偏愛的プレミアリーグ見聞録

「彼から、さようならを告げられたよ」。プレミアリーグから、個性的な選手がまたひとり中国に向かうようです。「デイリー・ミラー」がウィリアンのコメントを紹介しながら、移籍は決定的と報じたのはチェルシーのMFオスカル。アンドレ・ヴィラス＝ボアス監督率いる上海上港からのオファーは、メッシやクリスティアーノ・ロナウドをしのぐ週給40万ポンド（約5800万円）と伝えられています。コンテ監督が就任した今季は、最初の5試合こそレギュラーで起用されたものの、3-4-3にモデルチェンジした後は途中出場4試合のみ。プレミアリーグ6節以降の出場時間はトータルで40分にも満たず、ストレスを溜めていたであろうMFにとって、今回の話はあまりにも魅力的だったのでしょう。コンテ監督のシステムにオスカルを入れるとしたら右ウイングですが、ウィリアンやペドロをベンチに置いてでも起用するアドバンテージは見当たりません。未来が見えなくなったオスカルが、新天地を求めるのはやむなしでしょう。

「デイリー・メール」も「あとは手続きのみ」と本人が語ったと報じており、チェルシーには推定5200万ポンド（約75億8000万円）の移籍金が転がり込むようです。さて、こうなると、次の興味は「チェルシーが誰を獲るのか」です。プレミアリーグとFAカップしかスケジュールがないとはいえ、前線の3つのポジションにジエゴ・コスタ、ペドロ、アザール、ウィリアン、バチュアイの5人では不安でしょう。プレミアリーグ首位チームの冬の補強について、さっそく報じたのは、やはり「デイリー・ミラー」とデイリー・メール」でした。ターゲットは、レアル・マドリードで出番を失っているハメス・ロドリゲス。リーガ・エスパニョーラで8試合1ゴールとくすぶっているアタッカーの移籍金は、7500万ポンド（約110億円）という巨額ですが、夏に思うような補強をできなかったチェルシーは、オスカルとの差し引きで許容範囲としているのかもしれません。

鹿島アントラーズに敗戦寸前まで追い込まれたレアル・マドリードが、最後は力の違いを見せつけたFIFAクラブワールドカップ決勝の試合後、ハメス・ロドリゲスは移籍を示唆するコメントを残しています。「ここに残るかはわからない。さまざまなオファーがあり、検討できる時間は7日ある。マドリードにいられるのは幸せだけど、プレイしたい」。世界王者となったこのタイミングで…と誰もが感じる発言をセルヒオ・ラモスが非難し、クラブも眉を顰めたとなれば、残留という選択肢は針のむしろです。レアル・マドリードの10番の移籍については、イギリスメディアだけでなくコロンビアの「エル・ティエンポ」も報じており、里帰りしたハメス・ロドリゲスはボゴタでイギリスのビザを申請していたとのこと。状況証拠は揃いましたが、チェルシーは本気で獲りにいくのでしょうか。

来季、欧州に戻ることを視野に入れれば、コンテ監督のチームに必要なのは、3人めのストライカーと左のウイングバック、CBなのではないかと思います。ハメス・ロドリゲスは、ジエゴ・コスタの不在時にストライカーとして起用するのは心もとない選手で、ウイングはペドロ、アザール、ウィリアンといった「本職」のほうが機能するでしょう。ほしいのは、最前線かサイドのスペシャリスト。1列後ろに下げられるクアドラードは今ならフィットしそうで、よりタレントが不足している左サイドにブリントやフクスのような守備に長けた選手を足しておくのもイメージできます。試合に出たがっているハメス・ロドリゲスは、サイドにもいちばん前にもはまらず、オスカルと同じ道を歩いてしまうのではないかと懸念しています。昨季の1月にやってきて、プレミアリーグ2試合1ゴールでチームを去ってしまったアレシャンドレ・パトの姿が脳裏をよぎります。

中国クラブの大盤振る舞い、移籍金、ハメス・ロドリゲスはプレミアリーグになじめるのかなどなど、気になるところはいろいろあるものの、コロンビア代表の10番は見ていておもしろい選手ではあります。注目の1月まで、10日を切りました。来るとなれば、コンテ監督がどう活かすのかをしっかりチェックしたいと思います。