偏愛的プレミアリーグ見聞録

首位はリヴァプール、実績はマンチェスター・シティ、勢いはアーセナル。プレミアリーグ2023-24シーズンは、史上稀に見る3強のデッドヒートとなっています。「BBC」によると、残り11節で60ポイントを超えるチームが3つもある優勝争いは、過去に1回しかありません。

63ポイントで順位テーブルの頂点に立つリヴァプールですが、熱狂的なサポーターをのぞけば、本命に推す人はさほどいないでしょう。クロップ監督の退任発表で、最後のトロフィーを獲ろうとテンションが上がっているものの、マティプとチアゴがシーズンアウトで、アリソンとジョッタはいつ戻れるかわかりません。負傷離脱は総勢9人。アーセナルとマン・シティはひとりです。

ブックメーカーの一番人気は、もちろん・マン・シティ。4連覇をめざす王者は、レッズとガナーズとの直接対決をクリアすれば、残る難敵はトッテナムとアストン・ヴィラぐらいです。12月にヴィラ・パークで敗れてから、公式戦17試合連続無敗で、ドローが2つあるのみ。彼らの上に立ちたければ、直接対決を制したうえで、他の10試合を9勝というハイペースが必要になりそうです。

さて、そんななかで現地メディアが話題にしているのは、アーセナルのクレイジーな快進撃です。年明けからのプレミアリーグで7連勝。31ゴールで、失点は3つしかありません。アウェイゲームで3試合連続5点差以上はリーグレコード。レッズ戦の後半からブレイズ戦の前半まで、8回連続の「45分で2ゴール以上」もプレミアリーグで初の怪挙…いや、快挙となっています。

最下位ブレイズとのゲームはレコードだらけで、敵地で39分までに5ゴールはプレミアリーグのファステズトラップ。開始15分で、あれほど大勢のサポーターがゲートに向かう光景を見たことはありません。ウィリアム・サリバのパス成功169本は相手の総本数より多く、リーグ戦のクラブレコード。ボールがピッチにあった56分で827本のパスは、4秒に1本という驚異的なペースです。

ウーデゴーア、オウンゴール、マルティネッリ、カイ・ハヴェルツ、デクラン・ライスと怒涛のゴールラッシュを決めた前半の平均ポジションを見ると、2-1-3-4という奇妙なフォーメーション。最終ラインのジョルジーニョとサリバは敵陣で、少し前にガブリエウ、中盤は左にキヴィオルとデクラン・ライス、右にベン・ホワイトが構えています。

前線はサカ、ウーデゴーア、カイ・ハヴェルツ、マルティネッリがバランスよく並んでいます。左に5人、右は3人と枚数が違うのは、ブカヨ・サカが対峙するトラスティを抜きまくっていたからでしょう。後半のベン・ホワイトを入れると、左から崩して3ゴール、右からも3ゴールで、0-3から5バックにしたクリス・ワイルダーにさらなる打ち手はありませんでした。

マン・シティとのアウェイゲームで、同じことができるとは思えませんが、4-1で完敗した昨季のエティハドのような展開にはならないでしょう。アーセナルは、このまま走り抜けるのか。対戦相手から予測したOpta のスーパーコンピューターは、マン・シティの優勝確率51%、リヴァプール35%、アーセナルは14%としています。

アーセナルが3番手となっている最大の理由は、ビッグ6とのアウェイを3つ残しているからでしょう。エティハド、ノースロンドンダービー、オールド・トラフォードが難関で、エミレーツのチェルシー戦も要注意。週末までに冨安健洋、ジンチェンコ、マルティネッリが復帰する予定ですが、アルテタ監督が多彩な戦力を使いこなせなければ、1年前をなぞるようなペースダウンも起こりえます。

今のペースを続けられるなら、チャンピオンズリーグでも上位進出をめざせると思います。優勝するための絶対条件は、デクラン・ライス、サリバ、ウーデゴーア、サカといった代えが効かないキーマンを失わないこと。絶好調の今は、プレミアリーグで2試合連続1ゴール1アシストのカイ・ハヴェルツのリタイアも激痛でしょう。

ブレントフォードとポルトに勝ち切り、満を持してエティハドへ。マン・シティにシーズン3連勝となれば、一気に視界が開けます。ハーランドVSサリバ、デクラン・ライスVSロドリ、マルティネッリVSカイル・ウォーカー…ピッチのあらゆるエリアで激戦が繰り広げられるであろう注目の一戦を待ち切れません。