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リヴァプールはなぜこんなに強い?現地記者が伝える「スロット監督のチームマネジメント術」

ユルゲン・クロップが積み上げた極上のレガシーや、モー・サラー、ファン・ダイク、アリソンといったワールドクラスの存在があるとはいえ、公式戦17試合15勝1分1敗という戦績には驚嘆させられます。アルネ・スロットのプレミアリーグチャレンジは、まだ始まったばかりですが、彼のチームはなぜこれほど強いのでしょうか

最大の驚きは、現在のスカッドに補強した選手がひとりもいないことです。ユーヴェから来た唯一の新戦力、ファデリコ・キエーザのプレミアリーグ出場は18分。今のリヴァプールをひとことで表現すると、「クロップのラストイヤーから、チアゴとマティプを引いたチーム」です。前任者と同じ顔ぶれで戦っているのに、既に大きな変化を遂げた選手が複数存在します。

最も変わったのは、中盤センターに定着したライアン・フラーフェンベルフでしょう。入団初年度は遠藤航のバックアッパーだった22歳のMFは、今季プレミアリーグで全試合先発で起用されており、テンポのいいパスワークと突破力でライバルを凌駕しています。2023-24シーズンの公式戦で13ゴール5アシストだったルイス・ディアスは、既に9ゴール2アシストを記録しています。

クロップ時代は守備の脆さを指摘されていたアーノルドは、ポジショニングを変えることによって右サイドを安定させています。単独のアンカーではプレイしづらそうだったマック・アリスターは、今の役割のほうが納得感は高いのではないでしょうか。最近のトピックスは、出場時間が増えるとともにゴールへの関与度が高まったカーティス・ジョーンズの好調ぶりです。

これまで負傷に悩まされていたコナテは、カラバオカップのウェストハム戦以外は全試合出場です。補強ゼロで少数精鋭のチームに、何を施せば化学反応が生じるのか。この疑問に答える緻密な取材を敢行した「アスレティック」のグレッグ・エヴァンス記者は、「スロットの最大の強みはコミュニケーション」といっています。

Inside Arne Slot’s brain」と題したレポートから、新指揮官のマネジメント術の一端を紹介しましょう。スロット監督の両親は教師で、コミュニケーション術の多くは彼らから学んだそうです。「怒りを爆発させると影響力が薄れるので、決して怒鳴らない」「厳しいことでも躊躇せず、率直に伝える」「それでも話し終えたときには、ポジティブな印象を残す」が基本です。

マンツーマンの対話とミーティングを重視し、就任当初からそれぞれの選手に強みを伝えていたとのこと。クアンサーにポジションを奪われかけていたコナテは、「ハイレベルに戻すためにサポートが必要な選手」という位置づけで、「セットピースでファーストコンタクトを制する能力と、カウンターアタックの際のスピード」を認識させることがら始めたといいます。

ドミニク・ショボスライには、守備のタスク、中盤からのスプリント、アタッキングエリアでの正確なパスを求めていると伝えてテンションを高め、ルイス・ディアスには適切なタイミングでの走り出しなど、戦術的な指導を行っています。昨シーズンとは見違えるようになった選手は、ポジティブなコーチングと緻密なオーダーによって何をすべきかを把握しているようです。

コミュニケーションの特徴をロバートソンに聞くと、「声を荒げて不満を言うこともできるだろうけど、そうはしない。映像を見せて、どうすればもっとうまくできるか、解決策を見出そうとする」。ハーフタイムにもクリップを使うので、スタッフたちは試合中にシーンを揃えてビデオ分析を行うというハードワークをこなさなければなりません。

コミュニケーションといえば、さらにもうひとつ、「交代した選手にきちんと理由を説明する」のも大事にしていること。ブレントフォード戦の72分に、ブラッドリーと代わったアーノルドは不満そうでしたが、「長期的な視点での交代。常にフレッシュな状態をキープしたい」と説明されており、ハーフタイムに下げられたクアンサーは、「チームの問題」と伝えられたそうです。

スロット監督は、フェイエノールト時代からコンディションキープと負傷予防を目的とした交代策が多く、フィジカルパフォーマンスコーチのルーベン・ピータースが選手たちの状態を常にチェックする役割を担っています。「謎のツィミカス」「なぜブラッドリー?」「今さらガクポ?」に見えないよう、コミュニケーションを密にとっているのでしょう。

「両親は教師」「少人精鋭を好む」と聞いて、クラスの人数が少ないほうが目が届き、グレる生徒が減るよなあ…と素直に思いました。「相手チームの弱点分析や適材適所のシステム構築より、選手たちのモチベートのほうが難しい」という奥の深いコメントを聞くと、サラーのスーパーショットより、試合中のベンチで何がなされているのかに注目してしまいそうです。

この話に触れたのは初めてというレッズサポーターのみなさんには、「これからもきっと謎先発や謎交代があるけど、たぶんそれはコンディション」と伝えたいと思います。アーノルドがCLでフル出場がないことにモヤモヤしていたのですが、記事を読んでスッキリしました。しかしまあ、それで勝ち続けるとは…。リヴァプールは、いい人を探り当てたのではないでしょうか。


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“リヴァプールはなぜこんなに強い?現地記者が伝える「スロット監督のチームマネジメント術」” への1件のコメント

  1. asu より:

    スカッドをソリッドにすることは反面特定の選手への依存度が高まることが懸念されるように思いますが、主力が怪我や離脱が起きた時にこそスロット監督の真価が問われるのかなぁとかなんとか思っています

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