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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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戦力不足、負傷者多発、柔軟性…ヨーロッパリーグを制して解任されたポステコグルーの限界。

ビルバオの歓喜から16日。スパーズのファイナルアンサーは、解任でした。アンジェ・ポステコグルー監督は、3年契約のラストイヤーを残してクラブを去ることになりました。プレミアリーグ2024-25シーズンの戦績が、その理由を明確に示しています。11勝5分22敗で17位。ヨーロッパリーグ制覇という快挙に、ボードメンバーを説得する力はなかったようです。

「経営ボードは満場一致で、変更することが最善であると結論付けた」。クラブのステートメントを読むと、「66試合で78ポイント」という具体的な数字が目を引きます。これについては、「アンジェボールがうまくいっていたのは、プレミアリーグで8勝2分というロケットスタートを決めた最初の3ヵ月だけだった」と読み取るのが妥当でしょう。

ターニングポイントとなったのは2023年11月、チェルシーとのロンドンダービー。ロメロとウドジェがレッドカードをもらい、9人になってからもハイラインを捨てなかったチームは、75分からニコラス・ジャクソンにハットトリックを許して惨敗しました。その後の66試合は23勝9分34敗で、78ポイント。2シーズンで降格した6チームを除くと、下から3番目です。

今季の停滞については、ロメロ、ファン・デ・フェン、ウドジェ、ヴィカーリオら最終ラインとゴールマウスの負傷者多発という説明で納得してもらえるでしょう。全日程のうち、75%以上の出場はペドロ・ポロのみ。60%にラインを落としても、6人だけです。CBが足りないのはわかっていたのに、戦力強化を図らなかった経営ボードに責任の一端があるのは間違いありません。

しかし長期離脱が続出したというエクスキューズは、初年度の後半戦の不振には転用できないでしょう。ニューカッスル、アーセナル、チェルシー、リヴァプール、マン・シティに15失点を喫して敗れたラスト7試合は、次のシーズンを迎える前に戦術とスカッドの見直しが必要と伝えるアラームだったのだと思われます。

「アスレティック」の取材に応じたプレミアリーグのある監督が、スパーズの弱点を問われてこう語っています。「彼らは前線に多くの選手を配し、ハイプレスから多くのゴールを決めている。しかし左右のSBが上がると背後に大きなスペースが空くので、そこからつぶすことができる」。徹底度は高いが柔軟性は低いアンジェボールが、欠陥を修復できなかったのも事実です。

昨シーズンの会心の勝利を挙げろといわれれば、マンチェスターに乗り込んだ2試合は外せません。0‐3で勝ったオールド・トラフォードでは119.8kmを走破し、ペップを0‐4で撃破したエティハドでは117.7km。攻めてくるチームには運動量で対抗し、プレスとショートカウンターを繰り出せる一方で、堅守速攻のチームと対峙すると攻守ともに綻びが生じるチームでした。

アントニオ・コンテが解任されたときは4位、ヌーノ・エスピリト・サントは9位、ジョゼ・モウリーニョは7位、ポチェッティーノは14位。ポステコグルーが17位というとんでもないポジションに沈んだのに、シーズン中に追い出されなかったのは、以前の監督たちと違って選手とサポーターに支持されていたため、経営ボードが非難の声を浴びるのを恐れたからでしょう。

シーズンが終わるまで解任を避けた経営ボードは、ヨーロッパリーグを制してCL出場権を手に入れた今、最高の判断をしたといわざるをえません。サン・マメスのファイナルにおいては、選手たちとの信頼関係をベースに最大限の力を引き出せる最高の監督だった。しかし国内では、戦術を研究されて限界を露呈した最低の監督に堕していた…。

後任のファーストチョイスは、ブレントフォードのトーマス・フランクと報じられています。選手たちの能力と適性を見極め、4-3-3、4-2-3-1、3-5-2を使い分ける柔軟性が評価されているのでしょう。スパーズの監督は、若い選手の育成が得意なら魅力的なポジションですが、就任する前に補強予算を確認しておくべきです。過去の監督たちの苦闘をムダにしないために。


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