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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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ハーランド沈黙、マルムシュPK失敗!エゼの1発を守り抜いたクリスタル・パレス、FAカップ初優勝!

クリスタル・パレスが勝てば初優勝。3年連続で決勝進出のマン・シティが勝てば8度めのトロフィーで、負ければペップの初年度以来の無冠となります。2024年2月にロイ・ホジソンの後を継いだオリヴァー・グラスナー監督は、2023-24シーズンをクラブ史上最高のプレミアリーグ10位で終えています。初のタイトルを獲得すれば、レジェンドとして銅像が建つのではないでしょうか。

水色、ブルー、レッドのフラッグが乱舞する聖地ウェンブリー。クリスタル・パレスは直近の公式戦4試合は1失点で、百戦錬磨の強豪といえども先制されたらやっかいです。プレミアリーグ35節のウルヴス戦が1-0の辛勝だったマン・シティは、前節は最下位サウサンプトンにまさかのドロー。ペップが攻撃的な布陣を選んだのは、失敗を繰り返したくなかったからでしょう。

ハーランドの後ろにマルムシュ、左右にジェレミー・ドクとサヴィーニョ、2センターはデブライネとベルナルド・シウヴァ。エティハドのプレミアリーグ32節でグラスナー監督に突き付けた警告を、今こそやるぞと宣言するかのような用兵です。エゼとクリス・リチャーズに決められて0-2とリードされながら、5発ゲットで圧勝したゲームの後、ペップは敵将にこう囁いたそうです。

「このシステムを再度、使うことはできない。なぜなら、われわれが勝つからだ」。自陣にベタ引きするなと脅されたオーストリア人監督は、ウェンブリーでも10人でスペースを埋めろと指示したのでしょう。マテタの左右にエゼとイスマイラ・サール、中盤センターは鎌田大地とウォートン。タイリック・ミッチェルとムニョスはウインガーをケアしています。

3‐4‐3というより5-4‐1。キックオフから6分で、ペップの戦術選択は妥当と証明されるような決定機が生まれました。サヴィーニョに縦のスルーパスを出したデブライネがリターンをもらい、ファーに危険なクロスを入れると、ハーランドのジャンピングボレーがGKの脇を襲いました。ビッグセーブでCKに逃れたディーン・ヘンダーソンは、その後のピンチも続々としのいでいます。

12分のCKをフリーで合わせたグヴァルディオルのヘッドも、左に反応してセーブ。クリスタル・パレスが先制したのは16分でした。右サイドのクリス・リチャーズが、前線のマテタにロングフィード。鎌田大地に落としたストライカーはダイレクトのリターンを受け、右からオーバーラップしたムニョスに展開しました。

エティハドでも絶妙なグラウンダーをエゼに決めさせたWBは、今回のクロスもパーフェクト。中央にスプリントしたエゼの右足のボレーが、オルテガの脇を抜けました。鎌田のパスが通った瞬間は3対6で人数は揃っていたのですが、エゼに対するアカンジのチェックが緩くなってしまいました。リードされたマン・シティは、当然のようにハーフコートマッチを続けています。

23分のグヴァルディオルのロングフィードでハーランドがラインの裏に抜けると、飛び出したディーン・ヘンダーソンが手で触った位置は明らかにボックスの外でした。決定機阻止によるレッドを審議したVARは、ボールはゴールに向かっていないので決定機ではないとジャッジ。ハンド見逃しについてはVARの対象外で、誤審であろうと遡ってFKにはなりません。

マン・シティの前半最大のチャンスは32分。ドリブルでボックス右を縦に突破したベルナルド・シウヴァがタイリック・ミッチェルに引っかけられ、ジャッジはPKです。ボールを持っていたハーランドが、マルムシュに譲ったのはなぜでしょうか。右と読んでセーブしたディーン・ヘンダーソンは、いち早く詰めてきたハーランドのワンタッチを懐に収めました。

