偏愛的プレミアリーグ見聞録

「一貫性、継続性がない」。たった2年で10億ポンドという巨額の投資を行ったチェルシーは、2シーズン連続でTOP4に食い込めず、現地の評論家や記者にいじられる日々を過ごしていました。しかし3年めの今季は、プレミアリーグ6節までで4勝1分1敗と順調なスタート。首位リヴァプールとの差は、2ポイントしかありません。

ヨーロッパカンファレンスリーグの開幕節も、スタンフォード・ブリッジに乗り込んできたヘントに4-2で快勝。ゴールを決めたレナト・ヴェイガ、ペドロ・ネト、エンクンク、デューズバリー＝ホールは、プレミアリーグの先発が2試合以下です。主軸もサブも好調の選手が多く、気がかりなのは負傷続出の右SBと、持ち味を発揮しているとはいえないムドリクぐらいです。

この夏の補強も、マルク・ギウ、レナト・ヴェイガ、ヨルゲンセンといった若手のコレクションと、ジェイドン・サンチョやジョアン・フェリックスなどお得感があるビッグネームの獲得が目立ち、将来のヴィジョンを見据えた人選とは思えませんでした。もしかすると最大のヒットは、マウリシオ・ポチェッティーノからエンツォ・マレスカへのスイッチだったのかもしれません。

セリエBとチャンピオンシップで指揮を執った経験しかなかった44歳の新監督は、長期的な視座が感じられないポール・ウィンスタンレーとローレンス・スチュワートのSDコンビを救いそうな雲行きです。今シーズンの選手たちの出場記録を見ると、「このメンバーでペップと1ポイント差とは…」と絶句させられます。

プレミアリーグ6節までの先発メンバーの平均年齢は、23歳228日。過去最年少は、24歳162日でTOP4フィニッシュを果たした1999-2000シーズンのリーズで、ディサシ、ククレジャ、エンクンクの26歳トリオの出番が減ればレコードを更新しそうです。22歳以下が先発した回数を足し込むと29で、27歳以上の出場は未だゼロ。先週、誕生日を迎えたトシンが初の27歳となるはずです。

欧州5大リーグで実績があるのは、サンチョとジョアン・フェリックスのみ。2020-21シーズンのビッグイヤー獲得を語り継げるのは、キャプテンのリース・ジェームズだけです。発展途上の選手が多いチームをうまくコントロールしているマレスカ監督が、シーズンが終わった後に「彼の手柄」といわれそうな現状のトピックスをいくつか挙げてみましょう。

ニコラス・ジャクソンの決定率UP、ジェイドン・サンチョの復活、ノニ・マドゥエケの爆発、レヴィ・コルウィルの定着、レナト・ヴェイガの左SB抜擢。これらが今後も続くかどうかは、指揮官とご本人次第ですが、直近2年でこれほど期待感が高まったことはありません。タックル24回でリーグNo.1のカイセドの覚醒も、お楽しみリストに加えておきましょう。

「テレグラフ」のマット・ロー記者が、興味深い記録を紹介しています。プレミアリーグのタイトルを獲得した史上最年少チームは、2004-05シーズンに25歳250日だったチェルシー。最年長もチェルシーで、2009-10シーズンは29歳95日でした。チェフ、リカルド・カルヴァーリョ、テリー、ランパード、ジョー・コールは、両方のチームで主軸として活躍しています。

ニコラス・ジャクソン、コール・パルマー、エンソ・フェルナンデス、モイセス・カイセド、レヴィ・コルウィルは、ジョゼ・モウリーニョとカルロ・アンチェロッティに信頼されたキーマンたちの黄金時代を再現できるでしょうか。モウリーニョの初戴冠より2歳ほど年下のチームが、いきなりトロフィーを獲得…いや、その話は来年の春のポジションを見てからにしましょう。