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2013.05.25 香川真司

香川真司のプレミアリーグ1年め (3)香川はなぜ、チェルシーと戦えなかったのか?

今季が始まる前、マンチェスター・ユナイテッドは、「ヨーロッパで勝てるチームに改革するために香川真司、ファン・ペルシを獲得。慣れ親しんだ4-4-2のサイドアタックのサッカーを変えていく」と伝えられていました。プレシーズンマッチから香川真司は存在感を発揮し、開幕戦は堂々のスタメン。この頃は、香川にもチームにも輝かしい未来が待っているのではないか、という期待感に溢れていました。

ところが、終わってみれば、プレミアリーグでは優勝したものの、チャンピオンズリーグではレアル・マドリードに終始押し込まれて敗退。FAカップでもチェルシーに力負けするなど、望んでいた結果が得られたとは言い難いシーズンでした。さすがに「トレブルじゃなきゃ納得しない」などとよくばりなことをいうつもりはありませんが、リーグ優勝したとはいえその内容が物足りません。サー・アレックス・ファーガソン監督がチーム改革を諦めて現実路線に舵を切り戻したため、根本的なところでサッカーはあまり変わったとはいえません。ファン・ペルシという決定力を得て、11月以降はほとんど取りこぼしなしで快走したため、プレミアリーグでは独走でしたが、マンチェスター・シティやチェルシーに対しては、前半は威勢がよくても時間が進むにつれ、彼らのほうがレベルが上なのではないかと感じさせるような受け身のサッカーになり、トッテナムには勝てませんでした。自身の引退を決めたことで今季の結果のみを狙いにいったのか、チーム改革の障害となる何かがあったのか、真相はわかりませんが、ヨーロッパで勝てるチームづくりは、来季、モイーズ新監督に託されることになります。

さて、香川真司です。彼は今季、プレミアリーグで4位以内に入ったチェルシー、マンチェスター・シティ、アーセナルとのゲームにおいて、全部足しても数分間の出場に終わっています。チェルシーについては、オールド・トラフォードで戦ったFAカップ準々決勝の最初のゲームで出場しましたが、力を発揮できずに76分にウェルベックに交代しました。3月以降、香川がスタメンではなかった試合の相手を見るとわかりやすい。レアル・マドリード、レディング、マンチェスター・シティ、チェルシー(FAカップ、プレミアリーグで計2試合)、アーセナル。いつの頃からか、ファーガソン監督はトップクラブとの対戦における香川のプライオリティを明確に下げています。これは、どういうことなのでしょうか。

この問いに答えることが、香川の課題と来季以降の強化ポイントを明確にするのだと思います。おそらく、ファーガソン監督が今季の香川に見切りをつけたのは2月13日、場所はスペイン、マドリードのサンチャゴ・ベルナベウ。チャンピオンズリーグの決勝トーナメント一回戦のレアル・マドリード戦です。そのポイントを2つ挙げれば「追い込むディフェンスができていない」「中盤での打開力が足りない」ということになるでしょう。

香川真司は、決して運動量が少ないわけではなく、相手ボールになれば、むしろ献身的にチェイシングを行います。しかし、その守り方は、あくまでも相手選手の縦への侵入を防ぐだけであり、ドリブルで突破を許してしまうことも少なくありません。これでは相手を苦しい状況に追い込めず、センターを破られると一瞬でピンチを招くことにもなります。レアル・マドリードのケディラ、モドリッチ、マンチェスター・シティのヤヤ・トゥレ、チェルシーのランパードなど、前への推進力があるセンターMFがいるチームと戦ううえで、ファーガソン監督が香川の守備をリスクと捉え、ベンチに下げる決断をしたであろうことは想像に難くありません。ただチェイスするだけで終わるのではなく、サイドに相手を追い込むなり、タイミングを読んでカットするなりができないと、相手に脅威を与えられないまま、最終ラインで食い止めるだけというリスクの高いサッカーになってしまいます。ドルトムントでは、香川のよさを活かすべく、守備の負担は軽減されていましたが、このチームではディフェンスも求められます。相手にやっかいと思わせるようないやらしい守備が身につけば、香川の価値は一気に上がることでしょう。この点については、ルーニーやスコールズはいいお手本ですね。

そしてもうひとつは、中盤での打開力。香川のよさであるダイレクトプレーや、前を向いたときの攻撃のバリエーションの多彩さが発揮できるときはいいのですが、厳しくマークに付かれると、バックパスを戻すだけになってしまうことがあります。こういったとき、「うまくDFをさばいて前にパスを出す」「自らがサイドに展開する」「ドリブルで一瞬かわす」などのプレイができれば、高めの位置でボールをもらえる回数が増え、自らの得点チャンスを増やすことにもつながるでしょう。香川の途中交代が多いのは、後半になって相手にうまく対応されると、ゲームから消えてしまうことがあるからだと思います。中盤で細かいパスのやりとりをしてスペースを作るだけでなく、ときに自らがタメを作ったり局面を打開するパスを出したりできれば、常時チームの中心として機能できるのではないでしょうか。

さて、次回が最終回ですが、モイーズ新監督の香川の使い方を予測してみようと思います。引き続き、よろしくお願いします。
香川真司のプレミアリーグ1年め (4)モイーズは香川をどう使う? に続く

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