偏愛的プレミアリーグ見聞録

ドリブルでカットインしたマズラウィが、中央のブルーノ・フェルナンデスにパスを出したのは38分。フリーで打たせまいとハーフライン手前からスプリントしたガブリエウ・ジェズスは、追いついたときは既にバランスを崩していました。マズラウィが蹴った瞬間、8番の斜め後ろに踏み出した左足が、今後のキャリアに大きな影響を与える一歩になってしまったようです。

FAカップ3回戦、アーセナルVSマンチェスター・ユナイテッド。ブルーノに接触する前から顔をしかめていたストライカーは、転倒すると同時に右手を挙げています。メディカルスタッフの手際がよかったのは、何が起こったのか把握していたからでしょう。事故発生から70秒後には、ラヒム・スターリングがコーチの指示を受けてピッチに立とうとしていました。

火曜日に行われた検査の結果は、左膝の前十字靭帯（ACL）の損傷。アーセナルの公式サイトは、「近日中に手術を受け、回復のためのリハビリテーションプログラムがスタートする」と報告しています。クリスタル・パレスの本拠地セルハーストパークで、プレミアリーグでは11ヵ月ぶりとなるゴールを決めたのは12月22日。復活への道は、わずか3週間で閉ざされました。

ハムストリングに重傷を負ったブカヨ・サカの復帰は、おそらく4月。ブライトン戦で筋肉系のトラブルを抱えたイーサン・ヌワネリは軽傷で、ピッチでトレーニングを始めているようですが、カイ・ハヴェルツ、トロサール、マルティネッリ、スターリングという少数精鋭で、タイトなスケジュールを乗り切ろうとするのは無謀でしょう。

「レアル・ソシエダのマルティン・スビメンディが最重要ターゲット」「次の夏に、バイアウト条項に記載されている5100万ポンドを支払って獲得するべく、指揮官が乗り出して本人と話し合いを継続中」。契約満了が近づいているトーマスとジョルジーニョのポジションを強化しようとしているクラブは、今後の補強プランを見直す必要に迫られるかもしれません。

目下のファーストチョイスは、1月から稼働できるストライカー。ルイス・エンリケとの関係が悪化したランダル・コロ・ムアニを注視という報道があったのですが、つい先ほど「パリとユーヴェがローン移籍で合意間近」というニュースが流れています。夏に獲得が噂されていたゴールゲッターを、冬に押さえるのは難しそうです。

アレクサンダル・イサク、ヴィクトル・ギョケレス、ヴィクター・オシムヘン、ベンヤミン・シェシュコは揃って絶好調で、口説き落とせるとしても夏のお話でしょう。マンチェスター・ユナイテッドで居場所を失っているラシュフォードは、高額サラリーもさることながら、ネガティブな性格をアルテタ監督が嫌うのではないでしょうか。

マーケットに出ている選手で魅力的なのは、チェルシーでプレミアリーグ出場3試合に留まっているクリストファー・エンクンクと、ブライトンで出番がないエヴァン・ファーガソンです。エンクンクは、プレミアリーグでは18試合2ゴールですが、ヨーロッパカンファレンスリーグと国内カップで10戦11発と本領を発揮しています。

最前線からトップ下、セカンドストライカー、左ウイングと複数のポジションをこなせるのは、いかにもアルテタ好みです。対してエヴァン・ファーガソンは最前線に張るのみですが、未だ20歳で成長余力があります。ニクラス・フュルクルクが長期離脱となったウェストハムがアプローチしているといわれていますが、具体的な交渉には至っていないようです。

緊急事態の今は、プレミアリーグ経験があるストライカーをローンで引き入れ、夏に本命にアプローチするのが良策でしょう。ジェズスは苦い思いを抱いて、ノースロンドンに別れを告げることになるのでしょうか。2022年のカタールの重傷は右足、今回は左足。前十字靭帯なら、順調にリハビリが進んでも来季の前半戦の出番はないでしょう。復活途上だっただけに、残念です。