偏愛的プレミアリーグ見聞録

アメックスが歓喜に包まれたその瞬間、ロベルト・ゼ・デルビはスタンドのサポーターに突進し、背中を叩かれる手洗い祝福を受けました。ルイス・ダンクが後ろにいたファン・ヘッケに預けたのは87分。短いパスをもらったビリー・ギルモアがララナに楔を入れると、ダイレクトではたいたボールがパスカル・グロスの足元に届きました。

ヨーロッパリーググループステージ最終節、ブライトンVSマルセイユの首位争奪戦。フランスのクラブは3勝2分で11ポイント、プレミアリーグは3勝1分1敗で10ポイントと、その差はひとつしかありません。デ・ゼルビのチームが勝てば、プレーオフをスルーしてノックアウトラウンドに進出。攻め続けた青と白のストライプはゴールを決められず、0-0で最終盤を迎えていました。

パスカル・グロスが、右からボックスに入ったジョアン・ペドロに送ったラストパスもダイレクト。ムベンバとムリーリョの前でトラップしたストライカーは、右にタッチして角度を作り、振りの速い一撃を左隅に放ちました。GKパウ・ロペスは1歩も動けず。夏にブライトンに加わったジョアン・ペドロは、今季ヨーロッパリーグで6発となり、得点王争いのTOPに立ちました。

指揮官は殊勲のジョアン・ペドロとビリー・ギルモアを下げ、バレバとフェルトマンで逃げ切りを図ります。追加タイムは90分。左サイドを何度も突破してチャンスを創っていた三笘薫が強引にドリブルで運ぼうとしたのは、追加点を決めたかったからではなく、ファールを誘って時間を遣いたかったからでしょう。

大舞台を知るジェームズ・ミルナーと、チームの戦術を熟知しているパスカル・グロスは落ち着いてボールをさばいています。ラインを下げずに中盤でまわし、速攻を喰らいにくいSBの裏へのパスを徹底したホームチームは、ファイナルサードにボールを入れさせることなく、タイムアップを迎えました。

クラブ創立122年めで、初めての欧州チャレンジ。マルセイユ、アヤックス、アテネが揃う死のグループで、堂々の首位フィニッシュ。ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンが、またひとつクラブの歴史に偉業を刻みました。拍手が鳴りやまないアメックス、誇らしげな表情でスタンドを見つめるジョアン・ペドロ。三笘薫も笑顔を浮かべています。

快挙に続く道のりは、ヒヤリとするシーンの連続でした。15分の波状攻撃で、ボックス右手前に出たクラウスのシュートがパスカル・グロスの足に当たり、クロスバーにヒット。59分にはオーバメヤンが左サイドのアリを走らせ、ニアで折り返しを受けたムリージョの一撃が左のポストを叩くと、GKスティールの足を弾いたボールをファン・ヘッケがぎりぎりでクリアしました。

それでも終わってみれば、マルセイユのオンターゲットはゼロ。イゴールとヒンシェルウッドに左右をまかせざるをえなかった急造の最終ラインは、最後まで集中力を切らさずに戦い抜きました。素晴らしいプレイに対して、拍手を忘れなかったサウスコーストのサポーターたちは、誇りを抱いてパブに向かったのではないでしょうか。

フライブルクと勝ち点12で並んでいたウェストハムも、ホームの直接対決を2-0で勝ち切り、首位通過を決めました。こちらも勝負を決めたのは、夏に加わったニューフェイスです。エドソン・ルバレスがラインの裏に浮き球を入れたのは14分。マケンゴを置き去りにしてGKと向き合ったクドゥスは、左に流れながら冷静にゴールの右に決めました。

42分の追加点は、ルーカス・パケタのパスを左で受けたエドソン・アルバレスです。ドリブルで中に斬り込んだセントラルMFは、ボーウェンとのワンツーで一気にゴール前へ。GKの位置を見て左に蹴り込んだ後、チームメイトが駆け寄るまで笑顔を見せなかったのは、ハマーズでの初ゴールを祝福するサポーターの熱狂を目の当たりにして照れていたからでしょう。

既に首位勝ち抜けを決めていたリヴァプールは、若手とサブ主体のチームでユニオン・サン・ジロワーズに2-1で敗れました。レギュラークラスのフル出場は、コーディー・ガクポのみ。日曜日のマンチェスター・ユナイテッド戦は、木曜日にベルギーに遠征したチームのほうがコンディションがいいのではないかと思われます。

ヨーロッパカンファレンスリーグのアストン・ヴィラも、ズリニツキに1-1ドローで首位確定。チャンピオンズリーグで、2つのユナイテッドが最下位敗退となったプレミアリーグ勢は、ELとECLはすべてのチームが1位でグループステージを終えています。ノックアウトラウンドの組み合わせ抽選は18日。ローマとミラン以外に強そうなクラブがいないELは、楽しみですね！