プレミアリーグで大苦戦のフロリアン・ヴィルツは、どうすれば真価を発揮できるのか?
イングランドのファンや評論家は、デュエルや空中戦で強い選手を好む傾向があります。ドイツから参入した22歳のプレーメイカーは176cm。背が低くて線が細いという印象が強いようですが、「だから通用しない」と切り捨てたらフォーデン、ベルナルド・シウヴァ、トロサール、エンベウモから総ツッコミが入るでしょう。ジョー・コールはヴィルツと同じ176cmです。
とはいえ、ヴィルツが当たり負けしているのは認めなければなりません。「テレグラフ」のサム・ディーン記者が、「昨シーズンのブンデスリーガと比べると、デュエルの勝率が格段に落ちている」と指摘しています。レヴァークーゼンのラストシーズンは、デュエルが45%で空中戦は20%。今シーズンの最初の11試合は、デュエルは35%で空中戦は11%という厳しい数字です。
プレミアリーグでのゴール&アシストがひとつもないプレーメイカーは、どうすれば真価を発揮できるのでしょうか。チームに欠かせない存在だった昨季と、冴えない現状のスタッツを比べると、ボールに関与する機会が激減しているのがわかります。1試合あたりのタッチ数は80回から58回に減っており、ファイナルサードに限定すると45回から27回です。
プログレッシブキャリーは、1試合あたり5.0から2.7にダウン。前に出たパスを受ける頻度も、11.8回から6.9回に下がっています。「今はまだ、チームメイトが彼の動きを把握できていない」というサム・ディーン記者の指摘は妥当でしょう。ボールタッチのエリアを見ると、昨シーズンはファイナルサードの左サイドが31%だったのですが、リヴァプールでは16%に減っています。
この違いは、フォーメーションと戦術によるものでしょう。レヴァークーゼンでは3-4-2-1の2列めの左が主戦場で、サイドからのカットインが多かったのですが、新チームでの序盤戦は4-2-3-1のトップ下がメインでした。敵陣右サイドでのタッチが増えているのは、悪いことではありませんが、ボックス周辺でのプレイが増えれば、おのずとマークは厳しくなります。
スロット監督が、最近になって2列めの左に配するようになったのは、よりスペースがあるエリアをメインにすることで、ドイツでのプレイに近づけたかったからでしょう。右サイドにいた頃のコール・パルマーや、フォーデンのようなパフォーマンスを期待しているのだと思われます。そうなると問題は、セントラルMFやSBとの連携です。
目に見える結果を残せていないのは、ケルケズやマック・アリスターの問題でもあるのかもしれません。未だゴールとアシストはないものの、チャンスクリエイト16回はリーグで16位です。そういえば、この事実も大いに気になります。「チャンスクリエイトのTOP20で、未だアシストがないのはヴィルツとハドソン=オドイのみ」。こちらは、サラーやショボスライの問題です。
あらためて数字や映像をチェックしてみると、「初めてのプレミアリーグに対する戸惑い」「チームの戦術へのフィット感」「周囲との連携」「チャンスを創っても決めてくれない」といった要素が重なっているようです。当面はポジションを固定し、ショボスライ、マック・アリスター、ケルケズやロバートソンと連携させる「急がば回れ」的な対応が得策に思えます。
実は今回、ヴィルツについて書いたのは、秘策を思いついちゃったからです。ブレンダン・ロジャースが指揮を執っていた2015年の夏にドイツからやってきて、トップ下やウイングでプレイした最初の11試合をゴール&アシストゼロで過ごした選手がいました。そう、ロベルト・フィルミーノです。ヴィルツも、偽9番で力を発揮するのではないかと思ったのですが…。
すみません。イサクとエキティケに2億ポンドを投じたのに、いざ蓋を開けてみたらヴィルツが最前線は悪夢ですよね。高額の移籍金といえば、エンソ・フェルナンデスやカイセドも、入団してからしばらくは苦しい季節を過ごしました。いずれ、トップ下でも左でも素晴らしいパフォーマンスを見せてくれるようになると信じましょう。彼のチャレンジは、まだ始まったばかりです。
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