2025.12.15 プレミアリーグ観戦記2025-26プレミアリーグ観戦記
【Chelsea×Everton】10番復活、5試合ぶりの勝利…サポーターたちはマレスカの戦い方が好きなのか?
しかしここから、マレスカ監督と選手たちに対する評価が急転します。中2日のリーズ戦は、3-1で完敗。ボーンマス戦をスコアレスドローで終えると、CLのアタランタ戦は2-1の逆転負けを喫しています。首位攻防戦から数えると、4試合連続で勝利なし。スタンフォード・ブリッジで開催された16節のエヴァートン戦は、何としても勝ちたい一戦だったはずです。
マレスカ監督が選んだ11人は、前節のボーンマス戦から最前線を変えただけです。GKロベルト・サンチェス、DFマロ・グスト、フォファナ、トレヴォ・チャロバー、ククレジャ。2センターはリース・ジェームズとエンソ・フェルナンデス、2列めにペドロ・ネト、コール・パルマー、ガルナチョ、ワントップにジョアン・ペドロ。最注目はもちろん、トップ下に復帰した10番です。
基本のフォーメーションは4-2-3-1ですが、ククレジャが偽SBのようにセンターに絞ると、エンソ・フェルナンデスが前に上がります。アーセナルほどプレスの運動量は多くないものの、2列めと中盤センターの連携は機能的です。マイコレンコからジェームズ・ガーナーに鋭い縦パスが入った6分の守備は、ククレジャとフォファナが素早くシュートコースを塞いでいます。
チェルシーの守備力については、CBの前のスペースを的確にカバーするリース・ジェームズと、ククレジャの運動量を抜きにして語れないでしょう。14分に古巣対決のデューズバリー=ホールがハムストリングを痛め、代わって入ったのはアルカラス。20分にエンディアイエが右から打ったシュートは、エンソ・フェルナンデスが足に当てています。
ホームチームが先制したのは、この直後です。ドリブルで上がったフォファナからパスを受けたマロ・グストは、すかさず縦に走る美しいスルーパスをフィード。ラインの裏に抜け出したコール・パルマーは、ボックス右でピックフォードと対峙すると、空いていたニアに難なく蹴り込みました。今季プレミアリーグの2発めは、4節のブレントフォード戦以来、3ヵ月ぶりです。
1-0になった直後、左サイドにいたアルカラスが不用意なバックパス。GKの前でさらったガルナチョは、タルコフスキーに体を寄せられ、右に外してしまいました。29分にペドロ・ネトが右からクロスを上げると、エンソ・フェルナンデスのヘッドはGKの正面。好調のペドロ・ネトとマロ・グストが絡む右サイドは、エヴァートン守備陣の脅威になっています。
44分に右からのサイドチェンジを受けたグリーリッシュは、マロ・グストとうまく入れ替わって一気にゴールライン際へ。ロベルト・サンチェスの頭上を越そうとしたボールは、カットされてしまいました。1分後、右から仕掛けたペドロ・ネトがマイコレンコを抜き去ってニアに折り返すと、走り込んできたマロ・グストが左足でプッシュし、ネットを揺らしました。
今季のチェルシーは、先に2点をリードしたゲームは7戦全勝で、プレミアリーグの4試合はすべてクリーンシート。追いつかれる展開となったのは、カラバオカップのウルヴス戦だけです。後半の立ち上がりはゲームをコントロールしていたのですが、58分にコール・パルマーをアンドレイ・サントスに代えてから、エヴァートンが攻勢に転じました。
オブライエンのクロスが左にいたグリーリッシュに届いたのは、67分。ペドロ・ネトの上から叩いたヘディングは、バーを越えていきました。最大のピンチは72分。右サイドのエンディアイエがアルカレスに戻し、絶妙なクロスがファーのグリーリッシュの足元に入るも、スライディングボレーは右に逸れていきました。
75分のリース・ジェームズのFKは、ピックフォードがぎりぎりで上に弾き出すビッグセーブ。ガルナチョをバイノー=ギッテンスにスイッチしたマレスカ監督は、81分にジョアン・ペドロをエステヴァンに代えました。10人になったマンチェスター・ユナイテッド戦とブライトン戦で、守備的な交代策が裏目に出てから、劣勢の展開では前線に運動量を加える策が増えています。
ブルーズのサポーターにしてみれば、ゴールを量産するストライカーがおらず、当番制のようにウイングが変わるチームはもの足りなく映るのかもしれません。チェルシーのファンジン「CFCUK」に「Enigma Maresca(謎のマレスカ)」と題した記事を寄稿したデヴィッド・チッジーさんは「サポーターのマレスカに対する意見は依然として分かれている」と綴っています。
「才能ある若手たちに、自らのフットボールのイデオロギーを押し付けようとする思想家と見做す者もいる。サッリのスタイルに似ているともいえるだろう。とはいえ、われわれが彼を好きか嫌いかなど、オーナーと経営ボードは全く気にしない。皮肉にも、それこそがわれわれを本来あるべき場所に戻すポイントなのかもしれない」
「オーナーとスポーツディレクターが彼のメソッドを受け入れ、彼もクラブの方針を理解すれば、短期的な視点に囚われた環境を変える可能性はある。マレスカのプロジェクトは不完全で、時に苛立たしいが、紛れもなく野心的だ。これはチェルシーが長年必要としてきた『プラン』そのものを体現している」(デヴィッド・チッジー)
グーナーが美しく攻撃的なスタイルにこだわり、マンチェスター・ユナイテッドのサポーターが戦う姿勢や勝負強さを称えるなど、クラブの歴史とサポーターのマインドはリンクしています。幾多のカオスの時代を駆け抜けてきたチェルシーは、大胆な変化を志向するサポーターが多いのかもしれません。しかし今、マレスカは一貫性と継続性を重視してチームを強化しています。
「クラブが変革への衝動を抑えて、マレスカの構想を完全に根付かせれば、そこで築かれた基盤こそが、より一貫性があり、現代的でサステナブルな時代の始まりなのだと気づかされるのかもしれない。その真相を告げてくれるのは時間と、そしておそらく忍耐だけなのだろう」(デヴィッド・チッジー)
エンソ・フェルナンデスはオールラウンダーとしてプレイの幅を広げ、リース・ジェームズは中盤をコントロールする役割を担い、マロ・グストは攻撃的なセンスを磨き続けています。エステヴァン・ウィリアンはサラーやサカの後を追い、アチャンポンはリーグを代表するCBとして称えられるようになる可能性があります。
私は、今のチェルシーが好きです。レヴィ・コルウィル、コール・パルマー、ロメオ・ラヴィアが不在となるピンチを、主力や若手の才能を開花させる機会に変えた指揮官を大いに称えたいと思います。「彼は僕を信頼してくれる。自信を得るために、最も大切なことだ。もっと成長したい」。アレハンドロ・ガルナチョの言葉には、複雑な思いを抑えてうなずくだけです。
おもしろいと思っていただけた方は、お時間あれば、下のブログランキングバナーをクリックしていただけると大変うれしいです。所要時間は5秒です。何とぞよろしくお願いいたします!



コメントを残す