現地紙のお笑い系記事です!「カスパー・シュマイケルはプレミアリーグNo.2のプレイメーカー」
みなさん、この記事には決してムキになって怒らないでください。執筆したジョン・ムーディさんがオチの手前に入れている言葉は、「Bonkers, eh?(頭おかしいすか?)」。どう?おもしろかったでしょ?と、確信犯でやってらっしゃいます。ときどき記事のコメント欄をのぞくと、日本語の記事だけを読んで「この分析はおかしい!」などと腹を立てている方がいますが、お笑い芸人のボケに対して「その意見は正しくない」といってしまっていることがあるというわけですね。そもそもが、これはプレイメーカーに関するランキングではなく、見出しの立て方はトリッキーです。
カスパー・シュマイケルの上にいる唯一の選手は、チェルシーの中盤を組み立てるセスク・ファブレガスではあるものの、アシスト王メスト・エジルも、プレミアリーグ最高の新戦力ディミトリ・パイェも、天才エリクセンもTOP10圏外です。ここからいえるのは、「彼らはファイナルサードへの効果的なパスが少なかった」ではなく、「ミドルサードに下がってくることが少なかった」ということなのかもしれません。ファイナルサードのなかから出されたパスは、ここではカウントされていないのですから。プレイメーカーとひとことでいっても、トップ下で司令塔として動かす人、中盤の真ん中で仕切る人と、さまざまなスタイルがあります。あくまでも「後ろから最前線にボールを出した数」で並べているだけのこのランキング、見ていておもしろいのは、3人も入っているレスターの戦術徹底度の高さが浮き彫りになっていることと、ファイナルサードへのパスとひとことでいっても、選手によって特徴的なプレイが違うのが窺えることでしょう。
【プレミアリーグ2015-16 ファイナルサードへのパスの本数ランキング】
1位/セスク・ファブレガス(チェルシー) →555回
2位/カスパー・シュマイケル(レスター) →514回
3位/ドリンクウォーター(レスター) →486回
4位/ギャレス・バリー(エヴァートン) →413回
5位/フェルナンジーニョ(マンチェスター・シティ)→352回
6位/アルデルヴァイレルト(トッテナム) →349回
7位/ドーソン(WBA) →342回
8位/サーマン(ボーンマス) →336回
9位/クレスウェル(ウェストハム) →332回
10位/フクス(レスター) →324回
モウリーニョ監督が指揮を執っていた前半戦のチェルシーは守備の綻びを繕えず、セスクも叩かれましたが、スペイン代表のセントラルMFは、後半戦になって調子を取り戻しています。彼がこれだけの本数の縦パスを通していたとすると、勝ちきれない試合が多かったヒディンク監督のチームが抱えていた問題の多くは、最後の崩しの局面にあったのでしょう。シュマイケルのボールは、とてつもなく飛び、あっさりタッチを割ることも多かったパントキック。ドリンクウォーターといえば、ジェイミー・ヴァーディを走らせ、マフレズの足元に届く高速グラウンダー。フェルナンジーニョのパスをより多く受けていたのは、アグエロ、デブライネ、ヘスス・ナバスでしょうか。アルデルヴァイレルトは、両サイドで待つ選手にぴったり合うロングフィードでしょう。ギャレス・バリーはルカクへの楔とサイドへの展開。プレミアリーグで走行距離ナンバーワンだったボーンマスで最もよく走ったサーマンが、最前線へのボールがこれだけ多かったのを見ると、残留の立役者はチームの心臓だったこの人なのだなとあらためて思います。
SBが3人入っているのは、サイドアタッカーを縦に走らせるボールを出す機会が多いからだと思われますが、フクス、クレスウェル、ドーソンは、それに加えてストライカーを勝負させるロングクロスを頻繁に入れていました。「守って守ってカウンターと放り込み」だったピューリス監督のWBAから、このランキングに入る選手がいるのは納得です。
冷静に考えれば、カスパー・シュマイケルの500本超えは凄いですね。1試合あたり13回以上も、ジェイミー・ヴァーディとマフレズ、岡崎慎司を走らせていたわけですから。ドリンクウォーターを足すとちょうど1000本。フクスを入れれば1300。2分30秒に1回は、3人のうちの誰かが前線を走らせていた計算になります。奇跡的なプレミアリーグ優勝を遂げたレスターの強さのひとつは、戦い方に迷いがなかったことでしょう。つなぐGKが多くなってから20年以上も経つなかで、あまりにクラシックなドカン!を繰り返したカスパー・シュマイケルに、「よくぞやりきった!」と拍手を送らせていただきます。さて、この記事のオチを紹介しましょう。声に出して、ナレーション風に読むことをおすすめいたします。
「So if the Foxes suffer an injury crisis in the middle of the park next season, there is one man they can turn to…(もし、レスターが次のシーズン、中盤がケガ人だらけになってピンチを迎えたら、振り向けばそこにひとりの男が…)」
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