペップもぎりぎりまで何も知らされていなかったと信じましょう。ハリー・ケインの後ろにデブライネ、フォーデン、グリーリッシュは無敵ですね。てか、グリーリッシュも個人合意って、マジですか!?　ええと、まずは「マンチェスター・イブニングニュース」…！