偏愛的プレミアリーグ見聞録

勝てば文句なし、ドローでも納得、3点取られなければOK。ミッションはシンプルですが、実際にやるとなると簡単ではありません。ヨーロッパリーグ準決勝セカンドレグ、マンチェスター・ユナイテッドVSアスレティック・ビルバオ。前半のホームチームは、プレスで追い込まれるシーンが多く、パスワークはナーバスに見えました。

4分に右からFKを蹴ったのはブルーノ・フェルナンデス。ゴール前で競り勝ったリンデロフは、ヘディングをコントロールできませんでした。前線のプレスは、ボールが左右に出てからの動き出しが多く、中盤の広大なスペースをドリブルで突破されるシーンが目立っています。9分のクロスをボックス右でクリアしようとしたマズラウィは、ウナイ・ゴメスに奪われてしまいました。

ニアに出た折り返しを受けたベレンゲルはフリーでしたが、右足のコントロールショットはクロスバーの上。マンチェスター・ユナイテッドのビルドアップはぎこちなく、最終ラインは苦しくなって蹴り出したボールを奪われています。13分のウガルテの浮き球でホイルンドがラインの裏に出るも、飛び出したGKアギレサバラがクリアしました。

17分に左からカウンターを仕掛けたのはドルグ。中央に出たWBが右のホイルンドにパスを通すと、打ち切れなかったストライカーの落としに走り込んだブルーノは、右足のシュートをルイス・デ・ガラレタにブロックされました。23分にブルーノの縦のスルーパスでボックス左に出たドルグは、ゴロサベルと絡んで転倒しますが、ジャッジはノーファールです。

アウェイチームが先制したのは31分。ロングフィードをカットしたマグワイアが、レニー・ヨロに出したパスがずれてしまい、ジャロに拾われました。右足のロングシュートは、レニー・ヨロがブロック。しかしこぼれ球を拾ったヤウレギサルが右隅に放った2発めは、オナナが弾き切れずサイドネットに突き刺さりました。

0-1となった36分、ウガルテが中央から上がってカウンターが発動。ボックス右でパスをもらったガルナチョが中央に転がすと、ドルグのシュートはイェライ・アルバレスの足に当たりました。ウガルテのパスカットからホイルンド、ドルグとつながった43分のカウンターは、CBの間を通した絶品スルーパスでガルナチョがアギレサバラと1対1になりました。

右に持ってGKを抜いていれば、無人のゴールに決めるだけになっていたはずです。左に浮かしたチップキックは、蹴った瞬間アウトとわかる残念なフィニッシュでした。前半は0‐1。次のゴールが勝負を決めるターニングポイントとなりそうです。後半のビルバオは、よくいえば直線的でスピーディー。悪くいえば、縦を急ぎすぎたアタックが目立ちました。

3バックのリンデロフ、マグワイア、レニー・ヨロと左のドルグは、ラインの裏を狙うボールにうまく対応しており、60分までの3本のシュートはすべてブロックしています。ルーベン・アモリム監督が動いたのは、64分。ガルナチョ、ウガルテ、マズラウィが下がり、メイソン・マウント、ルーク・ショー、アマド・ディアロが入っています。

世界を変えるゴールが決まったのは、72分でした。ドリブルでボックス左に入ったレニー・ヨロがメイソン・マウントに預けたとき、リターンをもらってクロスというイメージだったはずです。しかし右足のヒールで中に引いた7番のトラップには、振り向いて打つという意志が込められていました。右隅に飛んだ一撃は、GKの指先を抜けてネットへ。これで、決まりでしょう。

ラ・リーガで最少の26失点の堅守は、これで切れてしまったようです。80分の右からのFKをブルーノがニアに入れると、カゼミーロが背中に当ててコースを変え、ついに逆転。リヨンとのホームゲームで3アシストのベテランは、ビルバオとの2試合で連続ゴールと絶好調です。アモリム監督はここでカゼミーロとリンデロフを下げ、ハリー・アマスとメイヌーを入れています。

85分に右から上がったレニー・ヨロは、外にいたドルグにパス。さらに外にまわったアマド・ディアロは、ワンタッチでゴールライン際に出ると、速いグラウンダーを通しました。イェライ・アルバレスの股間を抜けたボールを、無人のゴールにプッシュしたのはホイルンド。スタッフからスマホを渡されたアマド・ディアロは、チームメイトを入れてセルフィーを撮っています。

3-1となった91分、左サイドからロングフィードを前線に送ったのはハリー・アマス。ホイルンドの前に出たGKは、ハーフライン付近にいたメイソン・マウントに低いボールをカットされてしまいました。左足の超ロングシュートがウナイ・ヌネスの頭上を越えた瞬間、ホイルンドはガッツポーズ。ルーベン・アモリム監督が、これほど喜んでいるのを見るのは初めてです。

終盤の20分で4発ゲットのマンチェスター・ユナイテッドが、トータル7-1でファイナル進出。ノルウェーに出かけたスパーズもダブルを決めたようで、サン・マメスの一戦は「プレミアリーグの15位と16位がCL出場権を争う敗者復活スペシャル」となりました。欧州の3つの大会で唯一の無敗、しかし今季のスパーズ戦は3戦全敗。やはり彼らは「最も当たりたくないチーム」です。

厳しい戦いになりそうですが、リヨン戦で114分まで2‐4という絶体絶命のピンチをクリアしたチームを信じましょう。カゼミーロ、ブルーノ・フェルナンデス、ドルグ、アマド・ディアロ、ホイルンド、ウガルテ、レニー・ヨロ、マグワイア、そしてメイソン・マウント…ELの14戦で35発は大会最多ゴール。われわれに必要なのは、自信です。何が起ころうとも、最終決戦を存分に楽しみたいと思います。マンチェスター・ユナイテッド、素晴らしい！