偏愛的プレミアリーグ見聞録

プレミアリーグで10連勝。好調のリヴァプールが、3年ぶりのビッグイヤーをめざして、ベストメンバーで戦います。チャンピオンズリーグ準々決勝ファーストレグ、ベンフィカの本拠地エスタディオ・ダ・ルス。レッズの右サイドには、トレント・アレクサンダー＝アーノルドが戻ってきています。

クロップ監督は、ワトフォード戦から5人をスイッチしました。GKアリソン、DFアーノルド、コナテ、ファン・ダイク、ロバートソン、MFファビーニョ、ナビ・ケイタ、チアゴ・アルカンタラ。フロントスリーはサラー、マネ、ルイス・ディアスという並びです。ベンフィカのCBは、プレミアリーグで活躍したフェルトンゲン＆オタメンディの34歳コンビ。赤いシャツを纏っているのは、ポルトガルのプリメイラ・リーガで3位のチームです。

開始4分、ロバートソンのクロスを頭で合わせたのはナビ・ケイタ。速攻狙いのベンフィカのアタックはシンプルです。8分に左からスプリントしたのは、ポルトガルからやってきたルイス・ディアス。早めに入れたグラウンダーは、ファーから上がったサラーがつま先で触るのが精一杯で、GKヴラホディモスに回収されました。

9分、マネをポストに使って裏に抜けたサラーは、トーキックをニアに外しました。12分にはロングフィードをサラーが追いかけ、ニアに転がしたボールをナビ・ケイタが左足で直接シュート。正面に飛んだボールは、ヴラホディモスが安全重視で外に弾き出します。17分、左からのCKを高い打点で右隅に叩き込んだのは、ハードマークでベンフィカの速攻をつぶしていたイブラヒマ・コナテでした。

0-1となった22分、左からドリブルで上がったエヴァルソンの左足シュートは、ニアにアウト。直後、ナビ・ケイタが縦に出したスルーパスでGKと1対1になったルイス・ディアスは、浮かしたシュートをブロックされてしまいます。27分には、敵陣で奪ったショートカウンター。マネから左のロバートソンにつながり、ファーにクロスが入りますが、ボールはフリーのサラーの頭をかすめて外に流れていきました。

34分の追加点は、アーノルドの素晴らしいロングフィードが決め手でした。ルイス・ディアスが頭で落としたボールを右足でプッシュしたのは、サディオ・マネ。39分に速攻から左に出たボールをキープしたルイス・ディアスのミドルは、ニアポストの脇を抜けていきました。

45分、アーノルドが縦に入れたロングフィードで抜け出したサラーは、1対1からのフィニッシュをGKにぶつけ、逆襲からファン・ダイクと競り合ったラファ・シウヴァは圧力に負けて右に外してしまいました。前半は0-2、シュート数は4対11、オンターゲットは1対6。後半開始から3分、ラファ・シウヴァのグラウンダーをコナテが空振りしてしまい、足元に収めたヌニェスが冷静に右隅に流し込みました。

1点差に戻り、ホームチームの手数をかけない速攻が目立っています。59分、左からのグラウンダーを中央で受けたエヴェルトンの強烈なシュートは、アリソンが右に反応してビッグセーブ。クロップ監督は、残り30分でサラー、マネ、チアゴを下げ、ジョッタ、フィルミーノ、ヘンダーソンを投入しました。

ボールをキープしてスローダウンさせたレッズは、残り15分を切っても後半のシュートはゼロ。ジョッタとフィルミーノが前を向いて持つシーンは見られず、ひたすらチェイシングを繰り返しています。ようやくシュートを打ったのは82分。敵陣で奪った後の波状攻撃から、ヘンダーソンのクロスを右足で合わせたルイス・ディアスは、うまくミートできませんでした。

自陣でキープしていた87分、中央のナビ・ケイタが突如ギアチェンジ。ドリブルで上がった8番の美しいスルーパスでルイス・ディアスが裏に抜け出し、GKをかわして無人のゴールに流し込みました。89分、殊勲のアーノルド＆ナビ・ケイタに代わって、ジョー・ゴメスとミルナー。終了間際にGKと向き合ったジョッタが決めてくれれば文句なしでしたが、2点のリードをアンフィールドに持ち帰れるという結果に不満はありません。

ナビ・ケイタとアーノルドがキラーパスを連発。GKとの1対1を3回止められても3ゴールの一戦は、「力の差を見せつけた」という表現がぴったりです。押され始めた時間に3枚代えを敢行し、マイボールの時間を増やして逆襲に転じたクロップ采配は見事。MVPを選ぶなら、古巣ポルトのライバル相手にハイテンションで戦ったルイス・ディアスを指名したいと思います。カラバオカップ決勝から、6試合1ゴールとペースダウンしたサラーが気がかりですが、マン・シティ戦での爆発を期待しましょう。

プレミアリーグの頂点を争うマンチェスター・シティ戦の後のセカンドレグは、序盤の過ごし方を間違えなければ初戦の貯金をキープできるでしょう。クロップ戦術の素晴らしさと、最強フロントスリーの凄みをあらためて感じた快勝劇でした。素晴らしい！（イブラヒマ・コナテ　写真著作者/ Werner100359）