2024.10.01 マンチェスター・ユナイテッドの話題
戦術と当事者意識の欠如…開始3分でわかった「マンチェスター・ユナイテッドが抱える3つの問題」
キックオフから2分35秒。自陣からドリブルで上がったファン・デ・フェンがゴールライン際までえぐってグラウンダーを入れると、ファーから詰めてきたブレナン・ジョンソンが無人のゴールに押し込みました。オールド・トラフォードでスパーズが先制。このシーンを見て、惨敗を覚悟したマンチェスター・ユナイテッドサポーターもいたのではないでしょうか。
ポステコグルーの戦術が浸透しているスパーズと、約束ごとがないマン・ユナイテッドの違いは、アウェイチームの先制までの150秒に凝縮されていました。丁寧なビルドアップでボールをキープしながら、相手の隙を窺っていたスパーズがギアを入れたのは1分20秒。右サイドに出てロメロからもらったベンタンクールのロングフィードが、猛攻スタートの合図でした。
このシーンで既に、マン・ユナイテッドの課題が露呈しています。最終ラインにプレスをかけるザークツィー&ラシュフォードと、中盤の4人の間にある大きなスペース。連動性のないプレスは、数的優位を築けば簡単にかいくぐれます。ボックス右に流れたソランケがダイレクトでクロスを上げると、マズラウィが頭でクリアしました。
ジェームズ・マディソンとクルゼフスキが仕掛けた強引な二次攻撃は、メイヌーがカット。反撃に出たかったマン・ユナイテッドは、バイタルエリアでボールを収めようとしたブルーノ・フェルナンデスがペドロ・ポロに奪われ、バックパスを受けたロメロが最前線のクルゼフスキに高速の縦パスを通しました。
ウガルテが厳しいチェックで奪取し、オナナに預けると、ダロト、リサンドロ・マルティネスと左につないだぎこちないビルドアップから、縦のボールをペドロ・ポロにカットされてしまいました。最終ラインがキープしたとき、下がってもらいに来る選手がおらず、苦し紛れのボールをさらわれるのもマン・ユナイテッドの悪癖です。
ペドロ・ポロが縦に突破して折り返すと、ダロトがニアで止めて、ラシュフォードからフリーのブルーノ・フェルナンデスへ。ようやく得意のカウンターが発動しました。ブルーノの鋭いスルーパスは、ガルナチョに着いていたウドジェが左足に当てましたが、拾ったラシュフォードが右に出てサイドを攻略しようとしています。
最初のタッチが長かったのは、ファン・デ・フェンは下がって遅らせようとすると読んだからでしょう。しかしCBは迷わず飛び出し、先に触って10番を置き去りにしました。彼の判断が速かったのは、自分が外に出たらウドジェが中に絞ってカバーし、ベンタンクールも下がってスペースを埋めてくれると信じていたからでしょう。
速攻を受けたとき、ファン・デ・フェンが外に出て対応し、ウドジェとベンタンクールが内側から上がってくる選手をケアするのは、スパーズの守り方のひとつです。前が空いているのを見たCBは、自らドリブルで上がりました。マン・ユナイテッドは、ELのトゥエンテ戦で喫した同点ゴールから、何も学ばなかったようです。ドロー決着だった4日前のゲームの失点について、私はこう書いています。
「本気で詰めなかったブルーノと、2人がかりでいってかわされたエリクセンとリサンドロ・マルティネスは失点の要因のひとつ」。ファン・デ・フェンの単独突破における失敗は、ラシュフォードから奪ったファン・ルーイへの対応のミスと完全に重なります。ブルーノは追わず、左右から挟み込もうとしたマズラウィとウガルテは、あっさり抜かれてしまいました。
「連動性がないプレス」「出しどころがないビルドアップ」に続く3つめの問題は、「当事者意識の欠如」という表現が妥当でしょう。トゥエンテ戦のエリクセンとリサンドロ・マルティネス、スパーズ戦のマズラウィとウガルテは、対応する選手とカバー役の主従が不明確でした。ファン・デ・フェンのドリブルは、デ・リフトが止めてくれればOKと思っていたのかもしれません。
快足のCBは外に逃げてデ・リフトのチェックをかわし、高速のグラウンダーを入れるや否や、ゴールラインの外に吹っ飛びました。右足でプッシュしたブレナン・ジョンソンは、「君の手柄だ」というように右手で指差しながら駆け寄り、集まった選手たちもアシストを記録した選手のほうを称えています。
ためらいがなかった白いシャツと、責任の所在が曖昧だった赤いシャツ。その後も、ポステコグルー戦術の機能美を見せつけられました。ビルドアップが窮屈になるとソランケが下がり、クルゼフスキはフォローしやすい位置に入る。ペドロ・ポロが中央に絞ると、クルゼフスキが外に張る。ウガルテがメイヌーのサイドに寄ると、左からジェームズ・マディソンが上がる…。
ブルーノやリサンドロ・マルティネスが、ウインガーにロングフィードを入れるしかなかったホームチームは、サイドを制圧されて攻撃の手立てを失いました。プレミアリーグ6試合で5ゴールは、2007-08シーズンの4ゴールに次ぐプアなスタッツ。オープンプレーの3ゴールは、最下位ウルヴスと並ぶリーグ14位です。2023-24シーズンの開幕から、ホームで3失点が8回もあります。
