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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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【Tottenham×Chelsea】カイセド無双でxGは0.05…チェルシーに完敗のスパーズは巻き返せるのか?

最終ラインの主軸だったレヴィ・コルウィルを失ったチェルシーは、守備に長けたチームとはいえません。プレミアリーグ9節までで11失点。ウェズレイ・フォファナが復帰しただけで、最終ラインが安定するとは思えません。トッテナム・ホットスパー・スタジアムのシックスポインターは、壮絶な殴り合いになると予想していました。

トーマス・フランクが率いる新生スパーズは、前節までの失点が7つしかなく、5勝2分2敗で3位にいます。過去6シーズンのうち4シーズンはチェルシーがダブルを決めていますが、ハイプレス&ハイラインが空転して4連敗のアンジェボールよりは、うまくやれるはずと期待していました。ところが、いざ始まってみると、チェルシーの強さが際立つ一戦となってしまいました。

キックオフからしばらくは、スパーズのポゼッション。3分にエンソ・フェルナンデスのダイレクトパスを側頭部に喰らったベリヴァルは、足元がふらついており、プレー続行は危険とジャッジされたようです。7分にピッチに入ったのはシャビ・シモンズ。これがきっかけだったかのように、チェルシーがペースをつかみました。

青いシャツのハイプレスを受け、ビルドアップで狭いエリアに追い込まれるシーンが多かったスパーズは、完全にサイドを制圧されてしまいました。象徴的だったのは、20分のゴールキックからガルナチョにシュートを打たれるまでの流れです。ジョアン・ペドロのプレスでサイドに追いやられたダンソの縦パスは、狙っていたカイセドがインターセプトしました。

こぼれ球を拾ったシャビ・シモンズは、トラップミスをリース・ジェームズにさらわれ、エンソ・フェルナンデスが左のガルナチョへ。8番とのパス交換で打てるコースを創ったウインガーのシュートは、ヴィカーリオが左に飛んでキャッチしました。ペドロ・ポロとクドゥス、ジェド・スペンスとシャビ・シモンズの縦のラインには中盤のフォローがなく、分断されるシーンが続きました。

逆にいえば、チェルシーのプレスからの速攻は、カイセド、エンソ・フェルナンデス、リース・ジェームズの運動量と鋭い先読みが大きな役割を果たしていました。25分には、パペ・マタル・サールが自陣バイタルエリアでドリブルをチェックされ、リース・ジェームズがボールを回収。30分には、ペドロ・ポロの強引なフィードをガルナチョにカットされてしまいました。

ボックス右に流れたボールにジョアン・ペドロが先着し、ヴィカーリオと1対1。ニアに打った一撃は、GKがかろうじて足に当てています。さらに34分には、ジェド・スペンスの危険なドリブルにペドロ・ネトとカイセドが次々と襲いかかり、シャビ・シモンズの緩いパスでカイセドに詰められたファン・デ・フェンが苦しいフェイントを引っかけられてしまいました。

ゴール前に突進したカイセドは、ベンタンクールをかわして左にいたジョアン・ペドロにパス。ヴィカーリオの動きを見極めた20番は、空いていた左隅に蹴り込みました。自らのミスで失点を喫したスパーズは、「何もできずに終わった」という言葉がぴったりでした。90分を通じてシュートはたったの3本。32分、前半の追加タイム6分、71分…打ったのはすべてクドゥスです。

チャンスといえるのは、コロ・ムアニからパペ・マタル・サール、クドゥスと右につながった前半終了間際のシーンのみ。左足のダイレクトショットは、ロベルト・サンチェスが右に弾き出しました。ハーフタイムで立て直せなかったスパーズは、後半が始まっても自陣で奪われるシーンが目立ち、セットピースとクドゥス以外に希望を見出せない時間が続きました。

53分にリース・ジェームズがクロスを浮かすと、エンソ・フェルナンデスのヘッドはバーの上にアウト。57分のヴィカーリオのスローは強引で、余裕がないペドロ・ポロがカイセドに奪われ、ガルナチョのグラウンダーが中央のペドロ・ネトに入るきわどいシーンを創られています。60分すぎのスパーズのxG(ゴール期待値)は、「0.01」という信じられない数字でした。

ペドロ・ポロのパス成功率は58%、ジェド・スペンスは67%とそれぞれ低い数字で、サイドの分断とSBの孤立を雄弁に物語っています。トーマス・フランク監督は、交代カードも空回りしてしまいました。60分にロメロとともに入ったリシャルリソンは、ボールタッチがわずか7回。73分に送り出されたブレナン・ジョンソンとオドベールは、2人合わせて7回です。

「カイセド無双」という言葉がぴったりの一戦。リース・ジェームズ、エンソ・フェルナンデス、ククレジャの守備とトランジションも素晴らしく、0-1ながら楽勝といえる展開でした。チェルシーが持ち帰った決定力不足という課題についても、触れておきましょう。93分のカウンターは、右サイドからジョアン・ペドロの足元に通したエステヴァンのパスが絶品でした。

逆サイドから詰めてきたジェド・スペンスをかわした20番が、左にいたバイノー=ギッテンスに優しいラストパス。GKと向き合ったウインガーは、右隅に流し込むだけでよかったのですが、なぜか打ち上げてしまいました。その1分後にも、エステヴァンの縦パスで右に出たエンソ・フェルナンデスが、ゴール前に走り込んだジョアン・ペドロに完璧なグラウンダーを通しています。

前にいるのはヴィカーリオのみ。右隅を狙った一撃はGKが触りやすい高さに飛んでしまい、左腕に当たったボールはポストの外を抜けていきました。ビッグチャンス6回のうち、5回をミスしたチームが試合後に晴れやかな笑顔を見せていたのは、シュート数3対15、オンターゲット1対9という一方的な展開に手応えを感じていたからでしょう。

トッテナム・ホットスパー・スタジアムでは7戦で6敗。またもチェルシーに屈したホームチームは、クラブ史上最悪となる「xG=0.05」を記録してしまいました。タイムアップの笛が鳴る前から、容赦ない大ブーイング。ショッキングな敗戦の後、失点の元凶となったファン・デ・フェンとジェド・スペンスは、声をかけた指揮官を無視してトンネルに向かっています。

今週末はマンチェスター・ユナイテッド、インターナショナルブレイク明けはノースロンドンダービー。チェルシー戦で気になったのは、パスコースを見出せないままドリブルを続けてロストするシーンが多かったことと、自らのプレー選択に納得していない表情が目立っていたことです。アモリムもアルテタも、迷い多き中盤のポジショニングを見逃さないでしょう。

トーマス・フランク監督は、ブルーズに突き付けられた課題を短期間で解決できるでしょうか。プレミアリーグの3試合でシュートゼロのコロ・ムアニや、7試合でオンターゲット1本のシャビ・シモンズを試す余裕はありません。まずまずのスタートだった新指揮官に対して、サポーターの目は厳しくなっています。ホームで1勝1分3敗。次節は必勝です。


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