偏愛的プレミアリーグ見聞録

プレミアリーグ開幕から3戦未勝利と出遅れたリヴァプールが、これまでの鬱憤を晴らす9発圧勝！ボーンマスをアンフィールドに迎えた一戦は、キックオフから10分も経たないうちに決着してしまいました。

先制ゴールの予兆は、2分の速攻でした。アーノルドにサイドチェンジしたロバートソンが、ピッチを斜めにスプリントして右サイドにオーバーラップ。サラーのパスを受けたエリオットが左SBにパスを通すと、ボックス右で縦パスを追いかけたのはフィルミーノでした。GKトラヴァースに先着され、フィニッシュには至らなかったものの、崩せるという自信がなければ、SBは逆サイドに走り込んだりはしないでしょう。

最初のゴールは、その1分後。右から上がったフィルミーノがサラーを走らせ、11番のクロスのクリアを拾うと、タヴァーニアをかわして浮かしたボールがルイス・ディアスの頭に届きました。完璧なヘディングシュートがGKの指先を抜け、1-0。2点めが決まったのは、VARを経てゴールが認められた100秒後でした。

右サイドのサラーにボールが渡り、カットインから脇にいたフィルミーノにパスが出るまでは、よくあるシーン。9番は狙い通りにトラップできず、ボールは意図しない右に転がってしまいました。そこにいたのは、エリオット。迷いなく左足を振り抜いた19歳は、左隅に決まったプレミアリーグ初ゴールに感動し、目を潤ませています。

電光石火の2-0。アンフィールドに集うサポーターの大半が、今季初勝利を確信したのではないでしょうか。3点めは28分、美しいミドルシュート。中に絞っていたアーノルドが、フィルミーノとワンツーをかわして右から上がると、クロスに打った一撃がゴールの左上に突き刺さりました。

30分も経たないうちに3アシストを記録したボビーのなかに、エリオットとアーノルドに対するリスペクトはあっても、自らが3つお膳立てしたという実感はないでしょう。この日の彼は、フットボールの神様に支えられていました。

31分の4点めは、こんな形で決まることがあるのかと絶句するラッキーなゴール。右サイドでキープしたサラーがアーノルドに戻そうとしたボールが、タヴァーニアの左足に当たって跳ね上がり、ゴール前にいた9番のプレーエリアに落下しました。

右足アウトでタッチしたイージーなボレーが決まり、アンフィールドはテンションMAX。このまま終わるかと思われた前半は、終了間際にもうひとつゴールが足されました。ロバートソンのCKをヘッドで合わせたのはファン・ダイク。タヴァーニアを抑えながら右の側頭部に当てたゴールシーンを見たクロップ監督は、両手を突き上げて喜びを表現しています。

ハーフタイムにエリオットが下がり、ファビオ・カルヴァーリョがピッチへ。レッズのゴール数に興味が集まるセカンドハーフが始まり、1分ちょうどで6点めが入ります。右からアーリークロスを上げたのはアーノルド。中央のルイス・ディアスはオフサイドに見えたのですが、その手前に走ったメファムが左足で触り、ネットを揺らしてしまいました。

62分の7点めも、フィルミーノの幸運なゴールです。右のショートコーナーから、ゴールに向かうボールを蹴ったロバートソンは、中央にいたヘンダーソンの頭に合わせたかったのでしょう。14番の頭上を越えたボールは、トラヴァースが外に弾き出せば問題なかったのですが、余裕がなかったGKは真ん前にいたフィルミーノの足元に落としてしまいます。

1発めをGKにぶつけた9番は、落ち着いてこぼれ球を押し込み、2ゴール3アシスト。クロップ監督は、残り20分となったところでフィルミーノ、ロバートソン、ヘンダーソンを下げ、ツィミカス、ミルナーと17歳のバイチェティッチを投入しました。81分のゴールは、リヴァプール得意の「SB to SB」。アーノルドのサイドチェンジをツィミカスがダイレクトで脇に浮かすと、ファビオ・カルヴァーリョのボレーがゴール右に決まりました。

最後の1発は85分、CKからのヘディングシュート。ゴールショーの幕を開けたルイス・ディアスが緞帳を下ろし、騒がしい時間がようやく終わりました。圧勝劇における最大のサプライズは、モー・サラーのノーゴールノーアシストでしょう。4つのゴールに絡んだ11番の仕事は、「アシストとオウンゴールのきっかけづくり」。直接的な数字を残せなかった理由を問われても、「Not his day」としかいいようがありません。

ようやくひとつ取ったレッズの次節は、アンフィールドでニューカッスル。マン・シティと引き分けた難敵に敗れれば、首位アーセナルとのポイント差が2ケタになってしまうかもしれません。次こそは、昨季プレミアリーグの得点王に決めてもらいましょう。注目のキックオフは、現地時間で8月31日20時です。