2025.05.24 プレミアリーグ観戦記
ニューカッスル、クリスタル・パレス、スパーズ…悲願のタイトルを獲得した指揮官たちの共通項。

ニューカッスルのタイトル獲得は、1969年のインターシティーズ・フェアーズカップ以来、56年ぶり。スパーズが最後にトロフィーを掲げたのは2007-08シーズンのカーリングカップで、17年ぶりの快挙です。クリスタル・パレスの過去2回のFAカップファイナルは、いずれもマンチェスター・ユナイテッドに敗れており、クラブ創設から164年めの初優勝でした。
最も印象に残っているのは、イーグルスが勝った瞬間のスタンドの光景です。絶叫する若いサポーターのなかで、ブルーとレッドのストライプのシャツを纏った老夫婦たちが抱き合って涙しており、「こんな気分を味わえるなんて」「優勝を知らずに死ぬのだと思っていた」「自分たちは無理でも、息子は必ず見られると信じていた」といった声に心を揺さぶられました。
高らかにチャントを歌い上げるサポーターとともに、息を呑んで静かにピッチを見つめる人々も、プレミアリーグで戦い続けるクラブにとって大事な存在なのだとあらためて感じたシーンでした。2025-26シーズンは、欧州で戦う10チームのうち5つがビッグ6以外という未体験の世界に突入する可能性があります。
エディ・ハウ、オリヴァー・グラスナー、アンジェ・ポステコグルー。スタジアムの周辺に銅像が建つであろう3人の指揮官には、共通項が存在します。最大のポイントは、彼らのコンセプトが浸透しており、攻守ともに戦術の徹底度が高かったこと。チームとして一体感があり、タイトル獲得をめざすモチベーションが上がり切っていたのも、勝因のひとつといえるでしょう。
誰が見ても納得のベストメンバーを揃え、迷いなき戦いを貫徹できたのも指揮官の手柄です。スロット監督がガクポを投入したのは、2点のビハインドを背負ってから。今季のアカンジの右SB起用は、ホームで敗れたレアル・マドリード戦しかなく、苦肉の策といわざるを得ません。ガルナチョを起用し続けていたアモリムは、メイソン・マウントの抜擢が不発に終わっています。
3チームとも、リアリティに徹して堅守速攻をチョイス。ニューカッスルはポゼッション34%ながら、シュート17対7とプレミアリーグ王者を圧倒しました。ボトマンとルイス・ホールの穴を埋めたダン・バーンとリヴラメントは、2人合わせてデュエル11勝2敗で、サラーのサイドを封じています。アーノルドとブラッドリーのいずれかがいれば、違う結果で終われたのかもしれません。
マン・シティと対峙したクリスタル・パレスは、5-2で敗れたプレミアリーグとほぼ同じメンバーでキックオフを迎えています。唯一の違いは、エティハドではサスペンデッドだったマーク・グエイの復帰でしたが、61分の負傷でレルマが投入され、まったく同じ顔ぶれになりました。ポゼッションは22%。マテタをターゲットとしたカウンターからのエゼの1発は、狙い通りでした。
アンジェボールを封印して守備に徹したスパーズは、ポゼッション27%でシュートはたったの3本。唯一のオンターゲットがブレナン・ジョンソンの決勝ゴールで、相手に持たせて中央を締めた後半はシュートゼロでした。自信も闘志も感じられなかったマンチェスター・ユナイテッドは、マグワイアを前線に上げた12分でクロスを合わせたのは1回のみに留まっています。
来季はいよいよ、欧州へ。クラブに歓喜をもたらした指揮官たちから見える景色は、三者三様です。2年ぶりのチャンピオンズリーグ復帰を目前にしているエディ・ハウのチームは、イサク、ブルーノ・ギマランイス、アンソニー・ゴードン、トナーリ、ボトマンといった主力が全員残留する見通しで、勝負のシーズンとなりそうです。
クリスタル・パレスのヨーロッパリーグ出場は、同一オーナーに関する規則で調整が入る可能性があります。オリンピック・リヨンがリーグアンで6位に入り、パリがクープ・ドゥ・フランスを制覇するとイーグル・フットボール傘下のクラブがELで2チームとなるので、グラスナーのチームはカンファレンスリーグにまわることになるかもしれません。
どちらで戦うにしても、主力が残れば大いに期待できるのですが、守備の軸となるマーク・グエイはビッグクラブに向かうといわれています。初めての欧州チャレンジでも、安く仕入れて高く売りさばくというビジネスモデルが変わるわけではありません。CLに復帰するスパーズは、ポステコグルーが残るかどうかで、夏のマーケットでの動き方が変わりそうです。
アントニオ・コンテ、モウリーニョ、ポチェッティーノ、ヴィラス=ボアスといったタイトルホルダーたちが達成できなかった偉業を成した指揮官は、最終ラインの人員不足という経営ボードのエラーをなかったことにした功労者ともいえます。ベリヴァル、ウドジェ、オドベール、アーチー・グレイなどU-22が7人もいるチームは、数年後に開花する可能性を秘めています。
アンジェボール継続で、補強推進なら期待大。ワールドクラスを揃えたがるビッグネームを招聘したら、上位に定着できないクラブとして語られ続けそうです。スパーズは先行き不透明ですが、エディ・ハウとグラスナーは楽しみですね。特に注目しているのは、「プレミアリーグで29勝16分15敗のグラスナーが、夏のマーケットでどれだけバックアップを得られるか」です。
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