怒り、驚き、リスペクト…「冒険は終わった」クラウディオ・ラニエリ解任を巡る7人の言葉
元選手や監督経験者は、総じてラニエリ解任に批判的です。「特段びっくりするようなことではないが、がっかりしている。彼は偉業を成し遂げた。チームが降格の危機に瀕すると、オーナーはパニックを起こす。悲しいことだ」と語ったのは、ハリー・レドナップ。マイケル・オーウェンは「恥ずべきこと」と言い切っており、ローマを率いるスパレッティ監督は、「感謝の気持ちが感じられない。彼がチームを作り、化学反応を起こしたんじゃないか。残念だ。ローマに会いに来てくれたら喜んで受け入れるよ」と、同胞へのクラブの姿勢を嘆いています。彼らの主張は、再現不能な輝かしい成果に対して、9ヵ月後の解任はリスペクトを欠いているのではないかというもの。感情的な言葉には、最近のプレミアリーグにおいて期中の監督解任が多いことに対する非難も込められているのかもしれません。
少し角度が違うのは、「スカイスポーツ」が伝えたジェイミー・キャラガーさんの見解です。「多くの人がラニエリ監督のレスターが降格するのを見たくないと思っていただろう。今回もたくさんの同情が寄せられたのではないか。でも、リーグ最下位クラブはもっと同情されるだろうし、レスターが落ちても涙する人ばかりだとは思えないんだ。彼らはヨーヨークラブ(プレミアリーグとチャンピオンシップを行き来するクラブ)だった。それはいつものことで、タイトルを獲ったからといって変わらないだろう。ラニエリと契約したとき、何を期待したんだっけ?」。ニュートラルな視点に立ってみれば、レスターは今までやってきたことを繰り返しているだけだろうというわけです。キャラガーさんは、こんなこともいっています。
「If someone said they’d win the league and then go down, every Leicester fan would have said yes to that.(誰かが、レスターはリーグを勝った後に降格するといったら、ファンは”それでいい”と返すんじゃないかな)」
問題は、新しい高額契約を得てライフスタイルマガジンに載るなど浮かれてしまった選手たちにあり、いつものポジションで戦っている監督だけのものではないのではないか、というのが彼の主張。現場組のクラブ批判やキャラガーさんの冷静な意見に対して、半分は共感、半分は疑問です。実績を残した監督はリスペクトされるべき、短期間で現場のトップのクビをコロコロすげ替える風潮は嘆かわしいという声にはうなずきつつ、それでも今回のレスターの決断には「仕方がない」と納得してしまいます。問題は、降格ゾーンすれすれの17位というポジションよりも、年明けのプレミアリーグで1分5敗、ゴールすらないという状態のほうでしょう。
攻撃も守備もダメ、複数の選手が昨季のレベルにないという状況に陥ったチームは、往々にして監督と選手のコミュニケーションに問題を抱えています。「スカイスポーツ」は、チャンピオンズリーグのセヴィージャ戦に敗れた後、スリヴァッダナプラバオーナーが主力選手を呼び出し、その多くが不満を抱えていることを確認したと報じています。ロッカールームの話がどこまでが事実なのかは、常にわからないものですが、ラニエリ監督の戦術が二転三転するのを観続けてきた者としては、選手たちに困惑やストレスが生じていたのは確かだろうと思います。ゴールひとつ決められないチームについて、未だ改善の方向性が見出せていない監督に将来を託せないというクラブの判断は、責められるべきものではないのではないでしょうか。
解任の報を聞いて、「おとぎ話は、グリム童話だったのか!」とフォーラムに書き込んでいたレスターサポーターがいました。ギリシャで失敗した後、ヴァーディ、マフレズ、岡崎慎司、シュマイケルなどの「7人の小人」に蘇生され、ともに栄冠を手に入れたラニエリは、どこで毒りんごをかじってしまったのでしょうか。いや、このおとぎ話は、ハッピーエンドと受け取ってもいいのかもしれません。「私の夢は死んだ。夢見ていたのは、いつも愛するレスターと一緒にいることだった」と悲しみを表現した監督は、最後にこう結んでいるのですから。「レスター・シティ・フットボールクラブに感謝している。冒険は素晴らしかった。永遠に私とともに生き続けるだろう」。
