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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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数字でわかるプレミアリーグの新潮流!パス本数が減少し、ロングボールとヘディングのゴールが急増!

プレミアリーグ2025-26シーズンの序盤戦は、各クラブの戦術やプレースタイルに新たな潮流が見え始めています。プレミアリーグの公式サイトで象徴的なスタッツと分析レポートを配信したのは、アーセナルのアカデミー出身のエイドリアン・クラーク記者。記事が指摘するロングボールの多用やヘディングによるゴールの増加は、偶然ではないでしょう。

興味深いレポートから、注目すべき数字を紹介しましょう。最初に挙げているスタッツは、パス本数の減少です。チャンスクリエイトの効率を追求する監督が増えて、ボールを細かくつなぐより、ダイレクトにゴールに迫るプレイが選ばれるようになっています。11節を終えた時点での平均パス成功数は713本。過去9シーズンで最少です。

プレミアリーグ史上最多だった2023-24シーズンは780本で、昨シーズンは748本。500本台が続いていた2000年代より多いものの、2年で60本以上は激減といっていいでしょう。降格クラブを除く17チームのうち、ポゼッション率が上がっているのは、ボーンマス、エヴァートン、ノッティンガム・フォレストのみ。この傾向には、強豪クラブの指揮官の「ポゼッション一辺倒はポイントロストのリスクが高まる」という見立てが作用しているのだと思われます。

ペップもアルテタも、ミドルサードで主導権を握って攻めるスタイルは変わりません。ただし、ひたすらハーフコートマッチを続けるのではなく、セットピースや速攻の精度を高めています。マンチェスター・シティはハーランドを起点と終点とするカウンターが増え、セットピース王者のアーセナルはサイドでスルーパスを駆使した速攻も目立つようになっています。

エイドリアン・クラーク記者が「ダイレクトプレーの復活」と表現するトレンドの中心人物は、ルーベン・アモリムとトーマス・フランクです。昨シーズンのマンチェスター・ユナイテッドは不安定なビルドアップが失点の原因になることが多く、スパーズのアンジェボールはハイラインが大きなリスクになっていました。

プレミアリーグで下位に沈んだ2つのチームは、最後方から前線に1発で通すロングボールを多用し始め、ゲームのテンポはより速く、より直線的になっています。2024-25シーズンに9.8%だったマンチェスター・ユナイテッドのロングボール比率は13.4%に上がっており、3.6%の増加はリーグTOP。7.3%から10.7%のスパーズは、3.4%UPで2位となっています。

全体を見ると、ロングボールの比率は11.5%で、昨シーズンの10.5%から増えています。17クラブのうち12クラブがMFの頭上を越えるフィードの比率を高めており、首位を快走するアーセナルでさえも7.3%から8.8%にUPしています。ゴールキックを見ると、2024-25シーズンは40.4%が敵陣に落下していたのですが、現在は48.2%に急増しています。

指揮官たちの頭のなかにあるメリットは、「ビルドアップのリスク回避」「相手が自陣ボックスに引く前にゴールに迫れる」「有利な態勢でクロスやラストパスを入れられる」といったあたりでしょう。ポゼッションを取ってボックスを包囲する攻め方と、スピーディーかつ直線的なアタックを組み合わせても決められないときは、セットピースが重要になります。

ゴールが減ったといわれるプレミアリーグ2025-26シーズンですが、ヘディングによるゴール数はレコードとなる可能性があります。クロスやヘディングシュートの本数は例年並みですが、既に64ゴールがヘディングで決まっているそうです。このままのペースが続けば、最終的には221ゴール。過去最多だった2010-11シーズンの205ゴールを上回るかもしれません。

ヘディングでのゴールが増えた背景には、CKやFKの戦術の高度化や、ロングスローの流行があります。象徴的な名前を挙げましょう。カラフィオーリ、ティンバー、ガブリエウ、ミケル・メリノ、ズビメンディ、デクラン・ライス、ギョケレス。リーグTOPの7発を頭で決めているアーセナルは、異なる7人のゴールで、速攻からのデクラン・ライス以外はすべてセットピースです。

今季の全ゴールのうち21.3%がヘディングで、昨季の15.6%から大幅に増えています。アーセナルの近年の補強において、180cm以下はティンバーとエゼだけで、ジェズスは今の採用基準なら書類選考で落ちてしまうのでは…と妄想してしまいます。長身のターゲットマン、フィジカルに長けたDF、筋力がハンパないロングスローの名手が好まれ、小柄な地面師たちが不遇に耐える状況は、今後も続きそうな雲行きです。

セットピースとヘディングのゴールランキングは、アーセナル、チェルシー、スパーズ、マン・ユナイテッドがTOP4に名を連ねています。カウンターからのゴールは顔ぶれが変わり、ボーンマス、ブレントフォード、マン・シティ、ウェストハムという並びです。スリリングになったとポジティブに捉えるか、ゴツゴツしたイングランドに回帰したと眉を顰めるかは、みなさま次第でございます。


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