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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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【Tottenham×West Ham】押していたハーフタイムに10番をチェンジ!ポステコグルー采配に脱帽!

プレミアリーグ8節、トッテナムVSウェストハムのロンドンダービー。前半は1-1ながら、ポゼッションは61%対39%、シュート数12対5、CK12本とスパーズが優勢でした。18分に左サイドでウドジェがボーウェンに抜かれ、折り返しをクドゥスに押し込まれたものの、その後は主導権を握り、36分の速攻で右からカットインしたクルゼフスキが左足でニアを突いて追いついています。

この状況なら、大半の監督が同じメンバーを後半のピッチに送り込むでしょう。ルーカス・パケタの危険なパスと、クドゥスの獰猛なドリブルさえケアすれば押し切れるはずだ、と。しかしアンジェ・ポステコグルー監督は、ギャンブルに出ました。ハーフタイムに切ったカードは、ジェームズ・マディソンをパペ・マタル・サールです。

ペップなら、デブライネをコヴァチッチ。アルテタなら、ウーデゴーアをジョルジーニョ。5回のチャンスクリエイトとアシストを記録していたプレーメイカーを下げるというアイデアは、彼らのみならず、誰も採用しないでしょう。このプランは、ハイラインをキープしながらアグレッシブに攻め続けるポステコグルーらしくない策ともいえます。彼はなぜ、動いたのか?

「彼らの中盤には、ソーチェクのようにビッグでフィジカルに長けた選手と、ルーカス・パケタやギド・ロドリゲスといったテクニックに優れた選手がいる。前線でボールをコントロールされれば、とても脅威になる。3人ともクイックでダイナミックだ。われわれは、起点を断たなければならなかった。これはうまくいったと思う」

左のインサイドに配した29番に求めたのは、守備力と走力だったようです。後半の最初の15分を見れば、采配は的中したというしかありません。立ち上がりの5分は、ボーウェンとソーチェクを軸に右サイドを攻めたハマーズの時間。敵陣ボックスの左手前でソン・フンミンと連携していたマディソンと比べると、パペ・マタル・サールは重心を後方に下げています

ファン・デ・フェンが左サイドに出たパペ・マタル・サールに預けたのは52分。入れ替わるように、ウドジェはボックスの手前に絞っています。タッチライン沿いにいたソン・フンミンにボールが渡ると、ウドジェはゴールラインにまっすぐ向かい、キャプテンの斜めのパスを受けました。ギド・ロドリゲスがこれに対応して下がったため、イヴ・ビスマはフリーです。

SBが戻したボールに走り込んだイヴ・ビスマは、GKのアレオラが真ん中に戻ろうとしていたのを見逃さず、冷静に逆を突きました。2-1となり、ハマーズの逆襲の軸はやはりクドゥス。パペ・マタル・サールは自陣ボックスの左をケアしています。55分の速攻の起点は、センターサークルにいたソン・フンミンでした。

右サイドのクルゼフスキにパスを通したキャプテンは、カットインしたレフティを見ながらその外をまわっています。打つと見せかけたクルゼフスキがソン・フンミンの足元に転がすと、左足のシュートはアレオラの正面でしたが、キャッチしようとせずに足で処理したため、カットしたボールがトディボに当たってゴールラインを越えてしまいました。

3-1となった4分後、ポステコグルー監督の意図を忠実に表現するようなゴールシーンが生まれます。中央をドリブルで進んだのはボーウェン。前に出ていたロメロが必死に戻ってボールに触ると、こぼれ球を回収したパペ・マタル・サールが素晴らしいロングフィードを左サイドのソン・フンミンに通しました。

軽快なステップでトディボをかわした7番が、GKの股間を抜いて4-1。この直後に、カルロス・ソレールから敵陣で奪取してショートカウンターを発動させたのもパペ・マタル・サールです。ソランケの縦パスにキルマンがスライディングで触ると、こぼれ球に反応したソン・フンミンが右隅に流したシュートはポストに阻まれています。

電光石火の3発の後、何とか差を詰めようとしたハマーズは、シュート4本のうち3本が「右からクドゥス」。左右のどちらにも出没し、迷わずシュートを狙う14番は、シュート7本とドリブルチャレンジ12回(成功5回)、さらにイエロー2枚でレッドカードという怖ろしいスタッツを残しています。ソン・フンミンの背後のスペースをリスクと捉えた指揮官の打ち手が冴えた完勝でした。

優位に立っていた45分の後、彼の脳裏をよぎったのは、シュート数9対20と圧倒しながら2-1で敗れたニューカッスル戦か。あるいは2点リードから引っくり返されたブライトン戦か。クルゼフスキをインサイドに下げて中盤の主軸とするなど、チーム全体の状況と個々のコンディションに応じて改善を進めるポステコグルー監督の次なるマジックを楽しみにしています。


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