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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

主力起用の連戦、必然の失速…サブの選手を信頼しきれなかったアルネ・スロットの限界。

その日のウェンブリーから聞こえてくる音は、セント・ジェームズ・パークに似ているように感じられました。カラバオカップは、リヴァプールにとってはシーズン最初のタイトルですが、ニューカッスルにとっては56年も待ちわびたトロフィーです。ゼブラのスカーフを纏ったサポーターたちは、フットボールの聖地を自らのホームグラウンド仕様に上書きしようとしていました。

ピッチと同様に、スタンドでも押されていたリヴァプールのサポーターの多くは、シルバーのメダルを首にかけられる選手たちを見ずにウェンブリーを後にしています。この重要なステージで、最強だったはずのチームが最悪のパフォーマンスに終始するとは思わなかったでしょう。2月に入るまで4冠をめざしていたリヴァプールは、その後の5週間で3つを失ってしまいたした。

45分までシュートゼロ。2-0になってもオンターゲットセロ。59分の速攻からカーティス・ジョーンズが放ったきわどいシュートと、大勢が決してからのフェデリコ・キエーザのゴールしか枠にいかなければ、敗戦はやむなしです。フラーフェンベルフとマック・アリスターはゲームをコントロールできず、サラーがボックスのなかでボールに触ったのは1回だけでした。

リヴァプールが失速した原因のひとつは、間違いなく疲労です。年末までのプレミアリーグ18試合のうち、9試合でデュエルの勝率が50%を上回っていたのですが、2025年になってからのプレミアリグは2勝9敗。パリとのホーム&アウェイとニューカッスルとのファイナルは、スロット就任以来のデュエル勝率におけるワースト5のうち、3つを占めています。

疲労が蓄積してしまった要因は2つで、ひとつは彼らだけに課せられた過密スケジュール。もうひとつはスロット監督の主力依存です。12月のエヴァートン戦が強風で中止となり、カラバオカップの決勝進出でアストン・ヴィラ戦が前倒しされたため、リヴァプールは2月のプレミアリーグを2試合多くこなしています。

9日間のブレイクタイムを得たアーセナルの選手たちが、ドバイで笑顔を浮かべている間に、リヴァプールは週2日の戦いを続けていました。この状況になれば、誰もがターンオーバーで切り抜けようとするでしょう。スロット監督とコーチングスタッフも、サブの選手たちを主体とする試合を設定したのですが、その試みは見事に失敗しています

ケレハー、ツィミカス、遠藤航、エリオット、フェデリコ・キエーザを先発させたCLのPSV戦は、3-2で逆転負け。チャンピオンシップの最下位が相手なら大丈夫だろうと、FAカップ5回戦のプリマス・アーガイル戦でも彼らをスターターとしたのですが、1-0のジャイアントキリングを許してしまいました。

就任1年めの指揮官は、主力に戦術を浸透させるのが精一杯で、サブの選手をフィットさせるまでには至っていなかったようです。今季プレミアリーグで、1試合あたりの選手交代は1.76回。これは7番めに少ない数字で、彼らの下にいるのは欧州で戦っていないクラブだけです。過去7年の優勝チームの平均は2.79回で、これほどの少数精鋭で駆け抜けた勝者は存在しません

スロット監督は、漫然とレギュラー固定で戦っていたわけではありません。サラーとアーノルドの上下動を減らして体力の消耗を抑えるなど、スカッドのコンディションをケアしながら4冠をめざしていました。さほど負傷者を出さずに、アーセナルに12ポイント差の首位に立っているという事実は称賛すべきでしょう。

その一方で、「サブの選手を信頼しきれない」という課題が、ここ一番のゲームに影響を及ぼしてしまったようです。パルク・デ・プランスで苦しんだ直後のサウサンプトン戦が、2つのタイトルを失うトリガーとなったというと、大げさでしょうか。「アンフィールドに最下位を招待」は、主力を休ませるために用意された舞台装置のように見えます。

ところがこの試合のスタメンには、ファン・ダイク、コナテ、アーノルド、フラーフェンベルフ、ショボスライ、サラーが揃っていました。指揮官のなかには、PSV戦とプリマス・アーガイル戦のストレスが残っていたのでしょう。それでも前半でセーフティリードを築いていれば、中盤とサイドは全員代えていたのではないでしょうか。

ポゼッション75%と最弱のチームを圧倒したリヴァプールは、前半終了間際のセットピースからスモールボーンにゴールを決められ、0‐1でハーフタイムを迎えました。スロット監督は後半が始まる前にショボスライとカーティス・ジョーンズを下げ、マック・アリスターとエリオットを投入したのですが、最も休ませたかったフラーフェンベルフを81分まで引っ張っています

3-1の勝利の代償は、アンフィールドでノーゴールだったCLの敗退。120分の激闘の疲れと敗戦のショックは、週末のカラバオカップに持ち越されました。セインツ戦で主力のスイッチをオフにしていれば、その後の2戦で勝てたとまではいいませんが、あれほど厳しい展開を強いられることはなかったかもしれません。

かくしてリヴァプールの目標は、プレミアリーグ制覇に絞られました。インターナショナルマッチウイークで気持ちを切り替えれば、強いレッズが戻ってくるのでしょうか。パリとニューカッスルに攻め立てられた選手たちの自信の揺らぎと、モチベーションが懸念されます。ブレイク明けのマージーサイドダービーとフラム戦は、簡単に勝てるゲームではありません。


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