FAがミハイロ・ムドリクをドーピング規定違反で告発。チェルシーはどうする?

シャフタール・ドネツクからチェルシーに移籍したのは、2023年1月15日。8年半の超長期契約で、移籍金は最大8850万ポンドと報じられました。グレアム・ポッター、ブルーノ・サルトール、フランク・ランパードと監督が目まぐるしく変わった最初の半年は、17試合ノーゴール。その後は、ポチェッティーノのコンセプトにもマレスカ戦術にもフィットしませんでした。
公式戦73試合10ゴール9アシストは、高額の移籍金に見合うパフォーマンスとはいえません。最後の試合は、2024年11月28日に行われたカンファレンスリーグのハイデンハイム戦。2024-25シーズンのプレミアリーグでノーゴールだった快足ウインガーは、ヨーロッパの大会では好調で、3試合連続となるゴールを決めた一戦でした。
ムドリクの尿サンプルから検出された薬物は、メルドニウム。1970年にソ連で開発された心臓病の薬は、筋肉や臓器への血流が妨げられることによって生じる虚血症状を抑えるために開発されたものです。健康なアスリートが使用すると、代謝が促進されて血流が増加し、運動能力が向上します。世界アンチ・ドーピング機関が禁止薬物に指定したのは、2016年1月でした。
この直後、全豪オープンに出場したロシアのテニスプレーヤー、マリア・シャラポワがメルドニウムの使用で出場停止処分を受けました。国際テニス連盟(ITF)の処分は、2年間の出場停止。「薬物の使用は大きな間違いだった」と認めつつ、「新たにリストに入ったのを知らなかった」と語ったシャラポワは故意ではなかったと判断され、ペナルティは15ヵ月に軽減されています。
今回のムドリクも、不合格と知らされた直後に意図的なドーピングではないと訴えています。「とてもショックだ。禁止薬物を故意に使用したり、規則に違反したりしたことは一度もない。チームと連携して原因を調査している。何も悪いことはしていない。すぐにピッチに戻れると信じている」。まるごと4年の空白はないと思われますが、メルドニウムはやっかいです。
イングランドの薬物のペナルティは、ムトゥやリヴァモアのコカインなど、遊んでいた選手が引っ掛かった事例が大半です。大陸を見渡しても、妻に処方された薬をアスピリンと間違えて飲んだオナナや、テストステロンを増加する「DHEA」を誤飲したポグバは、過失と主張できる状況でした。両者ともにスポーツ仲裁裁判所(CAS)に上訴し、出場停止期間を短縮されています。
一方、ムドリクから検出されたメルドニウムは、リストアップされる前に旧東欧のアスリートたちの間で流行っていた薬です。「本人は知らなかった」とはいえても、過失で押し通せるでしょうか。4年間の出場停止を18ヵ月に圧縮したポグバに続き、CASに訴えるのではないかといわれていますが、2年以上ピッチを離れる可能性も否定できません。
処分が確定すれば、チェルシーは契約解除も損害賠償請求もできるものの、6200万ポンドの初期費を投じた選手を手離さないでしょう。2004年にムトゥがコカインでペナルティを受けた際は、7ヵ月の処分の後に損害賠償訴訟で成功しているのですが、ムドリクは長期契約です。出場停止期間のサラリーを大幅に減額して、売却できる権利をキープするものと思われます。
故意であれ過失であれ、偶発的なアクシデントであれ、アンチドーピングレギュレーション違反の責任は選手自身が取ることになります。チェルシーのウインガーには、「出場停止処分を終えたら、ファンを喜ばせるパフォーマンスを見せてほしい」としかいえません。現地メディアの記者は、事の良し悪しを語ることなく、事実と今後の見通しをフラットに伝えています。
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