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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

マンチェスター・シティが黒字決算を発表!同規模のアーセナルとこれだけ違う「儲けの構造」

マンチェスター・シティが年次事業報告書を発表しました。テレビ放映権料やスポンサー増加で潤うプレミアリーグ勢の羽振りのよさは、両クラブの決算数字にも反映されています。アーセナルの2014-15シーズンの総収入は3億4500万ポンド(約635億円)、マンチェスター・シティはこれを上回る3億5200万ポンド(約648億円)といずれも過去最高を記録。同じぐらいの経営規模でありながら、「チケット安売り王」マンチェスター・シティと、プレミアリーグNo.1の高額チケットをサポーターに叱られているアーセナルでは、収益の構造が大きく違うのがおもしろいところです。

アーセナルで最も安いシーズンチケットは1000ポンド(約18万4000円)を超えており、マン・シティの最安である300ポンド(正確には299で、家電量販店みたいな数字です)の3倍以上!マン・シティがチケット代の値上げを実施したこともあって、単品の最安チケットとパイの値段はアーセナルより高いのですが、エティハドはフードコートやレジャー施設を充実させるなどのファンサービスをがんばっており、スタジアムに対する満足度は高いのではないでしょうか。片やは新規ファン開拓にいそしむクラブで、もう一方はシーズンチケットがプラチナ化しているクラブという違いはあれど、年間5万円台でデブライネやスターリングなどの新規目玉商品を堪能できるクラブを横目で見ていると、1000ポンドを払ったのに大ピンチにならないと唯一の新戦力ペトル・チェフの活躍が観られないチームのファンは「チケット値下げしろ」といいたくなりますよね。決算の数字を見ても、そんな彼らの経営スタイルの違いがわかります。

会計の専門的な知識がない方がサッカークラブの経営状態を大づかみで把握するには、損益計算書にある6つの数字をみればいいでしょう。各クラブのサイトにいくと、「Annual Report(年次報告書)」がUPされておりますので、ダウンロードしていただいて40ページ過ぎの数字をご覧ください。チェックポイントは、まずは「総売上」。さらに「マッチデイ収入」「放映権収入」「商業収入」といった売上の3本柱と、「移籍収支」「人件費」です。この稿では、「売上構成におけるアーセナルとマンチェスター・シティの違い」に特化して、話を進めさせていただきます。

マッチデイ収入は、アーセナルの1億ポンド(約184億円)に対して、マンチェスター・シティは4300万ポンド(約79億円)と半分にも満たない数字です。これはスタジアムの規模とチケット単価の違い、ディープなサポーターの購買力の差によるものでしょう。テレビ放映権料はアーセナルが1億2500万ポンド、マンチェスター・シティが1億3500万ポンドと、ここはプレミアリーグ2位と3位という順位の傾斜配分ぐらいしか差がつきません。差分が大きいのは商業収入で、アーセナルが7900万ポンド(約145億円)なのにマンチェスター・シティは何と1億7300万ポンド(約318億円)!現状は、「チケットやシャツ、グッズで儲けているガナーズVSスポンサー開拓で伸びているマン・シティ」という図式なのです。

マンチェスター・シティの発表によると、2008年にシェイク・マンスールさんがクラブを買収してから7年連続で増収。今季は1070万ポンド(約19億7000万円)という利益を初めて出しており、昨年末にトレーニング施設「シティ・フットボール・アカデミー」に2億ポンド(約368億円)を投資しながらも債務ゼロという健康な状態をキープしています。成長の過程では、オーナーが出したお金を株式に転換したり、傘下に抱えるニューヨークやシドニーのクラブと合算して人件費のコントロールをするなどのテクニカルな操作もあるとささやかれ、アブダビルートで多額のスポンサーフィーを得ているのも確かですが、ルールの範囲内でこれだけの成長を遂げてきたことに対しては素晴らしいといわなければなりません。ソリアーノCEOは、黒字で着地したことについて、「マンチェスター・シティの旅にとって歴史的な第一歩」と語り、「戦略的な投資を柱にした財政モデルは、多くのサポートを受けて成功した。近年の飛躍的な成長は、これからの成長をも物語っている」と鼻高々です。

アーセナルは、営業力を高め、有力なグローバルスポンサーを増やせば、さらに収益を上げることができるでしょう。現状のパートナーの顔ぶれを見ると、アジアとアメリカはまだまだ開拓余地が充分あると思われます。ちなみにマンチェスター・ユナイテッドは、昨季は欧州に行けなかったために減収、今季プレミアリーグ終わりにはアディダス効果で売上5億ポンド超え達成見込みだそうです。プレミアリーグの他クラブの年次レポートについては、折をみて随時レポートさせていただきます。(マヌエル・ペジェグリーニ 写真著作者/Дмитрий Голубович)

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“マンチェスター・シティが黒字決算を発表!同規模のアーセナルとこれだけ違う「儲けの構造」” への7件のフィードバック

