2024.05.12 プレミアリーグ観戦記2023-24プレミアリーグ観戦記
【Tottenham×Burnley】決めたのは左右のSB…スパーズの課題が浮き彫りになった大苦戦!
開幕から8勝2分の快進撃で首位に立ったトッテナムは、直近のニューカッスル、アーセナル、チェルシー、リヴァプールの難敵4連戦で全敗し、TOP4フィニッシュが絶望的になっています。バーンリー、マン・シティ、シェフィールド・ユナイテッドに全勝しても69ポイント。既に67ポイントのアストン・ヴィラが、マンデーナイトのリヴァプール戦に勝てば、5位以下が確定します。
いや、それどころか、下にいるニューカッスルとチェルシーが脅威です。ラスト3戦で2敗し、彼らが3連勝なら7位に転落。ヨーロッパリーグの出場権すら獲り逃す可能性があります。ポステコグルー監督が称賛され、ポチェッティーノ監督がブーイングを浴びる時期が長く続きましたが、現在の彼らのギャップは6ポイントしかありません。
37節のバーンリーとのホームゲームは、負けられない一戦ですが、スパーズは戦う前から暗雲が垂れ込めていました。クルゼフスキが左サイドに入ったのは、終盤からの出場だったノッティンガム・フォレスト戦以来2度めで、左SBにはオリヴァー・スキップ。主力を次々に失ったポステコグルー監督の呻きが聞こえてくるような布陣です。
指揮官が抱える最大の課題は、現在の戦術を理解している選手が少ないこと。ペドロ・ポロ、ロメロ、ファン・デ・フェン、ウドジェのバック4は1枚でも欠けると、一気に脆弱になります。ウドジェがいないプレミアリーグは2勝5敗。ファン・デ・フェンが不在のゲームは5勝1分5敗。左サイドにMFをまわしたのは、エメルソン・ロイヤルでは不安だったからでしょう。
前線は単純に人員不足で、リシャルリソンとヴェルナーがシーズンアウトなら、ソン・フンミンの後ろにブレナン・ジョンソン、ジェームズ・マディソン、クルゼフスキを並べるしかありません。それでも19位が相手なら悠々と勝てるかと思ったのですが、つぎはぎだらけのチームは予想以上の大苦戦を強いられました。
開始4分、左のファン・デ・フェンがソン・フンミンに縦パスをつないで始まった速攻は、逆サイドで足元に収めたジェームズ・マディソンのシュートをテイラーがブロック。最初のピンチはその1分後、ソン・フンミンから奪ったボールをブルーン・ラーセンに預けたオドベールが、右サイドをスプリントしています。
リターンをもらった47番がファーにクロスを上げると、ヴィチーニョのヘッドはジャストミート。アリソンやエデルソンでも決められていたであろう一撃は、ヴィカーリオの超絶セーブに阻まれました。昨夏のマーケットで彼を獲得していなければ、スパーズは既にELすら諦めていたかもしれません。
7分のクルゼフスキのアーリークロスは、逆サイドからゴールに近づいたペドロ・ポロにぴったり。クロスを止めようとして自重したムリッチを見て、ニアを狙ったクレバーなボレーは、体勢を立て直したGKが外に弾き出すビッグセーブで食い止めています。バーンリーの先制は25分、自陣からドリブルで上がったサンダー・ベルゲが決め手でした。
ハーフライン付近でパペ・マタル・サールがカットしたボールをブレナン・ジョンソンが味方につなげず、奪い返したベルゲはペドロ・ポロをすんなり抜き去りました。右から走り込んだブルーン・ラーセンに完璧なスルーパスが通り、ヴィカーリオと1対1。プレミアリーグ屈指のショットストッパーはニアのコースを消すしかなく、34番は冷静にど真ん中に流し込みました。
いきなりリードを許したスパーズは、7分でイーブンに戻しました。右サイドでブレナン・ジョンソンとワンツーをかわしたペドロ・ポロがカットイン。中央の2人はフリーになれないと判断したSBは、GKのポジションを見て強烈なシュートをニアに叩き込みました。2分後の34分、GKのパスをボックス右脇でカットしたブレナン・ジョンソンは、ゴールライン際に持ち込んでいます。
GKがグラウンダーをケアしたため、空いていたニアを突いたシュートは枠にいかず、サイドネットへ。前半は1-1、シュート数は8対4、オンターゲットは3対3。スパーズは、左からのシュートが1本もありません。後半の最初の決定機は59分。クルゼフスキとのパス交換で左から突破したジェームズ・マディソンは、ボックスに入るとダラ・オシェイをキックフェイントでかわしました。
目の前にはGKムリッチのみ。しかしクロスに放ったシュートは読まれ、左手で止められてしまいました。66分のFKから右にいたクルゼフスキにボールがまわり、クロスがロメロの頭に届くも、ニアに飛んだヘディングはGKが難なくキャッチしています。ポステコグルー監督が動いたのは75分。左サイドを総入れ替えという大胆な策です。
