偏愛的プレミアリーグ見聞録

プレミアリーグでくすぶっていた3人が、新天地に旅立つと発表されました。ニコラ・ペペはニース、エリック・バイリーはマルセイユ。エヴァートンで揮わなかったデル・アリは、ベシクタシュで復活をめざします。全員ローン移籍ですが、彼らが再び同じシャツを着てプレミアリーグに出場することはないでしょう。

最後まで、「クラブ史上最高額の移籍金7200万ポンド」が重荷となってしまったニコラ・ペペ。しかし、2020-21シーズンにプレミアリーグ29試合10ゴール1アシストという数字を残したウインガーを、失敗と切り捨てるべきではないでしょう。ウナイ・エメリが成功していれば、彼の評価も高まっていたはずです。

激しいプレスと連動性のある守備を求めるアルテタの下では輝けず、冨安健洋とスムーズに連携するブカヨ・サカの活躍をベンチから見つめる存在になってしまいました。それでも、ヨーロッパリーグでは、2019-20からの2シーズンで19試合8ゴール6アシスト。右サイドからカットインして強引にシュートを狙うプレイは、スペースを与えてくれる欧州のクラブが相手なら効果的でした。

エリック・バイリーが素晴らしかったといえるのは、ジョゼ・モウリーニョの初年度だった2016-17シーズンのみでした。2年めからは足首、頭部、膝と負傷が相次ぎ、スピードと安定感を失ったまま、戦力外となってしまいました。

プレミアリーグ出場は、最初のシーズンが25試合、その後の5年は45試合。マンチェスター・ユナイテッドを背負って立つと期待されたCBは、既に28歳です。510万ポンド（約8億円）の買い取りオプションが付いたマルセイユで真価を発揮できなければ、キャリアの晩年を中小クラブで過ごすことになるでしょう。

そして、デル・アリです。2016-17シーズンのプレミアリーグで、37試合18ゴール9アシストという出色のスタッツを叩き出したプレーメイカーは、直近2シーズンは36試合1ゴール1アシスト。ゴールシーンを生み出すプレイが激減し、完全移籍で加わったエヴァートンをわずか半年で去ることになりました。

コロナ禍でのバー通い、SNSにおける不適切発言など、スタジアムの外での振る舞いが話題になることが増えた元イングランド代表は、自らの才能とモチベーションをナイトクラブに置き忘れてしまったのでしょうか。トルコで活躍しただけでは、ビッグクラブは振り向かないでしょう。スランプに陥った後、プレミアリーグの中小クラブで復活を遂げたファン・デル・サールやオーウェンのように、時間をかけて再評価を得なければなりません。

一方、最近のプレミアリーグ参入リストを見ると、中堅クラブの積極的な補強が目を引きます。ニューカッスルは、レアル・ソシエダのスウェーデン代表FWアレクサンデル・イサクを6300万ポンド（ぶっちぎりのクラブレコード！）で獲得。ウェストハムは、アーセナルのターゲットといわれていたルーカス・パケタを口説き落とし、リヨンと口頭合意に至ったと伝えられています。

「テレグラフ」が4250万ポンドのオープニングオファーを拒否されたと報じたのは一昨日。「Goal」によると、イーストロンドンとリヨンはその後も交渉を継続し、5000万ポンド（約81億円）で妥結したようです。アーセナル、トッテナム、リヴァプールでも立ち止まるような金額のビッグディール2連発！さらに先ほど、エヴァートンがブライトンFWニール・モペイと3年契約を結んだという速報が届きました。

22歳のイサクと24歳のルーカス・パケタは、高額の移籍金という重荷を背負い切れるのでしょうか。リーグ戦で2ケタゴールが1回のイサクが、ジェズス、スターリング、ハーランド、リシャルリソンより上と聞くと、違和感を覚えます。3年後、ニコラ・ペペと同じ道を辿るのか、あるいはビッグクラブからラブコールを受けるのか。デル・アリの苦境を誰も予測できなかったように、彼の未来もわかりません。

史上最高の札束乱舞のプレミアリーグ。サウジアラビアの資本が入ったクラブはともかく、ハマーズまで…!?　デッドラインデーまで残り6日となりましたが、メディアを賑わすのはチェルシーとマンチェスター・ユナイテッドだけではなさそうです。