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実績は不安、戦術は期待、中盤は懸念…チェルシーの新監督エンツォ・マレスカはうまくやれるのか?

「エンツォをチェルシーに迎えられたことをうれしく思う。彼はエキサイティングかつ明快なスタイルで、印象的な結果を出せる優秀なコーチであることを証明している。就任に至るまでの話し合いで、深い感銘を与えてくれた。その野心と働く姿勢はクラブと一致している。彼と一緒に仕事するのを心から楽しみにしている」(ローレンス・スチュワート&ポール・ウィンスタンリー)

現地メディアの多くが「月曜日に決まる」といっていた通り、エンツォ・マレスカがチェルシーの新監督に就任しました。レスターに支払われた補償金は1000万ポンド。1年の延長オプション付きの5年契約は、トップリーグで指揮を執ったことがない若手としては異例の長期契約です。1年前のポチェッティーノは、オプションをカウントしても3年でした。

既に4人の指揮官を手離したクリアレイク・キャピタルのコンソーシアムが、解任時の条件や違約金などについてリスクヘッジをしないわけがありません。「5+1」という数字には、3つの可能性があります。ひとつは、長期的な視座に立ってチームを強化していくと宣言したかったから。2つめは、ポチェッティーノとは折り合えなかったディテールまで握れたことの証明です。

3つめは、エンソ・フェルナンデスやムドリク、カイセドと同様に、単年の負担を軽減したかった…これらはすべて当たりなのかもしれません。われわれが押さえておくべきは、「5年契約は、結果を出さなくても仕事を継続できると保証するものではない」という1点でしょう。アブラモヴィッチの買収以降、3年めを迎えた監督はジョゼ・モウリーニョのみです。

21年で延べ21人、暫定監督を引くと14人。1年以内に解任となった監督が5人もいます。そのうち4人は、欧州主要リーグでの実績なし。アヴラム・グラントのトロフィーはすべてイスラエルで、フェリペ・スコラーリもクウェートとブラジルのみでした。ディ・マッテオがトップリーグで戦ったのは2010-11シーズンのWBAだけで、ポッターが獲ったタイトルはスウェーデンです。

唯一の優勝経験者は、アンドレ・ヴィアス・ボラス。ポルトでプリメイラリーガ、国内カップ、ヨーロッパリーグの三冠を達成し、チェルシーに乗り込んできたときは34歳で、最も長続きしたのがヴァージン諸島代表の18ヵ月という経験値の低さが弱点でした。過去を見る限りは、レスターでチャンピオンシップを制しただけの監督に明るい未来は想像できません。

このままでは、「ダメっぽい」というオチになってしまいそうなので、ポジティブな要素を2つ紹介しましょう。ひとつは、就任が早いこと。6月3日は、ポチェッティーノ、モウリーニョに次ぐ早期決着です。レスターの監督に就任したとき、前シーズンの映像をすべてチェックしたワーカホリックの指揮官は、いい準備ができるのではないでしょうか。

もうひとつは、得意の戦術と現有戦力のフィット感です。ペップとよく似たポジショナルプレーを基本とするマレスカ監督は、4-3-3をベースとしながら攻撃時は3-2-5にスイッチします。リース・ジェームズなら、偽SBはOKでしょう。前線に飛び出すインサイドMFは、コナー・ギャラガーにぴったりです。

ドリブルとパスでリズムを創れるラヴィアと、敵陣で奪取してくれるカイセドも、うまくはまるのではないでしょうか。周囲と連携できるニコラス・ジャクソンとエンクンクも、機能するはずです。エンソ・フェルナンデスを活かすなら、インサイドか。ここはメイソン・マウントがいてくれればよかったのですが…。

「テレグラフ」のサム・ディーン記者も、「エンソ・フェルナンデスが微妙」と指摘しています。ポチェッティーノのチームでも、彼がいた試合は勝率39%で、いなければ80%。記事が成功の条件として挙げているのは、「8番を使いこなす」「負傷者の減少」「与えられた選手を指導するという役割を受け入れる」の3点です。言い換えると「オーナーとうまくやれ」ですね…。

何しろ実績がない監督なので、期待よりも不安が先に立つブルーズサポーターが多いのではないかと思われます。クラブの歴史からいいお手本を見出すとすれば、「セリエAで優勝未経験のまま就任し、美しいサッリボールでヨーロッパリーグを制覇」でしょうか。若い選手が多い現在のスカッドはやりやすいのではないかと期待しつつ、補強の成り行きに注目しましょう。


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