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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

前代未聞の電撃移籍から4件9ヵ月。トーマス・パーティーが契約満了でついに退団。

トーマス・パーティーは、忘れえぬ選手のひとりです。アトレティコ・マドリードからアーセナルに居場所を変えたのは2020年10月。27歳だったアンカーは、9年を過ごしたクラブの冷遇に不満を募らせ、一切を悟らせずにノースロンドンに渡りました。ラ・リーガからの通達で、所属選手の退団を知るという前代未聞の電撃移籍。マドリードのファンの激怒を覚悟した決死のダイブでした。

その胸中には、愛と感謝と怒りと絶望が同居していたのでしょう。経緯を知って心を揺さぶられ、「『クラブに知られずに進めると決意した』トーマス・パーティー、アーセナル電撃移籍の舞台裏。」と題したレポートを一気に書き上げました。プレミアリーグデビューは、衝撃の発表から12日後。エティハドのアウェイゲームは1-0の敗戦で、83分に入ったトーマスはイエローをもらっています。

2020-21シーズンのアトレティコ・マドリードはラ・リーガを制覇し、アーセナルは8位でフィニッシュ。納得できるサラリーを得たとしても、キャリアアップとはいえません。太腿、股関節、ハムストリング、足首を次々と痛めた最初の2年は、ストレスが溜まる季節でした。アルテタ監督の下で巻き返しを図っていたアーセナルは、2021-22シーズンもCL出場権を逃しました。

ペップのチームに最終盤で逆転された2022-23シーズンは、プレミアリーグ33試合3ゴール。翌シーズンは鼠径部とハムストリングを痛め、リーグ戦の出場は14試合に留まり、夏には放出候補と報じられました。あのタイミングでイタリアに向かっていたら、今のような複雑な感情を抱くことはなかったでしょう。ピークを過ぎたベテランが役割を終えたと評されていたはずです。

プロデビューから12年めとなる2024-25シーズンは、彼にとって忘れられない1年となったのではないでしょうか。公式戦52試合出場はキャリアハイで、4ゴール3アシスト。負傷者が続出する厳しい状況のなかで、中盤のパスワークをコントロールし続けたアンカーは、ガナーズになくてはならない存在であることを証明しました。

3年連続で2位という悔しいシーズンが幕を閉じたときは、これからもここにいるのだと思っていました。マルティン・ズビメンディを獲得できなければ、彼らは握手を交わせたのでしょうか。残留を望んでいると報じられていた32歳のMFは、長い人生と家族のことを考え、決断したのでしょう。嵐のような出会いから5年を経た今、静かな別れが忍び寄っています。

未だに信じられません。なぜ、無冠なのか。ズビメンディに加えて、ノアゴーアを引き入れようとしているチームがトロフィーを獲得したとき、彼のプレイが脳裏をよぎるのでしょう。現地メディアは、ブレントフォードのキャプテンの獲得をポジティブに評価しています。ハードな守備とセットピースでの貢献は、トーマスにはない魅力です。

デクラン・ライスがグラニト・ジャカを思い出にしたように、マルティン・ズビメンディはトーマス・パーティーをクラブの履歴のひとつにするのでしょう。あと1年あれば…という言葉を吞み込んで、アーセナルが進化をめざすプロセスのなかで、中盤センターの刷新が必要になったのだと自分に言い聞かせるしかありません。


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