偏愛的プレミアリーグ見聞録

プレミアリーグ36節、アンフィールドのリヴァプールVSアーセナルは、開始3分の左からのFKでオフサイドトラップをかいくぐったサカのボレーが決まっていたら、違う結果になっていたかもしれません。ラインの周辺にいたガナーズの4人を置き去りにしようとした6枚が一気に上がると、ウーデゴーアが蹴るタイミングを見極めたサカは減速し、巧みに裏を取りました。

ボールがファーポストの脇を抜けたのを見て、天を仰いだ7番は笑みを浮かべています。今日は勝てると信じていたのでしょう。しかし前半のアーセナルは、不安定でした。5分にカーティス・ジョーンズのロングフィードをカットしたサリバが不用意なタッチをルイス・ディアスに奪われ、8分には左から上がったカーティス・ジョーンズの絶妙なアーリークロスがサラーに通りました。

ルイス＝スケリーとキヴィオルを引き付けたレフティがゴール前に転がし、走り込んだルイス・ディアスがワントラップで右足を振り抜いた瞬間、グーナーの大半は目をつぶったのではないでしょうか。ぎりぎりまでボールを見ていたラヤが、足に当てるビッグセーブ。ショボスライが左のガクポを走らせた12分のカウンターも、3対3のピンチでした。

「90秒の衝撃」の始まりは、19分のガクポのスプリントでした。ロバートソンのロングフィードでベン・ホワイトの背後に出たアタッカーは、ラストパスをサラーに通せずクリアされますが、カーティス・ジョーンズの素早いスローインからロバートソンが左サイドを突破すると、サリバの後ろでフリーになりました。至近距離からのヘッダーに、ラヤはノーチャンスです。

1分後、トーマスの縦パスをファン・ダイクがカットし、ガクポが右サイドのサラーに展開すると、キヴィオルの裏でトラップしたショボスライが中央に流しました。ルイス・ディアスのスライディングシュートが決まって2‐0。この瞬間、アーセナルは負けると思いました。今季の公式戦で3失点以上が1度もない堅守のチームが、ついに崩壊する日が来たのかもしれない…。

24分、サラーの斜めのパスをボックス右で受けたルイス・ディアスが、カーティス・ジョーンズに落とすと、左隅を狙った決定的なシュートはラヤが指先で触るビッグセーブ。前半のポゼッションが40％を切っていたリヴァプールは速攻が冴え渡り、オンターゲット4対0とガナーズを圧倒しました。

アルテタ監督は、ハーフタイムに檄を飛ばしたのでしょうか。デクラン・ライスを欠いたチームは、自分たちの戦い方を思い出したようです。47分、ウーデゴーアのパスを左サイドで受けたのはトロサール。マルティネッリとポジションをスイッチしたのか…と思いながらクロスが上がるのを見ていると、11番の巧みなヘディングが右のサイドネットに収まりました。

2-1となり、なおも攻めるアーセナル。54分にサカの外をまわったベン・ホワイトは、ドリブルでボックスに入ってロバートソンを縦にかわすと、アリソンを慌てさせるきわどいシュートを放ちました。61分、トロサールが左からのFKを中に入れると、こぼれ球を直接叩いたマルティネッリの左足シュートは、アリソンがキャッチ。スロット監督が動いたのは、66分です。

マック・アリスター、ダルウィン・ヌニェスとともに、アレクサンダー＝アーノルドがピッチへ。アンフィールドは、ブーイングと拍手が混じり合っています。同点ゴールは70分。ウーデゴーアの強烈なミドルにアリソンが触ってポストを叩くと、詰めたミケル・メリノのダイビングヘッドが無人のゴールに決まりました。

負傷したトロサールとベン・ホワイトが78分に下がり、ティアニーとカラフィオーリがピッチへ。1分後、ラヤの危険なパスを受けたミケル・メリノはボールを奪われ、中に斬り込んできたショボスライをスライディングで削って2枚めのイエローをもらってしまいました。アンフィールドで10人になったら、守備的に戦わざるを得ません。

アーセナルのラストチャンスは95分。エリオットのミスパスをカットしたウーデゴーアが、ボックス手前に持ち込んで右隅を狙うと、ボールはポストすれすれを抜けていきました。マック・アリスターのCKをファン・ダイクが頭で合わせ、ラヤが弾いたボールをロバートソンがプッシュした劇的な決勝ゴールは、ルイス＝スケリーを倒したコナテのファールで取り消されたようです。

カイ・ハヴェルツがリタイアしてからのプレミアリーグは、4勝6分2敗。ガブリエウを欠いてからは、1勝4分1敗。レアル・マドリード戦のダブルがあまりにも輝かしく、国内の停滞はさほど話題になっていなかったのですが、サリバとラヤのパスミスやタッチミスが増えたチームは、今季公式戦で3連敗（しかもノーゴール）のニューカッスルに敗れれば、3位に転落します。

CLシフトの副作用か、負傷者が絶えない状況のなかで心身の疲労が蓄積したのか。厳しいシーズンでしたが、アンフィールドでのドローにより、ビッグ6との対戦は748日連続無敗となりました。プレミアリーグでもチャンピオンズリーグでも、優勝をめざせるポテンシャルがあるのは間違いありません。残り2試合を、来季につながるゲームにしていただければと思います。