前線と中盤の距離が空いてプレスが機能せず、中盤と最終ラインの連携がないためビルドアップが機能せず。「時間が必要」という説明が許されるのは、少しずつでも進化が認められるチームだけです。ホームでノーゴールの連敗は、リヴァプールに0-5の後、マンチェスターダービーを0-2で落とした2021年10月以来。この直後、スールシャールは任を解かれています。
ポステコグルーの戦術が浸透しているスパーズと、約束ごとがないマン・ユナイテッドの違いは、アウェイチームの先制までの150秒に凝縮されていました。丁寧なビルドアップでボールをキープしながら、相手の隙を窺っていたスパーズがギアを入れたのは1分20秒。右サイドに出てロメロからもらったベンタンクールのロングフィードが、猛攻スタートの合図でした。
このシーンで既に、マン・ユナイテッドの課題が露呈しています。最終ラインにプレスをかけるザークツィー&ラシュフォードと、中盤の4人の間にある大きなスペース。連動性のないプレスは、数的優位を築けば簡単にかいくぐれます。ボックス右に流れたソランケがダイレクトでクロスを上げると、マズラウィが頭でクリアしました。
ジェームズ・マディソンとクルゼフスキが仕掛けた強引な二次攻撃は、メイヌーがカット。反撃に出たかったマン・ユナイテッドは、バイタルエリアでボールを収めようとしたブルーノ・フェルナンデスがペドロ・ポロに奪われ、バックパスを受けたロメロが最前線のクルゼフスキに高速の縦パスを通しました。
ウガルテが厳しいチェックで奪取し、オナナに預けると、ダロト、リサンドロ・マルティネスと左につないだぎこちないビルドアップから、縦のボールをペドロ・ポロにカットされてしまいました。最終ラインがキープしたとき、下がってもらいに来る選手がおらず、苦し紛れのボールをさらわれるのもマン・ユナイテッドの悪癖です。
ペドロ・ポロが縦に突破して折り返すと、ダロトがニアで止めて、ラシュフォードからフリーのブルーノ・フェルナンデスへ。ようやく得意のカウンターが発動しました。ブルーノの鋭いスルーパスは、ガルナチョに着いていたウドジェが左足に当てましたが、拾ったラシュフォードが右に出てサイドを攻略しようとしています。
最初のタッチが長かったのは、ファン・デ・フェンは下がって遅らせようとすると読んだからでしょう。しかしCBは迷わず飛び出し、先に触って10番を置き去りにしました。彼の判断が速かったのは、自分が外に出たらウドジェが中に絞ってカバーし、ベンタンクールも下がってスペースを埋めてくれると信じていたからでしょう。
速攻を受けたとき、ファン・デ・フェンが外に出て対応し、ウドジェとベンタンクールが内側から上がってくる選手をケアするのは、スパーズの守り方のひとつです。前が空いているのを見たCBは、自らドリブルで上がりました。マン・ユナイテッドは、ELのトゥエンテ戦で喫した同点ゴールから、何も学ばなかったようです。ドロー決着だった4日前のゲームの失点について、私はこう書いています。
「本気で詰めなかったブルーノと、2人がかりでいってかわされたエリクセンとリサンドロ・マルティネスは失点の要因のひとつ」。ファン・デ・フェンの単独突破における失敗は、ラシュフォードから奪ったファン・ルーイへの対応のミスと完全に重なります。ブルーノは追わず、左右から挟み込もうとしたマズラウィとウガルテは、あっさり抜かれてしまいました。
「連動性がないプレス」「出しどころがないビルドアップ」に続く3つめの問題は、「当事者意識の欠如」という表現が妥当でしょう。トゥエンテ戦のエリクセンとリサンドロ・マルティネス、スパーズ戦のマズラウィとウガルテは、対応する選手とカバー役の主従が不明確でした。ファン・デ・フェンのドリブルは、デ・リフトが止めてくれればOKと思っていたのかもしれません。
快足のCBは外に逃げてデ・リフトのチェックをかわし、高速のグラウンダーを入れるや否や、ゴールラインの外に吹っ飛びました。右足でプッシュしたブレナン・ジョンソンは、「君の手柄だ」というように右手で指差しながら駆け寄り、集まった選手たちもアシストを記録した選手のほうを称えています。
ためらいがなかった白いシャツと、責任の所在が曖昧だった赤いシャツ。その後も、ポステコグルー戦術の機能美を見せつけられました。ビルドアップが窮屈になるとソランケが下がり、クルゼフスキはフォローしやすい位置に入る。ペドロ・ポロが中央に絞ると、クルゼフスキが外に張る。ウガルテがメイヌーのサイドに寄ると、左からジェームズ・マディソンが上がる…。
ブルーノやリサンドロ・マルティネスが、ウインガーにロングフィードを入れるしかなかったホームチームは、サイドを制圧されて攻撃の手立てを失いました。プレミアリーグ6試合で5ゴールは、2007-08シーズンの4ゴールに次ぐプアなスタッツ。オープンプレーの3ゴールは、最下位ウルヴスと並ぶリーグ14位です。2023-24シーズンの開幕から、ホームで3失点が8回もあります。
前線と中盤の距離が空いてプレスが機能せず、中盤と最終ラインの連携がないためビルドアップが機能せず。「時間が必要」という説明が許されるのは、少しずつでも進化が認められるチームだけです。ホームでノーゴールの連敗は、リヴァプールに0-5の後、マンチェスターダービーを0-2で落とした2021年10月以来。この直後、スールシャールは任を解かれています。
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