2025.12.05 リヴァプールの話題
サンダーランド指揮官、担当記者、解説者の言葉から探る「リヴァプールが不振から脱却できない理由」
イシドールがアリソンと対峙し、右にかわした瞬間、後ろからシャツをつかんだのは何としても止めたかったからでしょう。アリソンは止められず、右に出たアタッカーが無人のゴールに蹴った瞬間、コースに入った14番が右足のアウトでカットしました。会心のキラーパスを出して、成り行きを見守っていたルーフスは、ピッチを叩いて悔しがっています。
アンフィールドのリヴァプールVSサンダーランドは、「アウェイチームが勝利を逃した」と評するべきでしょう。ホームチームのポゼッションは68%で、シュートは23対9ですが、オンターゲットは4対6。マック・アリスターが44分にヘディングをポストに当てていますが、アルデレーテも61分の左からのCKでヘッドをニアポストに阻まれています。
先制したのはサンダーランド。67分のゴールキックを競ったイシドールが頭に当てたボールは、ファン・ダイクの足元に落下しました。前にいたマック・アリスターに出したダイレクトパスは、キャプテンらしくない軽率なミス。インターセプトしたタルビのミドルシュートは、パスをカットされたCBの背中に当たって絶妙なコースに飛んでしまいました。
リヴァプールが追いついたのは82分。敵陣右サイドでタルビから奪ったカーティス・ジョーンズが、ボックス右のヴィルツにパスを通すと、中央に持ち込んで打った左足のシュートがムキエレの足に触れてコースが変わりました。蹴る瞬間にボールは左足のアウトにずれており、ミスキックだったのですが、守備の選手が4人いるエリアに突っ込んだ勇気を称えたいシーンでした。
10月以降はアンフィールドで2勝1分4敗。優勝した昨季は21勝4分3敗で、プレミアリーグで負けたのはノッテインガム・フォレスト戦だけでした。難攻不落の城は、堀を埋められてしまったようです。3試合連続勝利なしは、パンデミックの影響で無観客だった2020-21シーズン以来。リーグ戦の失点はアーセナルの3倍となる21で、ゴールはビッグ6で最少の21に留まっています。
リヴァプールは、不振から脱却できるのか。最大の問題は何なのか。現地メディアは、スロット監督の解任に関するレポートが増えています。ハマーズ戦の前に「テレグラフ」に寄稿したジェイミー・キャラガーは、「スロットが自分の仕事を守るために、1週間の猶予がある。7ポイント未満では、既に受け入れ難い状況から現状維持が不可能になるだろう」といっていました。
これに対して、「ESPN」のベス・リンドップ記者は、「PSV戦の敗北は、クラブの一部の人々にとっては限界点だった」と伝えつつ、「優勝監督を解任するようなクラブではないという事実は変わらない。経営ボードは、チームの低迷は監督の責任だけではないと認めている」と反論しています。ただし現状が変わらなければ、彼らも動かざるを得なくなるでしょう。
「選手が反旗を翻した」といったタブロイド系のメディアの記事は眉唾としても、チーム全体が平常心を欠いているのは間違いないようです。「アスレティック」でレッズを担当するジェームズ・ピアース記者は、「最大の懸念はホームのロッカールームに潜んでいる。周囲の雰囲気に萎縮する選手が多く、明らかなミスや悲惨な判断につながっている」と報じています。
モー・サラーが厳しい立場にあるのも事実でしょう。「CAUGHTOFFSIDE」のマーク・ブルズ編集長は、「選手たちはサラーをリスペクトしており、ドレッシングルームでの争いはない。しかし、彼が先発しなければチームのバランスが取れると感じている者もいる」とレポート。ドレッシングルームに近いソースからの情報として、「先発から外れる状況が変わらなければ、彼は冬にチームを去る」と続けています。
サラーを外して、守備力に長けたショボスライや、運動量で勝るフェデリコ・キエーザを入れるという選択肢もあるでしょう。しかしサンダーランド戦を見ると、サラーに過度の責任を背負わせるのはフェアではないように思えます。エースだけでなく、コナテ、マック・アリスター、ロバートソン、ガクポ、イサクらが揃って振るわない理由に最も近づいているのは、この言葉ではないでしょうか。
「攻撃を組み立てる時間とスペースを得られたことに、われわれ自身も少し驚いた。おそらく相手も、あのレベルまで来られるとは思っていなかっただろう。ファイナルサードで相手の守備陣を崩す方法について話し合った。サラーがピッチに入って流れを変えることも想定していたので、準備はできていた」(レジス・ル・ブリ)
アーセナルに押しつぶされた中小クラブの指揮官は、口を揃えて「スペースも時間も全くもらえず、恐怖だった」といっているのですが、サンダーランドの指揮官はリヴァプールについて真逆のコメントを残しています。敗戦が続いて迷いが膨らみ、判断の遅れやプレイ選択のミスが積み重なって劣勢になるという悪循環が生じているのだと思われます。
だとすると、スロット監督による立て直しは時間がかかりそうです。処方箋は3つで、戦い方を変えるか、選手を代えるか、監督を代えるか。1年前に同じ状況に陥ったペップ・グアルディオラは、メンバー変更と補強によって巻き返しを図りました。スロット監督がメンバーを動かせないなら、新たなCBやMFを獲得するか、経営ボードが大鉈を振るうしかなくなります。
冬のマーケットのオープンまで、1ヵ月を切っています。その間に、5試合を戦わなければなりません。あのペップでも、敗戦の連鎖を断ち切るまでに2ヵ月を要しました。レッズは3ヵ月めの突入しています。経営ボードは、どちらの選択肢を取るのでしょうか。アルネ・スロット、モー・サラー、マーク・グエイ…メディアが話題にしている関係者の去就が気がかりです。
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