偏愛的プレミアリーグ見聞録

リカルド・カラフィオーリは、新たなシーズンの始まりはノースロンドンと考えていたのではないでしょうか。個人条件合意と報じられてから2週間。アーセナルとボローニャのディールは頓挫しており、連絡が途絶えていないのが唯一の希望となっています。両者ともに納得していたはずの話は、なぜ止まってしまったのでしょうか。

「ガーディアン」「フットボールロンドン」「Goal」「ミラー」が一斉に伝えているのは、ボローニャの要求額とアーセナルのオファーのギャップです。当初の報道は、「ボローニャは4200万ポンドとアドオンで、アーセナルはアドオン込みの4200万ポンド」。300万～400万ポンド程度なら、すぐに妥結するだろうと思っていたのですが、実際の彼らの差額はもっと大きいようです。

「Goal」のハリー・シャーロック記者は「1000万ユーロの開きがある」といっており、「ミラー」のオリ・ガンプ記者の「希望額に800万ポンド足りない」とほぼ同額です。「フットボールロンドン」のジョー・ドイル記者は、「アーセナルのオファーは3360万ポンドにアドオン420万ポンド」。ボローニャが4200万だとすれば、その差は840万ポンドで、他の記事と一致します。

なるほど。これほどのギャップを話し合いのみで埋めるのは困難でしょう。バーゼルからボローニャに移籍した際のフィーは、340万ポンド。ガナーズの提示額をそのまま呑んでも、差し引き3000万ポンドのプラスとなります。プレミアリーグでカラフィオーリを見たいファンとしては、「それなら多少譲っても…」と思ってしまいますが、問題はセルオン条項にあるようです。

ボローニャとバーゼルの契約には、「カラフィオーリを売却したら、移籍金の50％をバーゼルに支払わなければならない」と記されています。3360万ポンドで手離したら、手に入るのは1680万ポンドで、元の移籍金を引くと1340万ポンド。無名だった若手をCBにコンバートし、イタリア代表に選ばれるまでに育てた労力を考えると、受け入れられる額ではない…！

セリエAのクラブは、1年前に交わしたセルオン条項の50％という比率を引き下げようとしており、バーゼルとの交渉が終わるまでディールをストップすると伝えられています。一方、アーセナルのほうも、「ザ・タイムズ」が「キヴィオルを差し出して話をまとめようとしている」といっていますが、キャッシュがほしいクラブがスワップで納得するとは思えません。

日曜日から始まるアメリカツアーに彼を合流させたかったアーセナルは、プレミアリーグの開幕直前まで待たされそうです。新たなチームメイトに早く会いたかったカラフィオーリは、北イタリアで行われるプレシーズンのトレーニングキャンプに参加すべしといわれているとのこと。交渉は継続されていますが、「アーセナルは潜在的なリスクを抱えている」といえるでしょう。

バーゼルとの交渉が決裂した後、ボローニャの希望を叶えるエンジェルが出現したら…。ザークツィー獲得でボローニャとの関係が良好なマンチェスター・ユナイテッドが仕掛けてきたら、あるいはムドリクの争奪戦を制した実績があるチェルシーが本気で勝負してきたら、数日で世界は変わってしまうかもしれません。

スミス・ロウ、リース・ネルソン、エンケティアにオファーありと伝えられているガナーズは、売却で得た額を多少乗せるなどの具体的なアクションが必要になる可能性があります。ある日突然、違うクラブにいってほしいと告げられたら、アーセナルへの移籍を熱望していた22歳は首を縦に振るのでしょうか。レニー・ヨロとムドリクは「イエス」でしたが…？