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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

経営は健全、戦力は不足…「ダニエル・レヴィの解任でスパーズは強くなる」といえる理由。

2025年1月にデロイトがリリースした「フットボールマネーリーグ」の収益ランキングを見ると、2023-2024シーズンに5億3400万ポンドの売上を計上したトッテナム・ホットスパーは、全体の9位に入っています。マンチェスター・シティはレアル・マドリードに次ぐ2位で、マンチェスター・ユナイテッドは4位。アーセナルが7位、リヴァプールは8位で、スパーズはその下です。

チェルシーは4億7340万ポンドで10位。この数字と順位を見て、驚いた人もいるのではないでしょうか。「ブルーズは、スパーズより下なのか」と。最大の理由は、スタンフォード・ブリッジとトッテナム・ホットスパー・スタジアムのキャパシティの差です。スパーズのマッチデー収入は1億690万ポンド。対するチェルシーは8090万ポンドと、大きく引き離されています。

なぜ、こんな話を始めたのかというと、ルイスファミリーに解任されたダニエル・レヴィ会長が遺したものと、スパーズの今後に興味が湧いたからです。2001年2月に、38歳で経営の実権を握った投資銀行出身のビジネスマンは、プレミアリーグ史上トップクラスの経営者だったと評すべきでしょう。注目の数字は、デロイトのランキングに記載されているコマーシャル収入です。

スパーズの2億5780万ポンドは8位で、アーセナルとチェルシーを上回っています。過去20年でプレミアリーグ制覇4回、チャンピオンズリーグ2回、クラブワールドカップ2回、ELとECLを計3回勝っているチェルシーに対して、ヨーロッパリーグとカーリングカップしか獲っていないスパーズがスポンサーからの売上で勝っているのです。

逆にいえば、ビジネスでこれほどの成果を挙げているのに、フットボールではライバルの足元にも及ばないといえます。リヴァプールやアーセナルのような長期的な強化を継続する体制を構築できず、チェルシーのようなユース強化やマーケットでの巧みな売買もできず、ダニエル・レヴィによる利益重視のクラブ運営で、そこそこの結果に留まっていたのが今までのスパーズです。

プレミアリーグで17位に沈んだ昨シーズン、サポーターたちが会長の退任を求めたのは、野心が感じられなかったからでしょう。1年前の補強は、ソランケ以外の4人はティーンエイジャー。エリック・ダイアー、エメルソン・ロイヤル、タンガンガ、ロドン、セセニョンを放出した最終ラインにひとりも足さなかったのは、明らかに失敗でした。

オーナーのルイスファミリーがギブ・リバー・グループにクラブ経営の実情の調査を依頼し、経営ボードのメンバーを刷新したのも「フットボールで成功していない状況に疑念を抱いたから」でした。トッテナム・ホットスパー・スタジアムがオープンした2019年から、年間のコマーシャル収入は1億ポンドも増えたのに、プレミアリーグでTOP4に食い込んだのは1回だけです。

現在、スパーズの収入に対する人件費比率は42%で、プレミアリーグ最少です。はっきり、いいましょう。今やスパーズでダニエル・レヴィができることはなくなり、ダニエル・レヴィができないことが必要なフェーズに突入したのです。2022年にジョー・ルイスの後を継ぎ、経営トップの刷新を決断したヴィヴィアンとチャールズは、最高の仕事をしたといわれるかもしれません。

新スタジアムの完成から6年後は遅すぎるという不満もありそうですが、ヨーロッパリーグ制覇でCLの出場権を手にしたことによって、いい節目といえるようになったのではないでしょうか。ピーター・チャリントン会長とヴィナイ・ベンカテシャムCEOのミッションはシンプルで、常に優勝を争えるチームを作り、TwitterやInstagramのフォロワー数をライバルに近づけることです。

この夏も「新戦力を手に入れる資金はない」といっていた会長が解任となった今、トランスファーマーケットの最終盤で獲得したシャビ・シモンズとランダル・コロ・ムアニは、新体制が発した力強いメッセージのように思えます。この2年で急激に増えた若手を育てて価値を高め、要所にワールドクラスを配することができれば、悲願のビッグタイトルが見えてくるでしょう。

8月4日に公開された「The Overlap」で、ガリー・ネビルのインタビューを受けたダニエル・レヴィは、既に覚悟していたのでしょうか。「私がここにいなくなったら、功績を認められると確信している」。この言葉には、多くの人々がイエスというでしょう。「でも、それは過去の話だ」と付け加えながら。


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