クルゼフスキ、イヴ・ビスマ、オリヴァー・スキップに代えて20歳のFWデーン・スカーレット、ベンタンクール、ドラクシン。実績がない若手を投入し、ファン・デ・フェンを左にまわすという策はギャンブルに見えたのですが…。78分の決定機創出は、敵陣に出ていたファン・デ・フェンのカットからでした。
縦パスに反応したソン・フンミンがボックス左でオシェイを抜き去り、逆サイドに低いクロス。ブレナン・ジョンソンがスライディングで右足に当てたボールは、ニアポストの外に逸れていきました。80分の仕掛け人は、自陣で奪ったロメロ。ブレナン・ジョンソンに預け、ボックス右でリターンをもらったCBが折り返すと、ベルゲがカットしたボールが中央にこぼれました。
走り込んだパペ・マタル・サールは左のコースを切られており、右隅へのシュートはムリッチがセーブ。必死のアタックが結実したのは、82分でした。ジェームズ・マディソンがボックス手前に縦パスを入れると、トラップしたのは前線に上がっていたファン・デ・フェン。中央に持ち込んでオシェイをかわし、左隅に流し込むまでの動きは、ベテランのストライカーのようです。
同点ゴールは右のフルバック、逆転ゴールは左。ラスト30分からの9本のシュートのうち、5本はDFです。ソン・フンミン、クルゼフスキ、ブレナン・ジョンソンを足すと8本、ペドロ・ポロ、ロメロ、ファン・デ・フェンも8本。攻撃力が高い最終ラインが、前線の度重なる決定機逃しを忘れさせた一戦でした。
何とか希望をつないだスパーズに、ニューカッスルVSブライトンがドローという朗報が届きました。ヴィラがレッズに敗れ、次節のマン・シティ戦に勝てばTOP4争い続行。ヴィラがCL出場権を獲得しても、マン・シティ戦でドロー以上ならEL出場権が確定します。ペップを苦しめると、アーセナルに利する結果となりそうですが、そんなことをいっている場合ではないでしょう。
ポステコグルー監督は、5位ならまずまずと評価されるでしょう。しかし来季は、層が薄い最終ラインを強化しなければ、厳しい戦いを強いられるはずです。戦力強化の資金を得るために売れるのは、リシャルリソン、ホイビュルク、ロ・チェルソ、エメルソン・ロイヤル、オリヴァー・スキップといったところでしょうか。
ポチェッティーノとポステコグルー…2年めを迎える指揮官のチームを比べると、格段に充実度が高いチェルシーのほうが圧倒的に有利に見えます。スパーズの経営ボードに求められているのは、若手をうまく活用した監督を信じて必要な人材を揃えることと、アラサーの選手たちを適切な価格で売り切ることでしょう。(ミッキー・ファン・デ・フェン/写真著作者/KrispyKrumpets ペドロ・ポロ/写真著作者/Sporting Clube de Portugal)
いや、それどころか、下にいるニューカッスルとチェルシーが脅威です。ラスト3戦で2敗し、彼らが3連勝なら7位に転落。ヨーロッパリーグの出場権すら獲り逃す可能性があります。ポステコグルー監督が称賛され、ポチェッティーノ監督がブーイングを浴びる時期が長く続きましたが、現在の彼らのギャップは6ポイントしかありません。
37節のバーンリーとのホームゲームは、負けられない一戦ですが、スパーズは戦う前から暗雲が垂れ込めていました。クルゼフスキが左サイドに入ったのは、終盤からの出場だったノッティンガム・フォレスト戦以来2度めで、左SBにはオリヴァー・スキップ。主力を次々に失ったポステコグルー監督の呻きが聞こえてくるような布陣です。
指揮官が抱える最大の課題は、現在の戦術を理解している選手が少ないこと。ペドロ・ポロ、ロメロ、ファン・デ・フェン、ウドジェのバック4は1枚でも欠けると、一気に脆弱になります。ウドジェがいないプレミアリーグは2勝5敗。ファン・デ・フェンが不在のゲームは5勝1分5敗。左サイドにMFをまわしたのは、エメルソン・ロイヤルでは不安だったからでしょう。
前線は単純に人員不足で、リシャルリソンとヴェルナーがシーズンアウトなら、ソン・フンミンの後ろにブレナン・ジョンソン、ジェームズ・マディソン、クルゼフスキを並べるしかありません。それでも19位が相手なら悠々と勝てるかと思ったのですが、つぎはぎだらけのチームは予想以上の大苦戦を強いられました。
開始4分、左のファン・デ・フェンがソン・フンミンに縦パスをつないで始まった速攻は、逆サイドで足元に収めたジェームズ・マディソンのシュートをテイラーがブロック。最初のピンチはその1分後、ソン・フンミンから奪ったボールをブルーン・ラーセンに預けたオドベールが、右サイドをスプリントしています。
リターンをもらった47番がファーにクロスを上げると、ヴィチーニョのヘッドはジャストミート。アリソンやエデルソンでも決められていたであろう一撃は、ヴィカーリオの超絶セーブに阻まれました。昨夏のマーケットで彼を獲得していなければ、スパーズは既にELすら諦めていたかもしれません。