43分に左からカットインしたドクの決定的な一撃も、守護神が左腕を伸ばしてビッグセーブ。クリアのこぼれ球を叩いたデブライネは、枠に入れられません。前半は1-0でイーグルスがリード。マン・シティのポゼッションは80%と一方的な展開でしたが、4つのチャンスはすべてGKに阻まれています。後半もマン・シティが押しまくったのですが…。

相変わらず引きこもっているクリスタル・パレスは、前半は「奪ったらマテタへ」というシンプルな約束事があったのですが、5-2-3-0と化した後半は「とにかくクリア」を徹底しています。これで40分も守り続けられるのか?56分に中に斬り込んだドクが、ボックス左にスルーパスを転がすと、ベルナルド・シウヴァのクロスは鎌田大地がブロックしました。

遠目から打てるフォーデンを、早めに入れたほうがいいのではないかと思いながら見ていたのですが、ペップが動いたのは残り15分を切ってからでした。マルムシュとサヴィーニョが下がり、フォーデンと19歳のエチェヴェリ。ジャック・グリーリッシュとマテウス・ヌニェスは、打開策にならないと見做されたようです。

82分、自陣左サイドでボールを奪取したドクからデブライネ、ベルナルド・シウヴァとつながってカウンターが発動。ハーランドが右のフォーデンに渡し、エチェヴェリとのパス交換から47番がデブライネに預けると、柔らかいスルーパスでゴールの右に出たエチェヴェリはフリーです。決まりかと思った瞬間、コースが甘かった右足のシュートは好調の守護神が手に当てました。

クリスタル・パレスの過去2回のファイナルはいずれもマンチェスター・ユナイテッドで、2試合とも先制しながら追いつかれています。1989-90シーズンは3-3のドローの後、リプレイで0-1。2015-16シーズンは、78分のパンチョンの先制ゴールから3分でイーブンとなり、延長戦でリンガードに決められました。追加タイムは10分。守り切れば快挙です。

96分に左で仕掛けたドクのグラウンダーをクリス・リチャーズがカットすると、こぼれ球をプッシュしたエチェベリの一撃はGKがまたもセーブ。後半だけで15本を浴びせたマン・シティですが、オンターゲットはティーンエイジャーの2本のみです。タイムアップの笛を待つ赤と青のサポーターのチャントは感動的で、シュートコースを塞ぎ続ける選手たちは最後まで冷静でした。

猛攻を封じたクリスタル・パレスがFAカップ初優勝。枠内に2本しか打てなかったハーランドは、入団以来のトーナメントのファイナルとコミュニティ・シールド、UEFAスーパーカップで8試合連続ゴール&アシストゼロです。決定機を逃し続けたというべきか、エゼとディーン・ヘンダーソンを称えるべきか。前半のPKと終盤のエチェヴェリのシュートは、痛恨でした。

マンチェスター・ユナイテッドのサポーターとしては、ディーン・ヘンダーソンの笑顔に胸が熱くなり、日本代表のサポーターとしてはトロフィーを掲げる鎌田大地にテンションが上がります。守備力UPに貢献したラクロアと、速攻の精度を高めたイスマイラ・サールもさることながら、就任以来の公式戦で28勝16分15敗のオリヴァー・グラスナー監督こそが最高の補強でした。

「正直いって、信じられない。10回やっても勝てるのは1回だけだ。初めて敵陣に入った時に決めて、その後は体を張って守り抜いた。素晴らしいGK、メンタリティ、チームワークがあったからこそ、クリスタル・パレスにとって初めてのトロフィーを手に入れられたんだ。チームとスタッフ全員を誇りに思う。おめでとう。彼らの功績は称賛に値する」(オリヴァー・グラスナー)

セインツ戦に続いて沈黙のマン・シティは、中2日のボーンマス戦を落とすと、TOP5から転落する可能性が高まります。イラオラ監督のチームは、今季プレミアリーグのアウェイで7勝7分4敗。ビッグ6には3勝1分1敗で、勝ち切ったのはリヴァプールだけです。気持ちを切り替え、必勝の一戦に集中しなければなりません。ハーランド、マルムシュ、ドク…次こそ!(オリヴァー・グラスナー 写真著作者/Sven Mandel)


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