  1. デリック より:

    話題になってますね、エミレーツのチケットの高さが。ほぼ満員になってるなら適正価格かと思ってましたが、観光客とかで結構埋まってるみたいで、現地のファンを軽視しているってのは良くないですよね。金使わないのに、チケット代は高い。
    現地のファンのイライラは僕らの比じゃないでしょうね。
    安くしてあげて欲しいです。

  2. プレミアリーグ大好き! より:

    スポンサー開拓などの努力を怠りながら、チケットの値上げでファンを苦しめているのに腹が立つと現地のファンが言っていました。
    あとベンゲルの給料が高いのもムカつくとか笑

  3. オーファーマネスル より:

    アーセナルファンなので、やっかみ半分ですが、シティの決算はフットボールクラブというよりアブダビの子会社として見た方が良いと思いますね。
    観客収入がアーセナルの半分=おそらくファン数は少ないかもしくは大差ないにも関わらず商業収入が高いのは、実際にはアブダビ経由のスポンサー収入が商業収入を押し上げていると思いますね。
    クラブとしての営業収入は、ファン数に依存するはずで、やはりユナイテッドが断然強いと思います。

  4. ぐーなー より:

    よくクラブ経営は入場料収入を中心にすべきだ、という意見を聞きますが、アーセナルみたいなクラブは本当に健全なんですかね。ドルトムントのように広く薄くなら納得いくところはあるんですけれどね。高いチケット代っていつまでも維持できるものなんでしょうか?

    アメリカのボールパークのような試みをしているシティはよく努力していると思います。ただアブダビからのスポンサーフィーはそのうち問題視される可能性もあるので、そのときにクラブ経営の真価が問われるのかもしれませんね。

    —–
    エミレーツのチケット代が問題になっていますがそれは裏を返すと人気だという証拠です。

    ロンドンに来た家族連れがエミレーツに行って子供がファンになったら…ロンドン観光のついでにエミレーツに来た観光客がファンになったら…

    ねずみ算的に知名度、人気ともにあがるはずです。

    現地のファンも大事ですが、グローバル化が進んだ現代において世界のファンの獲得はそれ以上に大事なことではないかと思います。

    ロンドンの中心から近いエミレーツは「気軽に行ける」スタジアムではないかと思います。
    マンチェスターやリバプールは地理的に事情は異なるでしょう。

    プレミアリーグチームのツイッターフォロワーランキングでアーセナルがトップなのも矛盾しないでしょう。

    かくいう私も家族でハイベリー、エミレーツ観戦と一緒にロンドン観光を満喫した1観光客です(笑)

  5. makoto より:

    デリックさん プレミアリーグ大好き!さん>
    観光客が入っているのはシーズンチケットのエクスチェンジが大半で、現状ガナーズのチケットは行列がなくならず、チケット代を下げても儲けが減るだけで客が収容できない状態のようです。ファンのイライラは、私も感じるところですので理解するものの、経営的には、メリットはさほどないのにリスク激高のチケット代減額は選びにくいでしょうね…。

    オーファーマネスルさん>
    アブダビ関連の額が大きかったのは確かですが、自前のスポンサー拡大努力をしており、広報やIRもきちんとしてます。経営基盤はファン層が厚いマンチェスター・ユナイテッドが強いというのは賛成ですが、そのうちお隣も追いついてきそうです。経営陣は、相当優秀です。

    Uボマーさん>
    もはや、マッチデイ収入中心ではやっていけない世界に突入していると思います。コンテンツ企業として、ブランド力を効かせながら商業収入をどう伸ばすかがポイントだという認識です。

    ぐーなーさん>
    そうですね。えらい人気です。シーズンチケットのシェアを下げるとキャンセル待ちのファンに叩かれ、入場料を下げると収入は減ってファン数そのままとメリットがなく、チケット代をキープすると高いと叱られ、好立地で観やすいスタジアムに客席増設するのは周辺環境的にもコスト的にも難しく…と、かなり詰んでます。人気ゆえの悩み、なんですけどね。まずは商業収入を増やすこと、そのうえでチケットの定価を下げるのではなく、カップ戦で勝ち抜いた時に「決勝進出おめでとうチケット」などのキャンペーンでファンに喜んでもらう、といったあたりが現実的なのではないかと思いました。

  6. ゆうま より:

    両マンチェスターの増収への努力は本当に素晴らしいと思いますし
    アーセナルの営業担当者は彼らの爪の垢を飲むべきですね。

    数年前マンUとアーセナルが時を同じくして日本に来た時は
    両クラブの選手たちの行動の違いがとても印象的でした。

    とは言えその時はサニャやアルテタが寿司を握りメルテザッカーとポドルスキーが
    チャンバラする姿を見て笑い転げていたのですが(笑)

  7. makoto より:

    ゆうまさん>
    アーセナルは日本にファンが多いので、もっとぐいぐいマーケティングかけてもいいのに、と思います。

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