クラブが正しかったとしても、間違った判断をしたとしても、誰も成し得なかった偉業はプレミアリーグの歴史を飾り続けます。最後に、私がこのたびのラニエリ解任について語られた言葉のなかで、いちばん感動したメッセージを添えて、この稿を締めたいと思います。こんな終わりを語るのに、最もふさわしい人からの味わい深い言葉です。
「CHAMPION OF ENGLAND and FIFA MANAGER of THE YEAR️. Sacked.That’s the new football, Claudio. Keep smiling AMICO. Nobody can delete the history you wrote.(イングランドのチャンピオンであり、FIFAの最優秀マネージャーだった監督が解任された。これが新しいフットボールの世界だ、クラウディオ。友よ、笑顔でいてくれ、あなたが描いた歴史は誰にも消せはしない)」ージョゼ・モウリーニョ
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昨年のラニエリレスターの素晴らしさを思い出すにつれ、今回の解任劇は悲しすぎます。
再びの優勝など誰も期待しませんし、チームを一部に定着させられれば、アンタッチャブルな永遠のレジェンドとして賞賛されるはずでした。
オーナーとの関係も良好で、理想的な環境です。
無冠の帝王と呼ばれたラニエリに、ようやく定住の地ができたのだと思ったのですが……。
監督人生の最後に栄華を極め、長期政権を築く姿が見たかったです。
監督として、チームを指揮する立場の方からすると許せないのかもしれませんが、私はこの解任を支持します。
寂しいことですが、当初ラニエリが抜擢されたのは、優勝するためでなく残留のためでした。
昨年の望外の成果は永遠に賞賛されるべきですが、今この時点のラニエリがこの職務を全うできないのは事実なのですから。
ただ、1年間楽しませてもらったラニエリには、心から感謝したいです。
解任ですか…まあ成績が成績ですし不思議ではないですがそれだけに去年が凄かったんですね。一発屋だの運だの何だの言われるかもしれませんがそれでもエレベータークラブに優勝をもたらしたのは事実であり、間違い無く偉大な歴史です。
ところでスペシャル・ワンはここまでコメントの文才を粋な方へと働かせる方でしたっけ?
爪楊枝さん>
同感です。今季の苦闘も含めて、素晴らしいチャレンジを見せていただきました。心情的に、ひとつだけあるとすれば、「夢の終わりはチャンピオンズリーグの終わりであってほしかった」。それだけですね。
グッチさん>
わりとしゃれたいい回しをされる方なので、すんなり受け取りましたが、いわれてみるとかっこよすぎますね。でも、スタッフがわざわざ、イタリア語で「友よ!」と呼びかけたらカッコよくないすか?とはやらないんじゃないですかね。
言葉が鋭い監督なので褒める言葉もかっこいいですね。Nobody can deleteはきまってるなと思います。ファンファールがユナイテッド監督に就任したときにメールして「あなたの経歴に嫉妬する」とあったそうですが、これも彼ならではの言い回しで好きでした。
更新お疲れ様です。
モウリーニョは流石です。魅せる力を持ってますね。
年明けの状況を鑑みるに解任は仕方ない…むしろよく我慢した方だと思いますが、第三者の立場で勝手に考えるならラニエリで優勝して翌年に降格する2部構成の物語であっても良かったのかなと思ったりもします。更にラニエリで昇格する終章があると綺麗に纏まりますね。もちろんクレジットに原案ピアソンは不可欠ですが笑
マンチーニ、モウリーニョ、ラニエリと優勝した次のシーズンに解任ではないですか?
1つのチームで監督する事の難しさとファーガソンの偉大さを再確認できますね
今季優勝するチームの監督も来季もしかしたら・・・
プレミアリーグ大好き!さん>
プレスカンファレンスのコメントもクールでしたね。冷静さのなかに鋭さと情熱あり、で。
レッズさん>
物語としては、ありでしたね。自ら壊してしまったのがとにかく残念です。
シティふぁんさん>
内部からヒビが入ってしまい、修復が難しいところまで追い込まれてしまった監督たちですね。おっしゃるとおり、サー・アレックス・ファーガソンは偉大です。今季の優勝監督は大丈夫ではないでしょうか。内部からの信頼は絶大のようですし(誰のことでしょう・笑)