偏愛的プレミアリーグ見聞録

「ガブリエウ・ジェズスは来ない。アーセナルに手を伸ばしてみたけど、彼らはこういった。『レイラ、条件は一切ない。われわれは交渉するつもりはない』。この件は終わりだ」。パルメイラスのレイラ・ペレイラ会長が、ストライカーを獲得できなかったと語ったのは、10月末でした。エドゥ・ガスパールSDの退任が発表される1週間前のお話です。

少しでも売る気があれば、オファーを確認するでしょう。アーセナルが拒否したのは、タイトなスケジュールになる年末年始にストライカーの枚数が足りなくなるのを怖れたのか、あるいはジェズスの復活を信じているのか。彼が本領を発揮していれば、「ギョケレスやシェシュコに再チャレンジ」といったゴシップは流れてこなくなるはずです。

ワールドカップカタール大会で重傷を負ってから、ゴールに絡むシーンが減ってしまったガブリエウ・ジェズスは、2024-25シーズンのプレミアリーグでは未だノーゴール。チャンピオンシップで残留を争っているプレストン・ノースエンドとのカラバオカップで、1ゴール1アシストを記録しただけに留まっています。

現在のエースはカイ・ハヴェルツ。開幕からのプレミアリーグ7試合で4ゴールを決め、ストライカーに関する議論を中断させていたのですが、初の敗戦となったボーンマス戦以降は4戦ノーゴールと苦しんでいます。ウーデゴーアの離脱に加えて、度重なる負傷でサカが調子を落としてしまったことも、360分でシュート3本という不振につながっているのでしょう。

現地メディアでは、「やはりカイ・ハヴェルツは本職ではない」「ゴールを量産できるタイプを獲得すべき」という声が高まっています。ターゲットとして語られているのは、夏に話題になったシェシュコ、ギョケレス、イサク。「フットボールロンドン」は、7人の記者が「ギョケレスか、イサクか？」の二択について自説を主張する記事を配信しています。

今季のイサクはスロースタートで、公式戦11試合5ゴール2アシストとややおとなしい数字ですが、直近のプレミアリーグでは3試合連続でゴールを決めています。対してスポルティングCPのギョケレスは、プリメイラリーガで11戦16発、チャンピオンズリーグで4戦5発と猛威を振るっています。バトルは接戦となるかと思いきや、7人は全員イサク推しです。

最大の理由はプレミアリーグ経験で、昨シーズンの30試合21ゴールというスタッツが高く評価されています。「アーセナルは、彼のようなタイプを欠いている」「ティエリ・アンリのような選手」「ギョケレスより1歳年下で、成長余力がある」といった声もあり、今のガナーズの戦い方にフィットする存在と捉えられているようです。

ギョケレスについては、「プレミアリーグで今の戦績を再現できるかどうかは疑問」「適応するのに時間がかかる可能性がある」という意見が大勢を占めています。ブライトン、スウォンジー、コヴェントリーでの経験はプラス評価になっておらず、「ギョケレスはクラブを後退させるリスクがあるが、イサクは間違いなくアーセナルを前進させる」といい切る記者もいます。

メンフィス・デパイ、フィンセント・ヤンセン、パトソン・ダカ、ダルウィン・ヌニェスなど、プレミアリーグで苦しんだ大陸の得点王たちが、記者たちの脳裏に浮かんでいるのかもしれません。アーリング・ハーランドという成功事例は、「彼は特別」のひとことで片づけられています。私もかねてからイサク推しで、どうやら賭けは成立しないようです。

イサクが来ても、カイ・ハヴェルツは2トップや左のインサイドで出番を得られるでしょう。しかしジェズスは…。これからの半年で復活の兆しがなければ、マジメなキャラを好むアルテタ監督も放出を容認するでしょう。2019-20シーズンのマン・シティでプレミアリーグ14ゴールのストライカーは、焦る気持ちを抑えて、相手の裏を取る余裕を取り戻す必要があります。

アーセナルが順位テーブルの頂点に立つまでは、現有戦力への疑念と2人のスウェーデン人を巡る議論は収まらないでしょう。マンチェスター・ユナイテッドの監督に就任したアモリムが、ギョケレスを狙っているという話もあり、マーケットで遅れを取るわけにはいきません。目下の最優先の補強ポジションが指揮官とタッグを組める敏腕SDであることも、全員一致となりそうです。