偏愛的プレミアリーグ見聞録

プレミアリーグのトランスファーマーケットのデッドラインまで、残り4時間となりました。【前編】に引き続き、「BBC」の特設ページ「デッドラインデーLIVE」のレポートを追いかけていきます。現地時間の19時に発表されたトピックスは、「パリ・サンジェルマンのマルコ・アセンシオがアストン・ヴィラにローン移籍」。記者たちは「大成功」と盛り上がっています。

レアル・マドリードで286試合61ゴールのスペイン代表FWは、18ヵ月前にフリートランスファーでパリに移籍しました。最初のシーズンは開幕直後に負傷してしまい、公式戦31試合5ゴール7アシスト。チャンピオンズリーグは先発ゼロで終わっています。2年めの今季は、序盤は悪くなかったのですが、12月からベンチが定位置となってしまいました。

公式戦16試合2ゴール4アシストは、納得できるスタッツではないはずです。チャンピオンズリーグのノックアウトフェーズに進出したヴィラで、マドリード時代のパフォーマンスを再現できれば、バーミンガムの熱狂的なサポーターに称えられるでしょう。「BBC」の記者からは、「このディールで、ヴィラの補強はB評価からAに格上げとなった」という声が挙がっています。

チェルシーのMFチュクエメカのドルトムント行きが決まったのは、19時50分。レンタルフィーは200万ポンドで、買取オプションが付いているそうです。20時過ぎには、「トッテナムとアストン・ヴィラのアクセル・ディサシ争奪戦は、本人の希望でヴィラが勝利。500万ポンドのストレートローン」というニュースが届きました。

ラドゥ・ドラクシンが前十字靭帯損傷でシーズンアウトとなり、明らかにCBが足りないスパーズは、マーク・グエイもディサシも獲り逃すという最悪の展開となっています。最終ラインが脆弱とわかっていながら放置してきたダニエル・レヴィ会長が、昨日ランスから獲得したケヴィン・ダンソだけでマーケットを終えたら、サポーターの風当たりはますます強くなるでしょう。

現地は21時、締め切りまで2時間。「デッドラインデーLIVE」のタイムラインは、マティス・テルとニコ・ゴンザレスの続報待ちで、サイモン・ストーン記者は「今日の最高のサインはエヴァン・ファーガソン」と振り返りモードになっています。マンチェスター・シティを5‐1で下したアーセナルは、新たなストライカー獲得は夏以降と決断したようです。

ラシュフォード、アントニー、マラシアを手離してパトリック・ドルグとエイデン・ヘヴン。マンチェスター・ユナイテッドは、お金だけでなく戦力の計算も必要でしょう。ルーベン・アモリムが「前線が足りない」などと愚痴をこぼしたら、コメディを通り越してホラーです。「ラシュフォードのゴール数＞ホイルンド＋ザークツィー」とならないよう祈るしかありません。

22時を過ぎ、ニゼール・キンセラ記者が「ウィリアンはフラムに復帰する予定」といっています。ヴィラの積極的な補強とスパーズの動向が話題となるなかで、締め切りの時刻が近づいてきました。ここから先は、「午前1時までに移籍関連の書類一式が送付されればセーフ」となります。そして23時、ポルトのMFニコ・ゴンザレスの移籍が発表されました。

マンチェスター・シティとの契約は4年半で、移籍金は5000万ポンド。マルムシュ、フサノフ、ヴィトール・レイスに続く4人めを足し込むと、マン・シティの投資額は1億8000万ポンドとなり、他の19チームのトータル1億7700万ポンドを上回ります。2023年に3億3000万ポンドを投じたチェルシーには及びませんが、冬のマーケットにおける史上2位だそうです。

この直後、トッテナムがバイエルンからマティス・テルを獲得というアナウンスがありました。愕然としたのは、「BBC」が報じる契約内容を見たときです。4570万ポンドの買取オプション付きのローン。完全移籍ではなかったのか…。数日前に1度、スパーズを拒否した19歳のアタッカーは、マンチェスター・ユナイテッドへの移籍に前向きと伝えられていました。

オールド・トラフォードが渋ったのは500万ポンドのレンタルフィーか、あるいは夏に発動するオプションの額か。ホイルンド、ザークツィー、ブルーノ・フェルナンデス、アマド・ディアロ、ガルナチョに、メイソン・マウントが加われば3‐4‐2‐1は機能すると明言してもらえれば、気持ちを入れ替えて前を向けます。ご多忙と存じ上げておりますが、何卒よろしくお願いいたします。

プレミアリーグの冬のトランスファーマーケットは、スパーズの必死のディールで終わりを告げました。この後、デ・ヘアのレアル・マドリードのような事件があったら、次の機会にレポートいたします。積極的に動いたマンチェスター・シティとアストン・ヴィラが、新戦力にどんなミッションを託すのか、今から楽しみです。そろそろ寝ないと、いや、もう9時か…。