偏愛的プレミアリーグ見聞録

ブカヨ・サカか、コール・パルマーか。ユーロ2024のグループステージで3戦2発と攻撃が停滞したイングランドは、左右のサイドの人選が議論になっています。右ウイングが注目されているのは、サカ、フォーデン、コール・パルマーとワールドクラスが揃っているからで、トリッピアーのポジションは本職が不在だからです。

サカについては、2つの意見が挙がっています。ひとつはシンプルで、「右のウイングはコール・パルマーがいいのではないか」。もうひとつは「チェルシーのレフティを右に配して、サカに左SBを任せるという策もあるのではないか」。いずれも、スロヴェニア戦で巧みなタッチときわどいシュートを披露した24番に、攻撃の活性化を期待したいという思いがベースにあります。

この議論に乗っかるなら、3試合すべてで先発したサカを評価するのが出発点でしょう。セルビア戦は、上々のスタート。ベリンガムの先制ヘッドを生み出すクロスを上げた7番は、右サイドを何度も突破し、きわどいグラウンダーを入れていました。しかし後半はペースダウンしてしまい、76分の出場でシュートもチャンスクリエイトもゼロ。「勝利に貢献した」としかいえません。

1-1のドローに終わったデンマーク戦の前半は、初戦の停滞を引きずるかのような厳しい展開となりました。サカは右サイドで孤立してしまい、ハリー・ケインがワンチャンスを活かした後も、後方に戻すパスが目立ちました。ところが後半に入ると、相手のチェックが緩くなり、50分過ぎから立て続けにチャンスを創っています。

アーノルドのロングフィードを追って、ボックス右に走り込んだのは52分。クリスチャンセンの背後に入り、GKの頭越しを狙ったきわどいヘッダーは、惜しくも右に逸れていきました。56分には脇にいたフォーデンにパスを通し、左足のミドルが右のポストにヒット。メーレとクリステンセンをかわして打った59分の一撃は、左に外れてしまいました。

69分でシュート3本、チャンスクリエイトとドリブル成功が2回ずつ、デュエル6戦4勝はまずまずのパフォーマンスといっていいでしょう。しかし期待されたスロヴェニアとの3戦めは、シュートもクロスもドリブル突破もなく、パス成功率94％以外にポジティブな数字はありません。彼らしいプレイを見られたのは、初戦のハーフタイムまでとデンマーク戦の後半の10分のみです。

サカの左SBコンバートを推しているのは、ウナイ・エメリの下でデビューした頃を覚えている人たちでしょう。「アスレティック」のリアム・トーメ記者は、「3-4-3の左WB」を主張しています。クラブOBがレフトバックを提案しているが…とマイクを向けられたサカは、「イアン・ライトは好きだけど、僕を外すのがいいソリューションだとは思わない」と返しています。

ブカヨ・サカとコール・パルマーの能力に、優劣をつけられる人はいないでしょう。昨季プレミアリーグのスタッツは、34試合22ゴール11アシストのコール・パルマ―が上ですが、イングランド代表で36試合11ゴール7アシストというサカの経験値は圧倒的です。議論に参加するなら、私の論は「スロバキア戦はコール・パルマー」。サカの最大の問題は疲労と考えているからです。

コンディション以外にも、「アーノルドがうまくはまらなかったため、右のMFが変わり、連携がなかった」などの課題はありそうです。しかし今はまず、1試合休んでもらって、イタリアと当たるであろうベスト8でのハイパフォーマンスを期待するのが良策だと思われます。メイヌー、カイル・ウォーカー、コール・パルマ―がうまくいったら…そのまま変えずに突き進むだけです。

サカをレフトバックというプランは、「コール・パルマーが活躍」「サカが休んでリフレッシュ」「ルーク・ショーが復帰できず」という3つの要素が揃ったとき、検討すればいいと思います。スロバキアに足をすくわれるリスクはあれど、ラウンド16でサカとベリンガムを先発から外すという思い切った策を取れなければ、勝っても次で行き詰ってしまうのではないでしょうか。

「でも結局のところ、この件についてわれわれが話すことはできるけど、結論はガレスの手中にある。ガレスが当日誰を選ぼうと、それを信じるしかない」。サカって、ホントに賢くていいヤツですね…。確かに、周囲が何をいおうと、指揮官が決断するのみ。私は24番の抜擢を推しますが、予想しろといわれれば「スタメンは変わらず」です。さあ、どうなるか見てみましょう！