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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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5バックにシフト、ハーランドはアウト。ゴール前にバスを停めたペップの判断は適切だったのか?

エミレーツのアーセナルVSマンチェスター・シティは1-1のドロー。最終盤にマルティネッリとヌワネリを続々と投入し、ラスト4分でイーブンに戻したミケル・アルテタ監督は、ペップ・グアルディオラに5試合連続無敗の唯一の指揮官となりました。マン・シティのポゼッション32.8%は、ペップがバルセロナでキャリアをスタートさせてからの601試合で最低の数字です。

「アーセナルは多大なる称賛に値する。時には勝ちたくても勝てないときがある。とてもよかったと思う。とりわけ5人の守備はね。われわれはそういう戦術を想定してチームを作っていないが、これは受け入れなければならない」。試合後のプレスルームで「バスを停めた?」と聞かれたペップは、笑みを浮かべて「10年に1度なら悪くない」と返しています。

開始9分に自陣で3人に囲まれたハーランドが、わずかな隙間を見つけてレインダースにパスを通すと、超絶スプリントでガブリエウとズビメンディをぶっちぎってラストパスを引き出し、右足で完璧なフィニッシュ。リードしたマン・シティはガナーズの反撃を冷静に抑え、0‐1でハーフタイムを迎えました。ポゼッションは67%対33%。しかしシュート数は4対3と拮抗していました。

一方的に押し込まれる時間が長かったものの、20分のショートカウンターや37分のドクの仕掛けはアーセナルの堅牢な最終ラインを慌てさせました。フサノフとニコ・オライリーが守備重視でウインガーを封じ込める戦い方は、成功といえるでしょう。デクラン・ライスとミケル・メリノでは前線を動かせないと気づいたアルテタは、後半の頭から攻撃的な布陣にシフトしました。

負傷したノニ・マドゥエケをブカヨ・サカ、右のインサイドだったミケル・メリノをエゼにチェンジ。新たな10番をトップ下に配する4-2-3-1は、今までになかった強力なBプランです。いや、それにしても…。ペップはなぜ、バスを停めたのでしょうか。「リードした後半は引いてカウンター狙い」は彼らの常套手段ですが、最終ラインの枚数を足すとは思いませんでした。

スイッチを押したのは68分、フォーデンをナタン・アケに代えて5-4-1。これ自体は、プレミアリーグの下位チームならよくある戦い方ですが、昨シーズンまでのペップの引き出しにはなかったはずです。ましてや残り20分は、ヌーノ・エスピーリト・サントやショーン・ダイクでも躊躇する時間帯です。稀代の名称が腹をくくるに至った背景と状況を整理してみましょう。

最初の状況変化は、安定感があったフサノフのリタイア。代わって入ったマテウス・ヌネスは、昨季のマンチェスターダービーや8月のブライトン戦でPKを献上しています。最終盤に三笘薫が仕掛けたカウンターから、グルダに逆転ゴールを喰らったアメックスの一戦は、悪しき残像として刻まれていたのだと思われます。

ブカヨ・サカのコンディションが想像以上に回復していたことも、ペップの思考に影響を与えたのではないかと思われます。48分からのズビメンディ、エゼ、サカ、トロサールの連打は、アルテタの戦術変更が的確だった状況証拠です。以前から守備時の集中力の欠如を指摘されていたフォーデンは、攻撃力を高めたアーセナルに対してリスクと化していると考えたのでしょう。

少し早い時間ではあったものの、5バックへのシフトは、「ペップらしからぬ」という1点に目をつぶれば納得のチョイスといえます。問題は、76分の3枚めのカード。ハーランドをニコ・ゴンザレスは、切り札を投じるタイミングを模索していたアルテタの着火剤になってしまったようです。9番が去った4分後に、ティンバーをマルティネッリという大胆な策が発動されました。

前線でボールを足元に収められるストライカーとドクを残し、イエローカードをもらっていたベルナルド・シウヴァを下げれば、「カウンターから追加点を狙える」「マイボールの時間を増やしてアーセナルのアタックの回数を減らせる」「アルテタの決断のタイミングを遅らせる」という3つの効果を満喫できたのではないでしょうか。

82分に左サイドを突破したドクのシュートが逆サイドに流れてからは、完全なるアーセナルペース。5人になった最終ラインが、サン・マメスでゴールを決めたマルティネッリがどこで何をしたかを意識していれば、痛恨の失点は回避できたのかもしれません。伏線はすでにあったのです。90分に左サイドのサカがラインの裏に浮かしたボールは、11番と競ったグヴァルディオルがクリアしています。

87分に入ったサヴィーニョは、エゼがキープしていたとき、ボールを見ずにゆっくり戻っていました。この時間に投入された自身の存在意義を理解していなかったのでしょう。グヴァルディオルは上がっていたズビメンディを見ており、ナタン・アケは対応が遅れてしまいました。狙いすましたロングフィードがマルティネッリの足元に届き、激痛のループシュート…!

勝利をめざして攻撃に転じたチームは、最前線のターゲットも独力でゴールに迫れるドリブラーも不在でした。まさかの5バックはOK、しかしストライカーは相手のラインを下げる機能としても残すべきだったと思います。11人が揃っていたのにゴール前にこもった驚愕の一戦は、これからもずっと語り継がれるでしょう。新たな戦い方の始まりではなく、「10年に1度」なら。


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