偏愛的プレミアリーグ見聞録

1984年以来、39年ぶりのチャンピオン！ルーマニアとジョージアの共催で行われたユーロU-21のファイナルは、イングランドが1-0でスペインを下しました。決勝ゴールは、前半の追加タイム。コール・パーマーが左足で蹴ったFKがカーティス・ジョーンズに当たって左隅にコースを変え、好守を見せていたGKテナスの指先を抜けていきました。

最大のハイライトは、コルウィルのファールで95分に献上したPKです。スペインのキッカーは、決めたら通算4ゴールで単独得点王に躍り出るアベル・ルイス。右に飛んでセーブしたジェームズ・トラフォードは、こぼれ球に先着したアイマル・オロスのシュートも足でブロックしました。最後にPKをストップして無失点優勝…守護神としては最高のフィナーレです。

ヤングライオンズが頂点に立てた理由のひとつは、クラブで思うように結果を残せず、ハングリーだった選手が多かったからでしょう。2ゴール1アシストで大会MVPとなったアントニー・ゴードンは、孤軍奮闘のエヴァートンでプレミアリーグ16戦3ゴールと苦しんだ後、移籍したニューカッスルでは先発3試合で1ゴールのみ。エネルギーをもてあまして大会に突入していたはずです。

4-4-2の左サイドで起用され、2ゴール1アシストという数字を残したスミス・ロウは、負傷で前半戦の大半を失い、プレミアリーグ12試合出場で先発ゼロ。ノーゴール2アシストは、2021-22シーズンに2ケタゴールを記録した選手の数字ではありません。ケガといえば、リヴァプールのカーティス・ジョーンズも3月まで機能せず、最終盤の11試合でようやく調子を上げてきています。

スパーズのオリヴァー・スキップもケガで出遅れ、コンスタントに出番を得られるようになったのは、ベンタンクールがシーズンアウトとなった2月からです。1月にPSVからチェルシーに移籍したノニ・マドゥエケも、プレミアリーグでは12戦1ゴールと不完全燃焼。ポチェッティーノ監督の下で戦う来季が勝負です。

トップリーグでシーズンを通じて活躍したのは、ノッティンガム・フォレストでリーグ戦37試合5ゴール8アシストのモルガン・ギブス＝ホワイトと、ヴィラで35試合に出場したジェイコブ・ラムジー、リヴァプールで出番を増やしたエリオットぐらいです。チャンピオンシップではありますが、ノリッジでレギュラーになって5年のマックス・アーロンズも、ここに入れておきましょう。

コルウィル、ジェームズ・ガーナー、コール・パーマー、アンジェル・ゴメス、テイラー・ハーウッド＝ベリスのように、ビッグクラブで出番を得られず移籍したり、ローンで武者修行に出たりして経験を積んだ選手もいます。しかし最初に挙げた5人は、ビッグクラブで実績がありながら苦しい1年を過ごし、ようやく再ブレイクの兆しが見えてきたワールドクラス候補です。

それぞれに、ユーロＵ-21に賭ける思いがあったのではないでしょうか。今回の優勝でつかんだ自信を、プレミアリーグ23-24シーズンにつなげていただければと思います。来季といえば、最後のPKストップでヒーローになったトラフォードは、1500万ポンドとアドオン400万ポンドでマン・シティからバーンリーに移籍します。まだ20歳で、本格化が楽しみな逸材です。

あらためて、大会史上初の無失点での欧州制覇、おめでとうございます！トロフィーを手に、誇らしい表情を浮かべるアントニー・ゴードンやトラフォードを見ながら、ここにいるはずだったメイソン・グリーンウッドの姿が脳裏をよぎります。事件から1年半を経ても、復活への道は閉ざされたままです。