7分のクルゼフスキのアーリークロスは、逆サイドからゴールに近づいたペドロ・ポロにぴったり。クロスを止めようとして自重したムリッチを見て、ニアを狙ったクレバーなボレーは、体勢を立て直したGKが外に弾き出すビッグセーブで食い止めています。バーンリーの先制は25分、自陣からドリブルで上がったサンダー・ベルゲが決め手でした。
ハーフライン付近でパペ・マタル・サールがカットしたボールをブレナン・ジョンソンが味方につなげず、奪い返したベルゲはペドロ・ポロをすんなり抜き去りました。右から走り込んだブルーン・ラーセンに完璧なスルーパスが通り、ヴィカーリオと1対1。プレミアリーグ屈指のショットストッパーはニアのコースを消すしかなく、34番は冷静にど真ん中に流し込みました。
いきなりリードを許したスパーズは、7分でイーブンに戻しました。右サイドでブレナン・ジョンソンとワンツーをかわしたペドロ・ポロがカットイン。中央の2人はフリーになれないと判断したSBは、GKのポジションを見て強烈なシュートをニアに叩き込みました。2分後の34分、GKのパスをボックス右脇でカットしたブレナン・ジョンソンは、ゴールライン際に持ち込んでいます。
GKがグラウンダーをケアしたため、空いていたニアを突いたシュートは枠にいかず、サイドネットへ。前半は1-1、シュート数は8対4、オンターゲットは3対3。スパーズは、左からのシュートが1本もありません。後半の最初の決定機は59分。クルゼフスキとのパス交換で左から突破したジェームズ・マディソンは、ボックスに入るとダラ・オシェイをキックフェイントでかわしました。
目の前にはGKムリッチのみ。しかしクロスに放ったシュートは読まれ、左手で止められてしまいました。66分のFKから右にいたクルゼフスキにボールがまわり、クロスがロメロの頭に届くも、ニアに飛んだヘディングはGKが難なくキャッチしています。ポステコグルー監督が動いたのは75分。左サイドを総入れ替えという大胆な策です。
クルゼフスキ、イヴ・ビスマ、オリヴァー・スキップに代えて20歳のFWデーン・スカーレット、ベンタンクール、ドラクシン。実績がない若手を投入し、ファン・デ・フェンを左にまわすという策はギャンブルに見えたのですが…。78分の決定機創出は、敵陣に出ていたファン・デ・フェンのカットからでした。
縦パスに反応したソン・フンミンがボックス左でオシェイを抜き去り、逆サイドに低いクロス。ブレナン・ジョンソンがスライディングで右足に当てたボールは、ニアポストの外に逸れていきました。80分の仕掛け人は、自陣で奪ったロメロ。ブレナン・ジョンソンに預け、ボックス右でリターンをもらったCBが折り返すと、ベルゲがカットしたボールが中央にこぼれました。
走り込んだパペ・マタル・サールは左のコースを切られており、右隅へのシュートはムリッチがセーブ。必死のアタックが結実したのは、82分でした。ジェームズ・マディソンがボックス手前に縦パスを入れると、トラップしたのは前線に上がっていたファン・デ・フェン。中央に持ち込んでオシェイをかわし、左隅に流し込むまでの動きは、ベテランのストライカーのようです。
同点ゴールは右のフルバック、逆転ゴールは左。ラスト30分からの9本のシュートのうち、5本はDFです。ソン・フンミン、クルゼフスキ、ブレナン・ジョンソンを足すと8本、ペドロ・ポロ、ロメロ、ファン・デ・フェンも8本。攻撃力が高い最終ラインが、前線の度重なる決定機逃しを忘れさせた一戦でした。
何とか希望をつないだスパーズに、ニューカッスルVSブライトンがドローという朗報が届きました。ヴィラがレッズに敗れ、次節のマン・シティ戦に勝てばTOP4争い続行。ヴィラがCL出場権を獲得しても、マン・シティ戦でドロー以上ならEL出場権が確定します。ペップを苦しめると、アーセナルに利する結果となりそうですが、そんなことをいっている場合ではないでしょう。
ポステコグルー監督は、5位ならまずまずと評価されるでしょう。しかし来季は、層が薄い最終ラインを強化しなければ、厳しい戦いを強いられるはずです。戦力強化の資金を得るために売れるのは、リシャルリソン、ホイビュルク、ロ・チェルソ、エメルソン・ロイヤル、オリヴァー・スキップといったところでしょうか。
ポチェッティーノとポステコグルー…2年めを迎える指揮官のチームを比べると、格段に充実度が高いチェルシーのほうが圧倒的に有利に見えます。スパーズの経営ボードに求められているのは、若手をうまく活用した監督を信じて必要な人材を揃えることと、アラサーの選手たちを適切な価格で売り切ることでしょう。(ミッキー・ファン・デ・フェン/写真著作者/KrispyKrumpets ペドロ・ポロ/写真著作者/Sporting Clube de Portugal)
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