2025.05.15 リヴァプールの話題
2025年5月11日、アンフィールド。アレクサンダー=アーノルドに向けられたブーイングについて。

ガクポとハイタッチしたマック・アリスターが持ち場に向かうまでは、普段通りのアンフィールド。カーティス・ジョーンズが66番とハグを交わした瞬間、その音はひときわ大きくなりました。拍手を呑み込むようにうなるブーイング。右サイドで奮闘したブラッドリーは、こんなノイズを聞きながらベンチに下がるのか…。
「リヴァプールのキャプテンになるのが夢だ。スティーヴン・ジェラードのように」。このクラブで20年めを迎えたアレクサンダー=アーノルドの退団を告げるメッセージを見て、怒りや悲嘆の声を挙げるサポーターの気持ちは理解します。しかしここはアンフィールドで、ライバルとの激戦が繰り広げられている最中です。
彼がマルティネッリの脇に走り寄ってからも、拍手とブーイングが聞こえています。スタンドには「TAA VERY MUCH YNWA」と書かれたバナーを掲げるサポーターもいます。現実感のない空間、拭えない違和感。スタンドは真っ二つに分かれているのか。非難のノイズは少数派なのか。試合が再開されてからのチャントは、赤いシャツを後押しするいつもの爆音でした。
サラーのプレスを受けたキヴィオルが、引いてきたマルティネッリに速い縦パスを通したのは69分。アレクサンダー=アーノルドが間合いを詰めた瞬間、かすかにさっきの音が聞こえた気がしました。ラインの裏に走った11番を狙ったウーデゴーアのスルーパスは、アリソンがキャッチ。守護神が右に開いたSBにボールを預けると、今度は大音量のブーイングが鳴り響きました。
ここで、この状況で聞きたくなかった。偽らざる思いです。
サラーに預け、リターンをもらうと再度ブーイング。脇でパスを受けたフラーフェンベルフのトラップミスをさらったトーマスが右に展開すると、サカとのパス交換からウーデゴーアが左足を振り抜き、アリソンが弾いたボールがポストに当たってゴール前に落下しました。ダイビングヘッドで押し込んだのは、ミケル・メリノ。3枚代えから、4分しか経っていません。
2-2のドローでタイムアップとなった後、ブーイングを制止しようとしたサポーターがいたことを知って、少しほっとしました。ピッチにいた11人にとって、難しい時間だったと思います。「今日は彼にとって、このシャツで戦う最後のアンフィールドになるかもしれない」と書き始めていた私の手は止まりました。
「逃げた」という表現が適切なのかもしれません。試合が終わってずいぶん時間が経ってから、アーセナル目線のレポートが仕上がりました。あの4分については、聞こえてきた音に短く触れることしかできませんでした。サポーターのみなさんが彼に抱く無念、諦念、怒り、感謝…それらの感情については語るべきではないでしょう。
私は、その外側でチームをリスペクトしているだけのライトなファンです。国内と欧州を制したユルゲン・クロップ監督のチームに魅了され、在任中の試合はすべて観ています。あの頃の選手たちが大好きでした。そのひとりが今、ここを離れようとしている…そんななかで、ましてやアンフィールドという素晴らしい場所で、他の選手まで動揺させる低い音を聞きたくなかっただけです。
現地メディアの記事を通じて、情熱的なサポーターやあの場にいた選手たち、クラブOBの言葉に触れ、2-2の激闘をもう一度見てみようというポジティブな気分が戻ってきました。ロバートソンのクロスとガクポのヘッド、ショボスライのトラップ&ラストパスとルイス・ディアスのスプリントはいずれも素晴らしいプレイでした。戦いを終えて、難しいインタビューに応じた彼らに、感謝しています。
「ブーイングは行き過ぎだった。彼の最後のパフォーマンスになる可能性があった。リヴァプールにはサーカスは必要ない。トレントに不満があるなら、コナー・ブラッドリーやスティーヴン・ジェラードの名前を叫べばいい。選手にブーイングすれば、リヴァプールのサポーターは全国的な批判を招くことになる」(ジェイミー・キャラガー/スカイスポーツ)
「トレントにとって、簡単な決断ではなかったはずだ。当然だろう。それでも彼は決断した。友人がブーイングを受けるのを見ているのは気持ちいいことではない。しかし、人々にどう振る舞うかを指図することもできない。この気持ちは言葉にできない。彼をとても誇りに思っている。選手として、友人として愛している。このゲームにおける最愛の友人として、欠かせない存在だった」(アンディ・ロバートソン/スカイスポーツ)
「彼自身と家族のために下した決断について、他人がどう感じるかを決めることはできない。リアクションは起こった。彼はそれに対処しなければならない。私たちチームも、対応を強いられる。彼はおそらく、このような事態を予想していただろう。あと2試合で、われわれは別々の道を進むことになる。そして彼は、どこかにいく」(ヴィルジル・ファン・ダイク/テレグラフ)
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